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2021.12.15

89歳「酒造りの神様」と34歳ミシュランシェフが切磋琢磨した一夜

年の暮れを迎え、時折センチメンタルになる筆者が「農口尚彦研究所」の日本酒と、「山崎」のペアリングに励まされ、まだまだ頑張るぞ! と決意した一夜を振り返ります。

CREDIT :

文/秋山 都

LEON.JP食いしん坊担当の秋山都です。

私事ながら、先日誕生日を迎え、またまもなく新しい年を迎える12月……毎年この季節になると、私はあと何年仕事ができるだろうかと考えてしまいます。現在の日本の平均寿命は女性で87.74歳。30年前の1992年には84歳だったことを考えると、30年後には、平均寿命は90歳を超えるかと。つまり、私の余命はだいたい40年余りとなりそうです。その内の健康寿命となると、30年くらい? いずれにせよ、(貯金もさほど無いことだし)少なくとも80歳までは現役で仕事をしたい。そのためには心身ともに健康で、元気でいないと。
▲ 「農口尚彦研究所」にて、農口尚彦杜氏(右)と山崎志朗さん(左)。
なんでこんなことを考えたか、と言いますと、現在89歳になる杜氏、農口尚彦さんによる日本酒と、2022年度版のミシュランでも3年連続で1つ星を獲得した「山崎」(東京・西麻布)の山崎志朗さんによるペアリングディナーに参加し、さまざま触発されたから。89歳でありながら現役でバリバリ活躍する杜氏の姿に励まされ、その背中をいつまでも追っていきたいと考えた次第です。

一方の山崎さんはまだ34歳。親子ほど、いえ、孫といっても差支えないほど年の離れたふたりが互いをリスペクトし、真剣に向き合う姿はほんとにかっこよかった。その日の日本酒とお料理、まさに一期一会のスペシャルな‟出会いもの”を振り返ります。
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◆小松SAKETRONOMY

▲  会場となったのは、「農口尚彦研究所」のテイスティングルーム「杜庵(とうあん)」。
まず「農口尚彦研究所」(石川県・小松市)とは、酒造りの神さまとあがめられる農口尚彦杜氏が率いる酒蔵です。この酒蔵では、小松市産の地元食材を使用して「美食のまち」としての小松市の魅力を発信し、世界中の美食家の「旅のデスティネーション」となることを目標としたプロジェクト「小松SAKETRONOMY(サケトロノミー)」を2019年よりスタート。
これまで「メゾン・ド・タカ芦屋」高山英紀シェフ、「台湾 祥雲龍吟(台湾)」稗田良平シェフ、「レストランA.T(パリ)」田中淳シェフ「京料理たか木」高木一雄シェフとコラボしてきていることは、本記事でも数度に渡ってお伝えしておりますが、今回、昨年に引き続いて登場した山崎志朗さんは、このイベントのために10月中旬に石川県に入り、漁港や農園などを事前視察。生産者と交流を深め、農口尚彦研究所の仕込水(日本酒を造るために汲みあげる伏流水)を使用したお出汁など、日本酒、酒粕焼酎、米麹、酒粕を随所に使用した唯一無二のペアリングをつくりだしました。料理10品と、農口尚彦研究所の日本酒・焼酎9種類のペアリングから、ほんの一部を抜粋してお伝えしますと……。

「LIMITED EDITION NOGUCHI NAOHIKO 01 2017vintage」に唐墨粥

農口尚彦研究所の開業初年度に醸された日本酒の中で、農口尚彦杜氏が選んだ最高のロットをボトリングした4年熟成のヴィンテージ限定酒。いわば、蔵の最高峰ともいえる一杯に合わせたのは、焼いたハモでとった出汁と農口尚彦研究所の日本酒で炊いたお粥に半生のカラスミをのせた「唐墨粥」。このカラスミも、能登塩と農口尚彦研究所の「酒粕焼酎」で漬け込んだそうで、長期低温熟成によりキレイな旨味の乗ったNOGUCHI NAOHIKO_01とカラスミの旨味で……思い出してもヨダレが出そうです。
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「純米大吟醸 無濾過生原酒 2018vintage」に香箱蟹

▲ 冬の味覚といえばこちら「香箱蟹」。なんという美しさ!
冬ならではの美味といえばやはりコレ。農口尚彦研究所の日本酒で茹でた香箱蟹を、外子、内子、蟹味噌の上に蟹肉を美しく盛った一品。合わせた「純米大吟醸 無濾過生原酒 2018vintage」は果実を連想させる華やかな香りに、透明感のあるすっきりとした旨味が特徴の純米大吟醸酒。香箱蟹同様、デリケートな味わいで、繊細な旨味が寄り添うようなペアリングでした。途中で、甲羅に純米大吟醸酒を加えて甲羅酒として飲み干してしまった。なんという贅沢。
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「酒粕焼酎炭酸割り」に塩麹漬

この日、初お目見えした農口尚彦研究所の酒粕焼酎! 炭酸で割り、スダチの果汁と皮を加えた焼酎ソーダはほんのりお米が甘く香る最高に美味なハイボールでした。合わせたのは「なめら(キジハタ)」を農口尚彦研究所の麹で作った塩麹に半日漬けこみ、米粉で揚げた「塩麹漬け」。揚げ物にハイボールだなんて……反則ですよ、これ(笑)。
▲ 農口尚彦杜氏を囲んでチーム「山崎」の皆さん。右端が山崎志朗シェフ。
イベントを終えた農口杜氏は「もうすぐ89歳になりますが、今冬も生涯最高の日本酒を造ろうと一生懸命に酒造りに取り組んでいます。山崎シェフのお料理とのペアリング体験が、これからの酒造りに良い刺激となりました」とコメント。ノートを片手に「なにかアドバイスをください。どんな酒が飲みたいですか」と参加者ひとりひとりに尋ねてくるのです。得た知識、経験は農口杜氏以下8名のチーム(20~40代)に共有され、一丸となって日本酒造りに活かされていくそうで、きちんと後進の育成もされている様に再度頭が下がります。これからも楽しみですね、「農口尚彦研究所」!

89歳になり、「酒造りの神様」と仰ぎ見られるような存在の杜氏が、今もなお、これまでにないほど美味い酒を造ろうとする姿に、若干50歳を過ぎたくらいで人生の後半戦に差し掛かったとうなだれている自分が恥ずかしくなりました。がんばれ、自分。あと30年、元気に働くぞ!

◆農口尚彦研究所

住所/石川県小松市観音下町1-1
HP / https://noguchi-naohiko.co.jp/


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