• TOP
  • GOURMET
  • 自分史上最高のコンビーフごはんを見つけた!

2019.02.23

自分史上最高のコンビーフごはんを見つけた!

江古田「肉と野菜とナチュラルワイン さとう」はほどよく力が抜けた居心地のよいバル。でもその料理は「力が抜けて」いるわけじゃなく、全力で味わいたいハイレベルなおいしさです。

CATEGORIES :
TAGS :
CREDIT :

文/秋山 都 写真/野頭尚子

毎回、旬のレストランや話題の新店をご紹介していく連載「美食のネタ帖」。「なんか面白い店ないかなぁ」「最近どこか行った?」と聞かれることが多いLEON.JP食いしん坊担当がガチでおすすめなお店を紹介いたします。

その第9回は絶品「コンビーフごはん」や「ハンバーガー」が楽しめる肉バル。鍵となるのは店主のほどよい脱力ぶりが生む、居心地の良さです。

いま問われるのは、脱力力(だつりょくりょく)

私、13歳になるミニチュア・ピンシャーを飼っています。白内障になり、目もあまり見えない老犬なので始終“抱っこ”をせがみますが、その際の脱力っぷりがすごい。よくこんなに人に身を委ねられるな、と思うくらいダラリと力のぬけた四肢……抱いている私を信頼し(もしくは単なるベッドだと思っている?)、腕のなかですぐにクウクウと寝息をたてて寝入ってしまいます。

そんな愛犬を見ていると、こんな風に力を抜いて相手に身を委ねることができるのも、ひとつの才能だなと妙に感心してしまうのです。たとえば私が誰かにおんぶ(抱っこは無理でしょうから)されたとして、ここまで脱力して身をまかせることができるでしょうか。相手を心から信頼しているからこそできることなのでしょうが、たとえプロにマッサージされている時でも、身体の芯から力を抜いてリラックスすることはそう簡単なことではありません。

そしてこの「脱力力(だつりょくりょくと読んでください)」が、いま必要とされていると思うのです。たとえばファッションの世界ではもう10年ほど前からエフォートレス(頑張りすぎない)なスタイルが良いとされ、頭からつま先までキメキメな装いはちょっと恥ずかしくなっていますね。「さりげなくおしゃれ」「主張しすぎず上質」なものを身に着けることで、ほどよくリラックスした“ヌケ感”を演出するのが、いまどきファッションの主流です。
PAGE 2
そして、我々の仕事においても然り。「月月火水木金金」「24時間戦えますか」はもうアウトトレンド。残業もほどほどに、家庭を大切にし、週末はきちんと休んでよく遊ぶ……ワークライフバランスのしっかりとれた働き方改革が求められています。
…と、同じことを飲食店の目線で語るとしたらどうなるでしょう? 大きなチェーン店は別として、個人店は週休2日のお店が増えてきているし、店主のSNSを見ていると研修や勉強のために旅へ出かける人あれば、「今日は疲れたので早めに終わります」と告知する人あり……ひと昔前であれば、お店は毎日決まった時間に営業しているべきだと誰もが考えていましたが、今は店主の個人としてのスタンスをカスタマー側が理解し、尊重する時代になったともいえるでしょう。

また、オーナーのみならず、お店自体も「脱力力」が問われています。たとえばシャンデリアに白いテーブルクロスのかかったガチガチなフォーマルダイニングより、ほどよく力の抜けているバルスタイルのほうが、いまっぽい。ワインを飲むにしても、大きなグラスを不慣れにクルクルまわして飲むより、自然派ワインをカジュアルに飲むほうが、いまの気分。自然派ワインのブームって、案外こんな「脱力力」の観点からキテるのかもしれません。

こうして考えてみると、「脱力力」とは、いままでのモーレツ主義へのアンチテーゼ、そして、権威志向へのオルタナティブとしての指標にも思えてきます。ちょっと話が横にそれてしまった……でも、今後もこの「脱力力」についてはひとつのテーマにしていきたいと思います。
PAGE 3

