• TOP
  • ELECTRONICS
  • 桐島ローランドが語るデジタルの世界、連載開始! AVATTAが目指す写真の未来ーー2Dから3DCGを創る「フォトグラメトリー」とは?

2018.11.11

桐島ローランドが語るデジタルの世界、連載開始! AVATTAが目指す写真の未来ーー2Dから3DCGを創る「フォトグラメトリー」とは?

モデルやフォトグラファーとして活躍したのち、2014年に3DCGプロダクション「AVATTA(アバッタ)」を立ち上げた桐島ローランドさん。同社が専門とする、写真から3DCGを描き出す「フォトグラメトリー」の技術と、その先にある未来とは? 記念すべき連載第1回目をお届けします。

CREDIT :

文・写真/桐島ローランド コーディネイト/JUBILEE

フォトグラメトリーにより3Dデータ化された桐島ローランドさん。
フォトグラメトリーにより3Dデータ化された桐島ローランドさん。
デジタルテクノロジーに造詣の深い桐島ローランドさんによる連載が今回よりスタート! 記念すべき第1回目は、「写真」と「3DCG」の未来について、桐島さん自身の経験から紐解いてもらいました。
PAGE 2

フィルムからデジタルフォトへ

僕がフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせたのは25年くらい前。当時はまだフィルムの時代で、写真撮影は厳密なライティングを駆使できるものだけが存在価値を持つ、緊張感と一発勝負の表現手法でした。

ところが1990年代の終わりから2000年代はじめにかけてデジタルフォトグラフィーが一般化してきたおかげで、写真表現の可能性がそこから無限に広がっていったのです。

例えば、フィルムではできなかったこと…撮影した写真をその場で確認できるようになり、クライアントとのイメージ共有や意思疎通、ライティングの確認・変更など、限られた時間の中でよりフレキシブルな対応が可能になりました。

また、フォトショップなどのソフトを使った撮影後の表現の拡張性により、新しもの好きな僕にとってはとてもスリリングで、いろんな表現を楽しめるようにもなっていったのです。

それと同時に2000年代以降はカメラを搭載した携帯電話の普及などにより、誰もが手軽に写真を撮れるようになったし、ここ数年ではドローンを使った空撮表現も可能になり、テクノロジーの進化は写真の世界に大きな影響を及ぼしてきています。

ただそれでも、写真は写真でしかないーー。

次第に僕は、実際に目の前にあるオブジェクトを二次元に押し込めるという窮屈さに表現の限界を感じてもいました。

で、そんなレギュレーションを乗り越えて、さらに「リアル」を追及できる手法がないものか? なんて思っていた時に、たまたま友達に誘われてシリコンバレーへと向かいました。

そこで、写真を使って3DCGデータを作る技術「フォトグラメトリー」に出会ったのです。
フォトグラメトリー
「フォトグラメトリー」とは、さまざまな角度から立体物(人物など)を撮影し、それぞれの撮影画像を合成することで3Dデータを形成する技術。コンピュータ上で立体物をつくるCGよりも写実的であるのが特徴。(三角錐は撮影したカメラの位置を示します。)

新しい表現を求めて、3DCGへ

シリコンバレーから帰国後、写真から3DCGを作り出す「フォトグラメトリー」の技術にすっかり魅了された僕は、海外サイトやYoutubeなどの情報を頼りに、自分の一眼レフカメラとPCを用いてシステム構築を試みました。すると、2週間ほどで基礎設計ができあがり、その勢いで会社を立ち上げてしまいました。それが現在、僕が代表を務めるAVATTAです。
ちなみに、AVATTAという社名は、ヴァーチャル空間等で自分の分身となる”Avatar”(アバター)を由来としている。フォトグラメトリーで写し出すのは、まさしくその人自身のアバターでもあるからだ。
AVATTAという社名は、ヴァーチャル空間等で自分の分身となる”Avatar”(アバター)を由来としています。フォトグラメトリーで写し出すのは、まさしくその人自身のアバターでもあるからです。
しかし、いざ会社を立ち上げたものの、そこからは苦労の連続。フォトグラファーとして培ったライティングの技術とフォトグラメトリーとの相性はよかったのですが、実用レベルにまで持って行くには、さらなる研究開発を重ねなけらばならなかったからです。3DCGは、僕が慣れ親しんできた写真とは全く違うプロセスなので、手探りからのスタート。まるで暗号解読するような日々が続きました。

ただ、試行錯誤を繰り返し新しいことを覚える、そしてそれが形になる瞬間は最高にエキサイティングでした。
PAGE 3

フォトグラメトリーの原理

ここで、先ほどから話に出てくる「フォトグラメトリー」について、その原理を説明しましょう。2Dの写真を3D化する基本原理は、だいたい以下のようなものになります。

(1)一つの立体物に対して、さまざまな角度から写真を撮影する。
(2)複数の写真を重ねていき、立体のポイントとなる「特徴点」を抽出する。
(3)それらの特徴点の集まり(点群)を線で結び、ポリゴンを作成。3Dデータ化する。

ちなみに、フォトグラメトリーは航空写真から地形測量を行う技術(UAV測量)がベースになっています。

ここでは実際に、どのように撮影が行われ、3Dデータ化していくかを実例を元にご紹介しましょう。
1.まず、AVATTAには「全身用」と「フェイシャル用」のスキャナーがあります。この中に実際に人が入り、多数のカメラで囲われた空間であらゆる角度から同時に撮影をします。
2.撮影された複数の画像を1つのデータに統合し、特徴点の集まり=点群を形成。
null
3.専用ソフトによって形成された点群のデータです。
null
4.その点群を線で結んでいき、3Dポリゴン化。(用途に応じてポリゴン数を調節します)
null
5.皮膚などのテクスチャをポリゴンデータに貼り、3DCGデータの完成です。
null
6.完成した3Dデータを背景の環境に最適化することでフォトリアルなイメージになります。

