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2019.01.31

マッカーサーから歴代首相、皇族までVIPが愛するあの一皿、この一杯

ニューオープンで斬新な一皿をいただく……のはもちろん刺激的なんですが、ときにクラシカルなものに新味を見出すこともあります。まさに温故知新な“ニュークラシックス”な味を、リニューアルした「東京會舘」で探します。

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文/秋山 都 写真/吉澤健太

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毎回、旬のレストランや話題の新店をご紹介していく連載「美食のネタ帖」。「なんか面白い店ないかなぁ」「最近どこか行った?」と聞かれることが多いLEON.JP食いしん坊担当がガチでおすすめなお店を紹介いたします。

その第5回は今年1月に新装リニューアルオープンとなった「東京會舘」。え、まさかご存知ない? 皇居のお堀端で1922年に創業し、戦中はGHQに接収されていた由緒あるレストラン・バンケット・ウエディングの複合施設。2022年に開業100周年を迎える前に、約4年かけて全面リニューアル。その間は休業していたので「うわ、その名前聞くの久しぶり!」な方や、「いま初めて聞いたけど?」という方もいらっしゃることでしょう。
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1955年、東京會舘にて日本初本格フランス料理スクール開校式の模様。
私の家では頻繁に聞く名前だったなぁ。というのは、母が若かりし頃、東京會舘クッキングスクールで料理を学んでいたから。ホワイトソースやビーフストロガノフ、海老のカクテルなどハイカラな料理はみんな“東京會舘仕込み”だそうで、私の幼心にも東京會舘=なにか美味しいものを食べさせてくれる場所という刷り込みがなされていたのでありました。
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1922年に開業した東京會舘初代本舘。当時珍しいルネッサンス様式は話題となった。
さらにさかのぼって1922年に東京會舘が開業した当時、まだ日本では一般的ではなかったフランス料理など洋食を日本に広めた場所としても知られています。食通として名高い古川緑波(コメディアン、1903-1961)は当時のグルメ雑誌「あまカラ」にこのように寄稿してています。

「東京會舘は、去年アメリカから返してもらって、昔のように――と言っても、本当は昔のようなわけにはいかないんですが――魚や牡蠣の料理を看板に、開店しました。帝国ホテル系統ですから、大体料理も、ホテルの式です。魚は流石に、よく揃えてあります。僕は魚食いじゃないんで、東京會舘のプルニエへ行くと(略)フィレ・ソーレのボン・ファムを、終戦後初めてここで食ったときは、ああ美味い!と思いました」
(「ロッパ食談」河出文庫)
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1934年にスタートした「プルニエ」は、パリの名店「プルニエ」で修業した田中徳三郎シェフが腕を振るった日本のフレンチの草分け的存在。ロッパのエッセイにある「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」は昔も今もスペシャリテ。
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戦後GHQに接収され「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」として使用されていたころ。
終戦後、GHQに接収された東京會舘は将校専用クラブ「アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー」として使用されていましたが、連合軍による占領が終わったのが1952年のこと。つまりこの原稿は53年ごろ書かれたものでしょうか? ロッパさんも「ああ美味い!」と思った“フィレ・ソーレのボン・ファム”を皮切りに、東京會舘の古くて新しいお料理から厳選7品をご紹介していきましょう。
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1.「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」

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「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」(5,700円)は「レストラン プルニエ」にて。価格は税・サ別=以下同
舌平目とシャンピニオンを白ワインと魚の出汁で煮込み、芳醇なバターをたっぷり。さらにオランデーズソースをかけてオーブンで焼き色をつけた「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」。開業当時、パリの名店「プルニエ」と「ホテルリッツ」で修業した田中徳三郎シェフがレシピを伝えた東京會舘のスペシャリテです。リニューアル後の現在は銀座「レ・ザンジュ」、「レストラン・フウ」などで料理長を歴任した松本浩之シェフが、現代の食生活に合うよう少し軽く、より洗練された一皿に仕上げていますが、往時の美味しさと感動は少しも損なわれていないはず。松本白鴎丈など有名人にもファンの多い一皿。
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2.東京會舘ローストビーフ

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ローストビーフはゲストの前で切り分けてくれます。「あ、もちょっとぶ厚く」なんてリクエストもできるかな(笑)。
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伝統のローストビーフ(200g、3,300円~)は「ローストビーフ&グリル ロッシニ」で。
かつて東京會舘での宴席に連なったことのある人なら、このローストビーフはご存知かと。しっとりとやわらかいローストビーフは口中で舌にからみつくちょっと官能的な美味しさ。その秘密は、じっくり4時間かけて焼き上げる火入れの妙。焼き加減をみる際には決して温度計を使わず、体で覚えるのも東京會舘の伝統です。香味野菜など使わず肉だけ1週間煮込んで作るグレービーソースも絶品。こちらは「ローストビーフ&グリル ロッシニ」で召し上がれ。
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3.東京會舘カレー

