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2020.01.20

いま知っておきたい腕時計の最新【5トレンド】

魅力的なニューコレクションが数多く発表された2019年。1本でどんなシーンにもマッチするSUVのような時計が、今のトレンドだと『クロノス日本版』編集長の広田雅将さん。ファッションと同じく、ラグジュアリーとカジュアルのボーダレス化が進む中、新作の傾向をもう一度振り返ります。

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取材・文/鈴木裕之

スウォッチ グループのバーゼルワールド撤退など、大きな変化の年となった2019年。トレンド不在と言われる現況の中、いま押さえておきたい時計のトピックを、時計専門誌『クロノス日本版』編集長の広田雅将さんに伺いました。

【トレンド その1 老舗のブランドのニューコレクション】

時計のデザイントレンドは「見る」から「見せる」へ

「2019年は老舗ブランドからまったく新しいコレクションが数多く発表されました。前半戦のトピックはオーデマ ピゲの「CODE 11.59 バイ  オーデマ ピゲ」(以下、CODE 11.59)。

このモデルが画期的だったのは、自分で“時計を見る”場合の見やすさと、他人から“見られる”部分のデザインを意図的に分けたこと。今までのドレスウォッチやビジネスウォッチは見せることと無縁だったんですが、CODE 11.59ではそこを分けています。

ダイヤルデザインはオーソドックスだし、自分で目にする部分は平面的なんですけど、腕に付けて、他人から見られるケース側面やガラス面などは立体的。これは見せることを意識した初めてのドレスウォッチ、あるいはビジネスウォッチと言えるかもしれません」

◆ オーデマ ピゲ 

ロイヤル オークと双璧を成す待望のニューコレクション

「CODE 11.59 バイ  オーデマ ピゲ オートマティック」自動巻き、18KWGケース(41mm)、アリゲーターストラップ。280万円/オーデマ ピゲ(オーデマ ピゲ ジャパン)

2019年のSIHHで発表されたニューコレクション。ラウンドシェイプの中に、「ロイヤル オーク」譲りのオクタゴンシェイプを巧みに組み合わせています。正面から見るとベーシックな造形ですが、プロファイルはかなり立体的。八角形のミドルケースやスケルトナイズされたラグ、表裏で曲率を変えたガラスなどの表情が一気に主張してきます。

後半戦の話題はブレスレットウォッチ。ショパールの『アルパイン イーグル』に続いて、A.ランゲ&ゾーネから『オデュッセウス』が出ました。両コレクションとも、ブレスレット専用にデザインされたものなんですが、ブレスレットそのものがすごく良い。剛性はあるけど、硬すぎないないんです。

これまでスイスやドイツの腕時計って、いくら工作機械が良くなっても、ブレスだけはイマイチだったんです。そもそもヨーロッパではブレスレットを好むカルチャーがなかったので、工作精度だけを高めた、ガチガチのブレスを作りがちだったんです。

ほら、腕のカタチって円柱じゃなくて円錐じゃないですか。だからガチガチ過ぎるとうまく馴染まないんです。また最近のブレスレットは、コマとコマの間にある“アソビ”の作り方がうまくなったように感じます。ブルガリの『オクト フィニッシモ』あたりでようやく、バックル部分を薄く仕上げてヘッドとバランスを取ろうとする動きが出てきましたね」

◆ ショパール 

1980年代のベストセラーモデルを現代的に再解釈

「アルパイン イーグル ラージ」自動巻き、ショパール ルーセント スチール A223ケース(41mm)&ブレスレット。147万円/ショパール(ショパール ジャパン プレス)

1980年代に発表された「サンモリッツ」をモチーフとする、新しいブレスレットウォッチ。ラウンドベゼルに設けられた4対8本のビスがアイコンです。一般的なステンレススチールに比べて約1.5倍の対磨耗性と、ホワイトゴールドのような輝きを両立させた新素材”ショパール ルーセント スチール A223"を全面的に採用し、カジュアルユースにも適した個性を放っています。

◆ A.ランゲ&ゾーネ 

スチールブレスレットを持つ、新生プロダクトファミリー

「オデュッセウス」自動巻き、SSケース(40.5mm)&ブレスレット。310万円/A. ランゲ&ゾーネ ※2020年3月まで全世界のA. ランゲ&ゾーネブティックにて先行展開予定

スタンダードコレクションとしては初めて、ステンレススチール素材を積極的に導入したランゲ初のスポーティウォッチ。ブレスレットの入念な作り込みに加え、アウトサイズのデイデイトは、リューズの操作によって日付・曜日の表示を深夜12時をまたいで進めたり戻したりできる特殊な機構が盛り込まれています。ケースの厚みも巧みに抑えられており、新しいブレスレットも含めた装着感も極めて高いのが特徴。

