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2025.11.27

大分・由布院

「ENOWA YUFUIN」に何度も通いたくなる理由とは?

デスティネーション・レストランの代表格とも言える「ENOWA YUFUIN」が話題のミシュランキーで2ミシュランキーを獲得。久々に訪ねてみたら、アメリカの人気レストラン「Sun Moon Studio」とのコラボレーションが行われていました。

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文・編集/秋山 都(編集者・ライター)
2025年10月、パリで発表された「ミシュランキー」のグローバル発表会では、ミシュランの調査員を独自にプロファイリングしました。ミシュランキーに選ばれたホテルやリゾートを改めて眺めてみますと……3ミシュランキーのラグジュアリーホテルはもちろんのこと、2ミシュランキーや1ミシュランキーの多彩なバリエーションに改めて惹かれます。

たとえば2ミシュランキーの「シグチ」(北海道倶知安町)や「SIMOSE ART GARDEN VILLA」(広島県大竹市)、1ミシュランキーの「山形座 瀧波」(山形県南陽市)、今年5月に開業したばかりの「パティーナ大阪」(大阪府大阪市)など、どこも今話題の宿。ミシュランの調査員はきちんと日本を隅から隅まで調査しているようですね。そして、そのなかに今回ご紹介する「ENOWA YUFUIN」もありました。

大分県由布市

「ENOWA YUFUIN」

大分 由布院 ENOWA YUFUIN
▲ 由布岳や由布院の街並みを見渡せる「ENOWA YUFUIN」。
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今年の「ミシュランキー」で2ミシュランキーに選ばれていた「ENOWA YUFUIN」。大分・由布院で2023年6月に開業したオーベルジュです。約4万4,000㎡の広大な敷地には、高低差を活かしたヴィラやホテル棟が点在。すべての客室に源泉掛け流しの露天風呂が備わっており、由布岳や由布院の街並みの景観を望める贅沢な空間です。

こちらの最大のウリと言えば「ファームドリブン」というコンセプトを掲げたボタニカル・リトリートであることでしょう。自社農園ENOWAファームで育てられた野菜やハーブを使い、洗練された料理へ仕上げてくれるのは「ENOWA」内のレストラン「JIMGU」でエグゼクティブ・シェフを務めるタシ・ジャムツォ(Tashi Gyamtso)さん。
大分 由布院 ENOWA YUFUIN
▲  ニューヨークの有名店「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」でスーシェフとして腕を奮っていたタシ・ジャムツォ氏。
このタシさん。実は、標高約3000 mのチベットの山岳地帯で生まれ育ち、幼少期から自給自足の暮らしのなかで野菜を育てたり、牛を飼ったりしていたのだとか。自然との共生が人生観の根底にある彼は大学進学後に料理の道へ進み、2015年からはNYの「ブルー・ヒル・アット・ストーンバーンズ(Blue Hill at Stone Barns)」*で副料理長を務めていました。2020年に「ENOWA YUFUIN」開業準備のため由布院に移住し、まず着手したのは畑づくり。現在では自ら手掛けるENOWAファームで、無農薬で年間およそ250種類の野菜やハーブを栽培し、その日の収穫でメニューを決定する“ファーム ドリブン”な料理を実践しています。
*「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」とは、ニューヨーク郊外の農場併設型レストランで、サステナビリティと農業を強く意識しているのが特長。決まったメニューはなく、その日の収穫や季節に応じて構成される“ファームドリブン”な料理でミシュランのグリーンスターも獲得。
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「JIMGU」(大分・由布院)