ほどよく力が抜けて心地よい「肉と野菜とナチュラルワイン さとう」

さてさてさて。「肉と野菜とナチュラルワイン さとう」は、この「脱力力」の観点からも私が大好きなお店のひとつ。オーナーシェフの佐藤真邦さんは新宿御苑で肉イタリアンを経営していましたが、ひとりで目の届く範囲のこぢんまりとしたお店を開きたいと、自宅からほど近い江古田へ移転。今年の3月でオープン1周年を迎えます。
江古田駅から徒歩5分。ウッドを基調に、ガラス張りで気持ちのよいお店。
新宿時代に培った肉の鑑定眼と、火入れのテクニックを駆使し、種々の肉のつまみや一品料理を自然派ワインと楽しむことができるバルスタイルのお店です。
お料理の一部は新宿時代のメニューを踏襲していますが、今回、私が目をつけたのはこちら。
コンビーフと白米850円。
コンビーフごはん。佐藤さんが仕入れる牛肉はすべて、信頼する肉の目利きがえりすぐった国産牛ですが、大きなパーツで仕入れるため、どうしてもすね肉、ネックなどが余りがち。そのような端っこの部位をマリネしてやわらかく蒸しあげたコンビーフは、仕上げに混ぜる脂身も国産牛にこだわり、口に入れたときに鼻へ抜ける香りが心地よい逸品です。

そのコンビーフを自家製たまごのソース(マヨネーズに似ていますが酢を入れていないのでまろやか)とともにごはんに乗せたのが、この「コンビーフと白米」。スジがなく、ふわりと口中で溶けてしまうスフレのようなコンビーフは、ワシワシとかっこみたくなるおいしさ。ひとり1杯、あっという間に平らげてしまいます。
PAGE 4
新宿時代から人気だった「半生ハンバーグ」をバンズではさんだ「半生ハンバーガー」1,500円。
国産牛の肩ロースをミンチにしたハンバーグ。炭火でゆっくりと焼き上げます。
もうひとつの名物がこの「半生ハンバーグ」。新宿時代から佐藤さんのスペシャリテだった、タルタルステーキを炭火で焙り、半生状態に仕上げたハンバーグです。バンズではさんでハンバーガーに、近所の名ブーランジェリ「パーラー江古田」のカンパーニュでサンドイッチにすることもでき、「コンビーフと白米」と同様、人気の〆メニュー。
牛バラの生ハムやローストビーフなどその日のつまみで「牛肉おつまみ盛り合わせ」800円。
のっけから〆ばかり2品ご紹介してしまいましたが、自家製の牛生ハムなどのおつまみや、メイン料理としての「串焼き」「塊焼」も、肉の個性を存分に引き出す火入れ具合に感動すること間違いなし。このハイクオリティな肉料理があくまでも「はいどうぞ~」とさりげなく、どこかゆるい感じで出されるのが「さとう」の佐藤さんらしく、私が「脱力力」を標ぼうしたくなる所以です。
PAGE 5
「肉と野菜とナチュラルワイン さとう」と店名にあるように、作り手の顔が見えている野菜料理も評判。私はこちらのマッシュポテトが大好物。
もうひとつ、店名にナチュラルワインとあるようにワインはすべて自然派。ボトルで4,200円~。
オーナーシェフの佐藤真邦さん。いつも穏やかでニュートラル。この方の顔を見るだけでほっと柔らかな気分になり、「なんか美味しいもの食べさせて」と甘えたくなります。
優しげでふんわりとした「肉と野菜とナチュラルワイン さとう」には春の宵がよく似合います。江古田は必ずしもデート向きの街ではありませんが、まだそれほど深い付き合いではないお相手をこんな“ゆるふわ”なお店へ連れていけば、出てくるお料理はガツンと肉の旨味がたっぷり! というギャップに萌える女子は(男子も)多いことでしょう。

これ見よがしでない行きつけの店をいくつ持っているか……そんなところにオトナの愉しさはあるように思います。

■ 肉と野菜とナチュラルワイン さとう

住所/東京都練馬区栄町40-12
予約・問い合わせ/070-3991-4430
営業時間/11:30~16:00(L.O.15:30)、18:00~22:00(L.O)
定休/不定休
*江古田駅から徒歩5分。近隣にパンの名店「パーラー江古田」も。

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

LEON.jpの最新ニュースをお届けします。

RECOMMEND FOR YOUおすすめの記事

RELATED ARTICLES関連記事

SERIES

READ MORE

SPECIAL