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【トレンド その2 現代の主流はスポーティウォッチ】

“スポーティ”とは、1本で何でもこなすオールラウンダー 

「こうした新しいブレスレットウォッチも含めてなんですけど、現在の主流になっているのはスポーティウォッチなんです。スポーツじゃなくてスポーティ。クルマで言ったらSUVです。

現代のスポーツウォッチは、超ハイスペックでとにかく頑丈。逆にスポーティウォッチは、そこそこのスペックがあるけどケースが薄い。ファッションと同じでちょっと混沌としてるんですけど、コンフォータブルで、使うシチュエーションを選ばないような時計がスポーティウォッチです。

コンセプトとしては、1970年代のオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」の焼き直しなのですが、よりカジュアルな雰囲気だと思います。もっとも、1972年当時のロイヤル オークの広告ビジュアルを見ると、ブレスレットを結構緩めて"ジャラ着け"してるんですよね。

スポーティウォッチがブレスに向く理由は、ケースが薄いからなんです。つまり、ヘッドが軽くなった分、バランスが取りやすいということ。だから緩めにフィッティングしてもイケる。ブレスレットが巧く作れるようになってきたので、スポーティウォッチがこれからの主流になることは間違いないでしょう」

◆ シャネル 

何も変えずにすべてを変えた超絶完成度のニューJ12

「J12」自動巻き、高耐性セラミックケース(38㎜)×ブレスレット。63万2500円/シャネル

シャネル独自のデザインのケニッシ製ニュームーブメントを導入し、2019年にフルリニューアルされた「J12」。2002年に登場したオリジナルデザインを踏襲しつつ、ほとんどのパーツが刷新され、ケースはバックにサファイアクリスタルをあしらったセラミック製一体型に。ヘッド、ブレスレット、バックルの重量バランスが素晴らしいため、装着感も優れています。

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【トレンド その3 進化するケースマテリアル】

キズが付かなければ、ケースはいつまでも美しい

「薄いスポーティウォッチが"デザイン的なスポーティ"だとすれば、もっと普通のスポーティにも注目です。これは、1930年代のロレックス『オイスター』の直系です。今ではスタンダード過ぎて誰も意識していませんが、これも立派なスポーティウォッチでした。

こういった普通のスポーティウォッチで注目すべきは、セラミックスなどの素材使いです。セラミックスが流行った理由は、薄いスポーティウォッチがメインストリームになったのと同じ理由。時計のカジュアル化です。

ケースやベゼルをセラミックス化することで、SSやチタンでは作れない色が出せますし、硬いからキズもつかない。いつまでも新品のようなキレイさがキープできることは、高級時計にとって最も重要な、サステナブルな性能のひとつです。シャネルの「J12」はブラック&ホワイトなので色はあまり関係ないのですが、キズが付かないという点が最も重要なんです」

◆ ラドー 

ミニマルなケースデザインをカラードセラミックスでコーデ

「トゥルー シンライン」クオーツ、ハイテクセラミックケース(39mm)&ブレスレット。21万円/ラドー

セラミックス素材の先駆者であるラドーが誇る、超薄型のクォーツウォッチ。ベゼルを廃したモノブロック構造のケースが、徹底したミニマリズムを体現します。グランディ・ジャルディーニ・イタリアーニとの提携から生まれたネイチャー コレクションは、さまざまな自然の表情からインスピレーションを受けたMOPダイアルを備えています。

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【トレンド その4多様化するカラーレシピ】

2019年はグリーン。でもそれだけじゃない。

「セラミックス素材を最初に使い出したのはラドーでした。当初は硬いというメリットで採用しましたが、今では様々な色を出せるようになっています。そうなるとダイヤルにも色を与えたくなる。現在のラドーは、硬いケースに加えて、カラフルな文字盤をもつようになりました。

ちなみに、ダイヤルで個性を出そうというのは、今も昔もまったく変わらない手法ですが、その表現が増えてきた。

今年の流行色はグリーンですが、だからと言ってグリーンだけな訳ではない。ブルーダイヤルが流行った時はブルーだけ、グレーダイヤルの時はグレーだけになったのですが、今は違います。これはサプライヤー主導でダイヤルカラーが決まっていた当時と違って、ブランド主導で色を選ぶようになってきたからです」

