2026.01.12
あの「パタゴニア」の名品を見分けるわかりやすい方法があります
常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之(FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。
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文/田中知之(FPM) 写真/鈴木泰之(Studio Log)
世界を舞台に活躍するDJ田中知之(FPM)さんが自らの美意識に叶った「男の定番」をご紹介する連載。今回のテーマは……。
■ 「パタゴニア」のレトロパイルカーディガン
「螺髪(らほつ)」いう言葉をご存知だろうか? 螺(ら)とは巻貝のことで、貝の様に渦を巻いた仏様の髪型を指す。そう、奈良の大仏の頭部のあれ。私は螺髪と聞いていつも思い出すのがパタゴニアのレトロ・パイル・カーディガンのこと。
1966年創業のクライミング用品会社をルーツにもつパタゴニア社は、1985年にモルデン・ミルズ社(現ポーラテック社)とともに、ソフトで毛玉ができにくい両面起毛素材である“シンチラ”を開発。高い通気性をもち洗濯も可能で、現在のフリースの元祖と言わるその素材を使って作られたミッドレイヤーの衣服がレトロ・パイル・カーディガンだ。
1988年から1990年のわずか3年間しか製造されておらず、13ミリという長い毛足のフリースは、着用を続けるとパイルが潰れてダマになるのだが、この景色が螺髪に似ている。
2000年から2005年に製造された復刻モデルであるクラシック・レトロ・カーディガンも、同様にヴィンテージ市場で人気が高いが、経年してもオリジナルの様に螺髪状にはならない。一見同じ素材を使っていても、製造年で経年変化に明らかな差異が生まれるのは、リーバイスRのデニムと同じと言えよう。

このオリジナルの見分け方でもっともわかりやすいのが、左右のハンド・ウォーム・ポケットのファスナーが裾のヘムラインにまで届いているかどうかと、左胸に付くナイロン製のパッチ・ポケットのファスナーの開閉が左から右にスライドして開くのがオリジナル(クラシック・レトロはその逆)。
しかし、この個体にはそのパッチ・ポケット自体が付属していない。最初、古着屋で見つけた時、もしやこれはプロトタイプか何かレアな存在なのでは? と期待して購入。しかしよく観察してみると、ファスナーが1988年製と1990年製に付くYKK社製(1989年製のみドイツのOPTI社製)なのと、1990年製のみに付く、冷たい金属製のファスナーが顎に当たるのを防ぐチンフラップがあることから、1990年製造だとわかった(実は裏地に付く白タグの製造番号を見れば一目瞭然なのだが印字が消えていた)。
つまりは単にフラップポケットが外れてしまったのか、わざと外された物だったってこと。残念。でもミニマルなデザインは気に入っている。螺髪は悟りを開いた仏様にのみ現れる特徴なのだが、私のパタゴニア修行はまだまだ悟りを開く段階ではない、ということだ。

田中知之(FPM)
1966年京都生まれ。音楽プロデューサーでありDJ。それでいてクルマも時計も大好物。ヴィンテージにも精通し、服、家具問わずコレクターであり、食への造詣も深い。www.fpmnet.com
2026年1月号より
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