AVATTAの現在

なお、会社を立ち上げた当初はタレントやモデルといった人物の3Dフォトスキャンの案件ばかりでしたが、あれから4年たった今、写真やCGに長けたメンバーはもちろん、プロデューサーやバックオフィサーなど、国籍もバックグラウンドも異なる精鋭が続々と集まり、表現や活動領域がさらに拡大してきました。

様々なスペシャリスト達が複合的な連携を行うことが可能になり、AVATTAは現在、VR/AR等のプロダクトアウトが可能な「総合3DCGプロダクション」として完成しつつあります。そして、AVATTAは、多様な人財が躍動するコスモポリタンな場となっているのです。
null
AVATTAのメンバーとアメリカへ撮影旅行中のワンショット。
PAGE 4

テクノロジーのその先へ

3DCGは今のところ日本では、主にゲーム分野でのニーズが高くあります。けれども今後はデジタル広告やキャラクターコンテンツなど、いろんな方面で応用が効くエクスパンダブルな表現だと確信しています。

また、長年ファッションフォトをやってきた僕にとっては、アパレルとの融合ももちろん視野に入れています。洋服も専用のアプリケーションを使ってデザインできる時代になったし、AIを持った人間そっくりの「デジタルモデル」が普通になる時代がすぐそこに来ているのです。

そうなれば、スタイリッシュでいながらも肖像財産権を持たないモデルが、ヴァーチャルファッションショーを行うことも可能になります。5Gと呼ばれる次世代通信インフラももうすぐ整うので、さらにリッチなコンテンツによるユーザー体験を得られる時代になっていくのは明白でしょう。

そういった「立体コンテンツ」の主軸を担うのは、フォトリアルな3DCGであることは間違いありません。手前味噌ながら、現在、AVATTAは日本トップクラスのフォトグラメトリースタジオを擁しつつ、フォトリアル3DCGを極限まで追求できる唯一のプロダクションでもあるのです。

日本の文化財をアーカイヴ

ついでに、もう一つ、フォトグラメトリー技術を応用し、建築物をVRコンテンツとしてとして完全再現したユニークな事例を紹介しましょう。
旧門司税関建築VRワンカット
旧門司税関建築をVRで再現したワンカット。
これは北九州市にある、近代化産業遺産に指定された、旧門司税関(1912年築)を建物の内外からスキャンし、VRコンテンツ化したものです。カメラが届かない場所はドローンを飛行させ撮影、内部ディティールはレイザースキャナーという装置を活用しました。

下記のメイキング映像で、そのプロセスをご覧いただくことができます。
このように貴重な文化財等をアーカイヴすることも、僕のミッションだと考えています。

駆け足でご紹介してきましたが、この時代、この先起こりうるすべての可能性を挙げることは難しいけれど、一つだけ確かなことは、ビジュアルクリエイションの革命が加速するスリリングな時代はもう始まっているということです。

目に見えるものカッコイイものやキレイなもの、残されるべき文化をヴァーチャル上に完全再現する。
"as real as it gets"を掲げ、フォトリアルな3DCGで、世界を席巻する。

それが今の僕の目標です。

東京から世界へ。桐島ローランドのライフハック

本連載では、そういったテクノロジーの先端と、それが実際に生活に落とし込まれた利用法などをお伝えしていこうと思っています。テクノロジーの力で生活を変えて行く、ハックしていく。そういった意味を込めて「東京ライフハック」という連載タイトルとしました。

蛇足ではあるけれど、国越やジャンル超えるにはリスクを取らないといけない。

「take your own risk」...それが僕が幼いころに教わった指標。

その言葉をサブテーマに、この先も僕のライフハックを楽しみにしてください。
null

●桐島ローランド

フォトグラファー・総合ヴィジュアルクリエイター・3DCGエバンジェリスト。

1991年 ニューヨーク大学芸術学部・写真家卒業後、本格的にフリーランス・フォトグラファーとしてのキャリアをN.Y.でスタート。
1993年 東京に活動拠点を移し、多くのファッション撮影、広告撮影の他、ムービー作品も手掛ける。
2007年 パリ・ダカールラリー完走
2014年 3DCGプロダクション、AVATTA設立、代表取締役に就任。ヴィジュアルクリエイターとして写真・ムービー等を制作する傍ら、3DCGが真のフォトリアルとして躍動し融合を果たすことを目的としたエバンジェリストとしての活動を行う。国内外を問わず、多数のテクノロジーオリエテイティドなカンファレンスなどにも出席、マイクロソフトの販売代理店アドバイザー、自動二輪車メーカーのアンバサダー等も務める。

AVATTA URL/https://avatta.net/

3Dモデルサンプル/https://sketchfab.com/avatta

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

登録無料! 最新情報や人気記事がいち早く届く! 公式ニュースレター

人気記事のランキングや、Club LEONの最新情報などお得な情報を毎週お届けします!

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        桐島ローランドが語るデジタルの世界、連載開始! AVATTAが目指す写真の未来ーー2Dから3DCGを創る「フォトグラメトリー」とは? | エレクトロニクス | LEON レオン オフィシャルWebサイト