◆ H.モーザー 

数あるグリーンの中でも最も美しい!? コスミックグリーン フュメ

「パイオニア・センターセコンド」自動巻き、SSケース(42.8mm)、ファブリックストラップ。155万円/H.モーザー(イースト・ジャパン)

2019年のトレンドカラーとなったグリーンダイアルですが、実際に発色させる方法はペイントから各種ガルバニック(メッキ加工)まで多種多様。そうした中で、特に優れた発色を誇るのがH.モーザー特有のフュメダイアルで、ガルバニックで表現された鮮やかなグリーンに、ペイントによるグラデーションを重ねています。下地のサテンもかなり美しい。

「少し古い話になりますが、20年前まで時計のダイヤルはホワイトかシルバー、またはゴールドくらいしかなかった。ブラックダイヤルを好んだ市場は日本とドイツだけだったんです。それが今ではブラックもデザイン的に好まれますし、それ以上にいろいろなカラーが使えるようになりました。

鮮やかなカラーが使えるようになった理由はもうひとつ。ガラスに施す無反射コーティングの品質が良くなったことで、ダイヤルの色や質感がよく見えるようになったからです。これはジャン-クロード・ビバーがウブロで最初にやったこと。ウブロがカラーダイアルを好んで使ったのは、まずコーティングの質を高められたからなんです。

最近のダイヤルは、ペイントでも表面にクリアの保護膜を吹かなくなっています。吹かなくてもいいから、ダイヤルにセラミックスを使うオメガのようなブランドも出てきた。全部繋がっているんです。ファッションの観点でも、選べる色が増えたのは嬉しいですよね」
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【トレンド その5 二極化するスマートウォッチ】

選ぶ決め手は装着感=ウエアラブルな性能

「デザイン的なスポーツウォッチという部分でも少しお話しましたが、立体的なケースに平面的なダイヤルという組み合わせは、そのままスマートウォッチにも当てはまります。スマートウォッチは液晶ですから必ず平面ですよね。だからデザイン面だけを言えば、高級時計もスマートウォッチも手法は同じ。これから500ドル以下の価格帯はスマートウォッチが主流になるでしょう。

ですが残念ながら、SUV的なスマートウォッチのほうはAppleのひとり勝ち。ロレックスと同じで、高品質なプロダクトを大量に作るという点で、他社は近づくことすら厳しいのが現実かと。

だからSUV的な「Apple Watch」に対して、スポーツウォッチのような機能特化型のスマートウォッチが、もうひとつの主流になるでしょう。ただし、ログ管理や加速度センサーなど、ハード面はもう劇的には進化しないでしょう。

注目したいのはウエアラブルな性能。つまり装着感です。機能特化型のスマートウォッチで、これがウマイのはガーミンやスント。対してスマートウォッチから市場参入したブランドはスペックだけを重視しがちで、時計が装身具であることを忘れがちなようです」

◆ スント 

機能特化型のスマートウォッチは装着感がチョイスのポイント

「スント 5 オールブラック」バッテリー、SSケース(46mm)、シリコンブレスレット、50m防水。 4万3000円/スント(スント カスタマーサービス)

インテリジェントバッテリーモードの搭載で、最長40時間の連続駆動を実現したGPSスマートウォッチ。80種以上のスポーツモードを備え、毎日24時間分のアクティビティログを記録するなど、かなりのハイスペック機。決してコンパクトではないが、ストラップの角度が最適化されているため、優れたフィット感を得られます。

「最後にまとめると、2019年のキーワードはSUV化。つまりどんなシーンでも使えるボーダレス化です。これは1970年代に登場したラグジュアリースポーツの拡大再生産ですから、その裏で機能的な先鋭化も進むでしょう。

モノへの執着が薄くなってきた新しい世代にはSUV的な時計は魅力ですし、より単一機能にこだわる層は、より先鋭化したスポーツウォッチや、2針しかない薄型ドレスウォッチなどを何本も持つようになる。ボーダレス化と先鋭化という二極化は、時計以外のジャンルでも進んでいくと思います」
※掲載商品はすべて税抜き価格です

■ お問い合わせ

イースト・ジャパン 03-6274-6120
A. ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000
シャネル(カスタマーケア) 0120-525-519
ショパール ジャパン プレス 03-5524-8922
スント カスタマーサービス 03-4520-9417
ラドー 03-6254-7330

● 広田雅将(ひろた・まさゆき)

1974年生まれ、大阪出身。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活躍し、2016年より現職。関連誌含め連載を多数抱える。また、一般・時計メーカー・販売店向けなど、幅広い層に対して講演も行う。

高級腕時計専門誌クロノス日本版 [webChronos]

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