2025.08.17

【第82回】 真夏の冷麺

真夏の冷麺、どこが美味いか⁉

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

BY :

文/山本益博
CREDIT :

文・写真/山本益博 編集/森本 泉(Web LEON)

日本初の料理評論家、山本益博さんが、B級グルメから一流の料理へと変貌を遂げつつある街のラーメンに注目し、自ら実食リポートする連載です。

「韓国冷麺」と「盛岡冷麺」、その違いとは?

私は焼肉を食べたあと〆にいただくのは、決まって「冷麺」。あのさっぱりとした酸味のあるスープが、お腹一杯でも心地よく、食事を鮮やかに締めくくってくれるからだ。
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夏になると、その「冷麺」がとても恋しくなる。この夏は、連日猛暑、酷暑で、食事に「冷麺」「冷やし中華」の出番が多くなっている。

東京で「冷麺」をいただくとなると、「韓国冷麺」と「盛岡冷麺」を名乗る二派があることに気が付く。実は、私が「冷麺」の虜になったきっかけは、かなり昔、東北盛岡で食べた「盛岡冷麺」だった。

その後、暫くして、東京で「盛岡冷麺」を食べさせてくれる店を見つけ出かけて行った。それが、銀座の「ぴょんぴょん舎」だった。
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銀座「ぴょんぴょん舎」の「盛岡冷麺」。初めていただいた時のもの。
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麺が黄色味を帯びていて、聞けば、それはじゃがいものでんぷんの色あいだった。つるりとして、程よい噛み心地、スープは酸味が効いていて、西瓜の赤が映えていた。中に入っているキムチを少しずつスープに溶かしてゆくと、今で言う「味変」が起こって、牛骨スープが最後まで飽きずにいただけた。

この夏、久しぶりに「ぴょんぴょん舎」を訪れた。まず、以前と変わっていたのが盛り付けで、「キムチ」が別添えになっていた。
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▲ こちらはこの夏いただいた「ぴょんぴょん舎」の「盛岡冷麺」。
黄色い麵、穏やかな味わいの牛骨スープは変わらず、添えられた具は、牛赤身肉、茹で卵、ねぎ、胡瓜、西瓜で、途中で別盛のキムチを入れると、辛味、酸味が加わり、絶妙の味わいとなる。西瓜をひと口いただくと、これが「うまいの、なんの!」。単なる彩りの添え物でないところが素晴らしい。
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地下鉄銀座線「末広町」駅近くの「東京冷麺」では、「冷麺(盛岡系)」というメニューがある。具の茹で卵が「温泉卵」を選べる。
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末広町「東京冷麺」の「冷麺(盛岡系)」。
ほかに、トマト、胡瓜、キムチでシンプルなのがいい。とても好感が持てる「冷麺」である。後日、店名となっている「東京冷麺」を注文した。こちらの具は、豚しゃぶ、梅しそ、大根おろし、茹で卵、カクテキと大賑わい。ボリュームを好む人向きか。
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▲ 末広町「東京冷麺」のその名も「東京冷麺」。
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今年の猛暑、酷暑の昼にはぴったりの「冷麺」は

ところで、なぜ「盛岡冷麺」と呼ぶのかといえば、以前こんなことを聴いたことがある。北朝鮮系の方が盛岡で冷麺を作りはじめたが、北朝鮮の「平壌(ぴょんやん)」と岩手の「盛岡」が、同じ北緯37度であるところから、「縁」を感じたとのことである。嘘か誠か知らないが、そんな素敵なストーリーを思い浮かべて食べると味わい深いものがある。「ぴょんぴょん舎」も岩手出身である。

これを知ると、「盛岡冷麺」は北朝鮮系なので、もうひとつは「韓国冷麺」と銘打つことになる。

韓国といえば、東京では「大久保」「新大久保」が真っ先に浮かぶ。
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百人町「板橋冷麺」の「水冷麺」。
そこで、まず訊ねたのが、JR「大久保」駅から歩いて5分ほどにある百人町の「板橋冷麺」。ここで、いちばんシンプルな「冷麺」が「水冷麺」。ほどよく酸味が効いた冷たいスープに、大根、胡瓜、茹で卵、それに胡麻が散らしてある。食べ応えはないが、焼肉を食べた後にいただくのはいいかも。
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同じ百人町でも「コサム冷麺専門店」は、コリアンの繁華街にあり、こちらは「冷麺専門店」。店内は若者たちでいっぱい。私は隅の方の席で「冷麺」を待った。運ばれてきたところで、店員さんが鋏で極細の麺を食べやすい長さに切っていく。スープはかなり冷たく、具は大根、胡瓜、茹で卵。麺や具に比べて、スープのボリュームがかなりある。
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ところで、スープの冷たさからいったら、荻窪「くーたん」の「水冷麺」が一番だろうか。

なんと、シャーベット状になったスープが麺と具を食べ進むうちに溶け出してゆく感じなのである。具は、牛肉、大根、胡瓜、胡麻、茹で卵、りんごのスライス。それに別添えで韓国のり。今年の猛暑、酷暑の昼にはぴったりの「冷麺」と言えようか。
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荻窪「くーたん」の「水冷麺」。
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もう1軒、荻窪には「韓国料理ジョッパルゲ」がある。この店で「冷麺」を注文すると、まず、牛骨の温かいスープがでてくる。これがとても美味しい。いったんお腹を温めてから「冷麺」をいただこうというもの。極細麺に冷たすぎないスープで酸味が食欲を掻き立て心地よい。 
具は大根、胡瓜、トマト、茹で卵、胡麻とシンプル。支払い時に「ジョッパルゲ」とはどういう意味でしょうか、と訊ねると、「猪八戒」とのことだった。昼は、土曜、日曜、月曜のみだが、この夏、まだまだご厄介になりそうである。
山本益博 Web LEON ラーメン革命!

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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