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2019.09.16

そうだ、京都にラーメン食べに行こう!? 作家・柏井壽が伝授する、通な3軒

京都のラーメンは「あっさり」「はんなり」と思われながら、意外にも「こってり」「濃厚」で、数百軒あるラーメン店のどれもがユニーク。京都流ラーメンの楽しみを作家の柏井壽さんが伝授します。

CREDIT :

文/柏井 壽 写真/高嶋克郎

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しばしば誤解される言葉に〈京の薄味〉がある。公家を筆頭に、雅なイメージがあるせいだろうと思うが、実を言えば、京都人は存外濃い味を好むのである。その典型が京のラーメンだと言えば、少しは納得されるかもしれない。

京の洋食を育ててきたのが花街の芸妓舞妓や旦那衆なら、京都のラーメンを育ててきたのは、多くの職人たちや学生たちである。伝統産業に携わる職人たちの仕事は重労働であることが多い。あるいは血気盛んな学生たちも、身体を動かす機会は少なくない。

となれば、いずれも濃い味と、食べ応えを求めることになり、それに打ってつけの料理がラーメンというわけだ。更に言えば、職人も学生も不規則な時間に食事をする機会が少なくないということも、ラーメン人気を高める一因となった。

今でこそ滅多に見かけないが、かつては洛中のあちこちに屋台が出没し、そのほとんどがラーメン屋台だった。多くの飲食店が閉まったあとの深夜から明け方まで、職人や学生の胃袋を満たしてきた。
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創業49年目。初代はお店の前に屋台を置いて営業していたのだという。
味だけでなく、店の空気も往時の屋台を彷彿させるのが北野天満宮近くの『誠養軒』。どこにでもありそうな味ながら、ここでしか味わえないのが〈中華そば〉。細いストレート麺、醤油味、焼豚、ネギ、メンマ、もやし。これが京都ラーメンのスタンダードだ。
これに背油を加えたり、鶏がらスープを濃密にしたり、濃口醤油を強調したりすることで、バリエーション豊かな京都のラーメンが出来上がってきたのである。
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自家製麺のツルツルとしたのどごしがクセになる。「昔はこんなラーメンばっかりやったけどね」とご主人が語る中華そば(630円)
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もうひとつの人気はギョウザ(380円)。皮も手作り、ニラたっぷり。
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京都人が〈たかばし〉と呼んでいる塩小路高倉に並び建つ『新福菜館本店』と『本家第一旭』の二軒のラーメン店は、長い行列と個性的な味を競い合っているが、どちらも根強いファンに支えられている。
徹夜明けの学生や職人だけでなく、中央市場帰りの料理人などにも向けて、早朝から店を開けているのが大きな特徴。
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〈たかばし〉にならぶ2軒のラーメン店にはいずれも行列がとだえない。
二軒とも、決して薄味ではなく、しかし見た目も味わいもまったく異なるのが興味深い。博多や札幌などと違って、京都のラーメンは味も麺も多岐にわたり、これぞという定番がないのが最大の特徴。それでも京都人はそのなかに京都らしさを見つけ出し、お墨付きを与えるのだ。

例えば宮川町の松原通沿いに店を構える『ラーメン専門店ポパイ』などは、醤油と味噌の二種類のスープがあり、京都には珍しく魚介系が際立つ出汁なのだが、都人にとっては京都ラーメンの典型として親しまれている。
近頃のラーメン店にありがちな、フリークにうけるようなマニアックなラーメンではなく、ふつうのラーメンが支持されるのが京都の特色。
ご紹介した3軒には焼飯もあり、『新福菜館』の黒々とした焼飯や、『ラーメン専門店ポパイ』の〈レモン焼飯〉など、個性的な焼飯と一緒にラーメンを愉しむのが京都流なのである。

◆ 柏井 壽 (かしわいひさし)

1952年京都市生まれ。作家。
柏木圭一郎名義で京都を舞台にしたミステリーを多数発表する傍ら、本名柏井壽名義で日本各地の旅行記やエッセイなどを執筆。『おひとり京都の愉しみ』『極みの京都』(ともに光文社新書)、『京都の路地裏』(幻冬舎新書)『おひとり京都の春めぐり』(光文社知恵の森文庫)など、京都の魅力を伝える著書多数。小説『鴨川食堂』(小学館文庫)はテレビドラマ化も。

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