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12種の薬味がついてくるのも楽しい「ビーフカレー」(2,700円)は「ローストビーフ&グリル ロッシニ」にて。
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創業当初のレシピをベースにした欧風カレー。やさしいスパイスの効かせ具合で万人に愛される味。
玉ねぎを「え、ここまで」と驚くほど細かく刻み、炒めること1日。スパイスをブレンドしたカレー粉と特製ブイヨンを加えて煮込むこと1日。さらに1日寝かせるため、完成まで丸3日を要する伝統の欧風カレー。ラッキョウや福神漬けはもちろん、ミモレットチーズやいちごジャム(意外に合う!)など12種の薬味をちょい足ししながらいただくのも楽しい。

4.ダブルコンソメ

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「ダブルコンソメ」は「レストラン プルニエ」や 「ローストビーフ&グリル ロッシニ」にて。
東京會舘のフレンチにおける味のベースとなるのがこの「ダブルコンソメ」。まず鶏ガラや香味野菜を6~7時間煮込み、丁寧にネルの布地で濾します。これが通常のコンソメですが、東京會舘ではこのコンソメに鶏モモ肉のミンチや香味野菜を加え、さらに6~7時間煮込みます。つまり、コンソメで仕込むコンソメだから、ダブルコンソメというわけ。歴代首相が愛した味でもありますが、かつて常連客が入院した際、このダブルコンソメで回復できたというエピソードも納得の、滋味深いおいしさです。
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5.ダブルコンソメを使った「ブルショット」

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メインバーでいただけるブルショット(2,000円)
このダブルコンソメは料理のみならず、なんとカクテルにも! 「メインバー」ではこのダブルコンソメにウォッカを加え、軽くステアした「ブルショット」をいただけます。この味わい……深い旨味にウォッカのキレが加わり、長く余韻を引くんです。遅く起きた休日の朝の目覚めの一杯にいいなぁ、なんて言っていたら、もっと朝にふさわしいカクテルもあるんですと!

6.東京會舘風ジンフィズ

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「會舘風ジンフィズ」1,600円。
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「クラブハウスサンドウィッチ」(2,000円)とともに食せば、まさに完璧なブランチ! ヘルシーにすら見えてきます。
この「會舘風ジンフィズ」の発祥は、GHQに接収され、将校専用クラブとして使用されていた時代にまでさかのぼります。当時、将校たちの「朝から酒が飲みたい」というリクエストに応え、ジンフィズにミルクを加えたカクテルを開発。さらにミルクを飲んでいるように見えるよう、わざわざシンプルなグラスに注いだのがこの「會舘風ジンフィズ」というわけ。かのマッカーサーも愛飲したといわれています。ちなみにこちらの「メインバー」は午前中(11時30分)から営業していますから、コーンパイプ片手に(バー内は禁煙なので、あくまで持つだけ、ね) 、「會舘風ジンフィズ」でマッカーサー気分のブランチをキメてみるのもいいでしょう。
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7.マロンシャンテリー

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マロンシャンテリーは「ローストビーフ&グリル ロッシニ」にて賞味できるほか、お持ち帰り(908円)も。
マロンシャンテリーは洋菓子の定番だと思っていましたが、実は東京會舘のオリジナルスイーツでした。1950年ごろ、本場のモンブランを日本人向けにアレンジし、スポンジの上になめらかなマロンクリーム、そしてたっぷりの生クリームをまさに雪の山のように美しく飾ったマロンシャンテリーが誕生したというわけ。そこから実に半世紀以上も変わらぬおいしさが今も支持されています。

東京會舘の伝統の味を7つご紹介しました。すべて数十年前に当時の最高の人材と叡智を結集して開発され、現在に受け継がれてきたメニューばかりです。でも少しも古びた味はせず、どれも新鮮な驚きと感動をもたらすものばかり。

1953年に古川ロッパ氏が「美味い!」といったひと皿を、2019年の私が「おいしい!」という。もちろん材料や調理法はより洗練されているけれど、そのひと皿に込められた思いや時間の価値は不変なのでしょう。まさに温故知新の“ニュークラシックス”を味わいにおでかけください。
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■ 東京會舘

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