さて、タシさんが率いるレストラン「JIMGU」は、無垢の木、石、土壁など、自然素材を多く使い、シンプルながら居心地のよい空間。朝は大きな窓から陽光が差し込み、夜は一転静けさを感じさせてくれるダイニングです。
大分 由布院 ENOWA YUFUIN
▲ 落ち着いた雰囲気のレストラン「JIMGU」。
私が訪れたこの日は、カリフォルニア・オークランドのミシュラン1つ星レストラン「Sun Moon Studio」とのコラボレーションディナーが行われていました。カリフォルニアの旬の食材を大切にする「Sun Moon Studio」にはアラン・スー氏とサラ・クーパー氏というふたりのシェフがおり、このふたりもやはりNY「「ブルー・ヒル・アット・ストーンバーンズ」で修業していたところからタシさんと親交があり、この日のコラボが実現したのだとか。1回のディナーに3人のシェフが携わる、シックス・ハンズとはなんとも贅沢な一夜となりました。
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ディナーは施設内のインドアガーデンでいただくアペリティフからスタート。多くのハーブが茂り、エディブルフラワーが咲く温室のなかはあたたかく、ここでスパークリングワインを飲むだけで心がほどけていきます。まずはタシさんがこの日畑から摘んできた野菜をいただきましたが、これが目からウロコが落ちたかと思うほど美味でした。野菜って、こんなにおいしかったっけ?
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大分 由布院 ENOWA YUFUIN
▲ ENOWAファームでこの日の野菜を収穫するタシさん(左)、「Sun Moon Stuido」のサラ・クーパーさん(中央)、アラン・スーさん(右)。
続きまして、ダイニングへ移動し、8皿のコースがスタート。レストラン同士のコラボレーションイベントではどちらがどのお皿を担当しているのか分かることがほとんどですが、この日はコースがスムーズに進行し、どれがタシさん? としばしば確認するほどシームレスな展開でした。タシさん、そして「Sun Moon Studio」のおふたりともNYの同じレストランで研鑽を積み、食材へ深い敬意をもつことが共通しているので成しえる一体感なのでしょう。

かといって、食材そのものの味わいというわけではないんです。この日、私が一番驚いたのはコース2皿目に登場した「Red Snapper」という前菜。大分産の鯛とアワビの刺身にコリンキー、きゅうり、インゲンなどの野菜をあしらったひと皿でしたが、フォークですくうと、ねっとりした鯛にコリコリしたアワビ、野菜のさまざまな食感をひと口で味わうことができて、文字通り昇天しそうになりました。
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ディナーではそれぞれにペアリングしたアルコールもいただいたので、満足&満腹。真ん丸に張ったお腹を抱えてゲストルームへ戻りましたが、温泉に入って熟睡したら……空腹で目が覚めました。これも野菜のおかげかしら。
今話題のデスティネーション・レストランとは、「その店のために旅をする価値がある」と評価される店のこと。こうしたレストランが生まれると、まず食を目的にした旅行者が増え、周辺地域に新たな人の流れが生まれ、ひいては地域全体の産業に波及効果が期待できるわけですが、一方で、多くのデスティネーション・レストランは美食家たちのスタンプラリー化しており、一度食べに行ったらなかなか再訪されることはありません。

ところが「JIMGU」は何度でも通いたくなり、またその度に新鮮な驚きを与えてくれるレストラン。進化し続けるタシさんのお料理とENOWAファームの滋味あふれる野菜に再度出会える日を今から楽しみにしています。
大分 由布院 ENOWA YUFUIN

ENOWA YUFUIN

住所/大分県由布市湯布院町川上544
予約&問い合わせ/0977-28-8310、予約センター 0120-770-655(受付時間 9:00-17:45)
アクセス/「由布院」駅よりタクシー約5分 、
大分空港より車約50分 (空港リムジンバスで由布院駅まで約55分)

https://enowa-yufuin.jp/

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秋山 都(編集者・ライター)
東京生まれ。 富裕層向けライフスタイル誌「セブンシーズ」、「Harper’s BAZAAR日本版」、「東京カレンダー」誌で編集長を歴任。 アマゾン・ジャパンでファッション・エディトリアル・ディレクターを務めたのちに独立。「WebLEON」では食いしん坊担当として、食・酒・旅など人生の快楽的側面を追求しております。好物はハイボールとタルタルステーキ。趣味はハシゴ酒。

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