第2次世界大戦中に開発された、初代ジープ
車両総重量 590kg未満
積載量272kg
ボディ形状:角形
可倒式ウィンドシールド
ホイールベース1900mm未満
高さ910mm未満
4~80km/hの間を滑らかに走行できるエンジン
4輪駆動(2速トランスファーケース使用)
バケットシート3座
ブラックアウト&ドライビングライト
135社に呼びかけたにもかかわらず、応じたのは、ウィリス・オーバーランドとアメリカン・バンタムのたった2社だった。条件があまりに厳しかったからだ。特に諸々の条件を満たしたうえで「車両総重量 590kg未満」を実現するのはほとんど“無理ゲー”だったようだ。2社が試作した車両はいずれも重量が上限を超えていた。陸軍は新たに大手のフォードを加え、3社にあらためて試作を求め、今度は各社に1500台生産するよう呼びかけた。最終的に陸軍が採用したのはウイリスの車両だった。
戦後、ジープは民生用に改良され、さらに大量生産された。同時期に登場した世界各国の四輪駆動車は皆ジープの影響を受けた設計やデザインといっても過言ではない。あるいはジープをそのままライセンス生産するメーカーも各国にあった。日本では三菱自動車が三菱ジープとしてライセンス生産した。後に同社を代表するSUVとなるパジェロの前身である。1987年のモデルチェンジで車名がジープ・ラングラーとなったのは、ジープ・ブランドが複数の車種をラインアップするようになったからだ。
試乗会の場所は、世界のオフローダが聖地と呼ぶルビコントレイル
新型ラングラーの実力をお伝えする前に、というかお伝えするためにルビコントレイルについて説明しておかねばならない。19世紀半ば、カリフォルニアのサクラメント近郊で金が採れるとの噂が全米中に広がった。一攫千金を狙う者たちが全米中から同地を目指した。いわゆるゴールドラッシュだ。1949年にその数がピークに達したことから、彼らは「49ers(フォーティーナイナーズ)」と呼ばれた。彼らがカリフォルニアを目指す際、また故郷に帰る際に通ったのがルビコントレイルなのだ。
道路網が発達した現代では、ルビコントレイルを通らずとも東西を行き来するルートはいくらでもある。しかしルビコントレイルが廃れることはなかった。世界中のオフロード走行愛好者が聖地と崇め、走りにくるルートとなったのだ。加えてFCAがラングラーをはじめジープ各モデルの悪路走破性を確かめる開発拠点として用いるようになった。彼らがしばしばここを試乗会の舞台として使うのは、開発のために散々走り込んだ場所で、自信があるからだ。ジャーマンスポーツブランドがニュルブルクリンクで試乗会を開くようなものだろうか。
新型は2種のボディに2エンジン。日本にこの秋導入されるモデルは?
さて新型ジープ・ラングラーは、現行型同様、2ドアのラングラーと4ドアのラングラーアンリミテッドの2種類がある。それぞれにソフトトップとハードトップが用意される。エンジンは従来の3.6リッターV6はそのままに、新たに2リッター直4ターボが加わった。変速機は6MTと8ATから選べる。そのすべての組み合わせを日本でも選ぶことができればよいのだが、今秋日本にまず導入されるのはアンリミテッドのハードトップに限られる。エンジンは両方から選べ、変速機は8AT。ただしラングラーは長く販売されるモデルで、今後何度も仕様の変更や追加が予想されるので、将来的に2ドアやソフトトップが導入される可能性は十分ある。
実際、試乗したラングラーはあきれるほどタイヤが上下に動き、大きな岩を乗り越えていった。副変速機でローギアを選べば、通常のハイギアの実質的に約4倍のトルクを路面に伝えることができるため、どんな岩場も、歩くよりもゆっくりの速度でじわりじわりと登っていくことができる。下りもしかり。電子制御のヒルディセントコントロールは一応備わっているが、とてつもなくギアが低いから不要。空気圧を低めて接地面積を高めたタイヤは岩をつかむようにとらえる。オンロードでの乗り心地はさほどよいというわけではないが、閉口するほどでもない。クルマの機構や性格を考えれば十分に納得できるレベルだ。
あえて吊るしの状態で試乗会を開く、その理由とは?
効率一辺倒の世の中で、空気抵抗の大きな四角四面のデザインを維持し、重量面で不利なラダーフレームシャシー構造を堅持するのは簡単ではなかったはずだ。昨今自動車メーカーは自社製品の平均燃費が一定水準に達していることが求められるため、ラングラーをラインナップするとなると他のクルマで燃費を稼がなくてはならない。しかしそれは言い換えれば他のクルマでカバーすれば皆が望む昔ながらのジープを存在させ続けることができるということだ。FCAは何をどうすればユーザーやファンががっかりせず喜ぶかを理解していた。
伝統のリジットアクセルとコイルスプリングは新型でも踏襲。上下の可動領域は非常に高い。
ネバダ州境のシエラネバダ山脈を超える峠道、ルビコントレイルで国際試乗会が開かれた。
インパネ周りのデザインもより現代的に進化している。
新型にもソフトトップとハードトップが用意されるが、今秋日本にまず導入されるのはアンリミテッドのハードトップに限られる
ノーマルのタイヤでも走破性能は非常に高いので、専用タイヤにすれば無敵だ
伝統のデザインを踏襲しながら細部がモダンにアップデートされている
デモンストレーション中のジープラングラー
ショートボディのソフトトップ。王道のジープスタイルといえばこれだろう。
ルビコントレイルを行くラングラージープ
街中ではより一層存在感が増す、伝統のジープスタイル
派手なカラーが似合うのもジープラングラーの魅力
デモンストレーション中のジープラングラー
SUVでは到底走破不可能な岩場もしっかりとした足取りで進む
ルビコントレイルを走っていると絶景の数々に出会う
細部をモダンにリファインしながらもイメージは王道のままに
この程度の悪路であれば快適に走ることが出来る
渡河能力も非常に高い
悪路をコンボイで進む様は圧巻だ
舗装路の走行性能もアップグレードしている
伝統のリジットアクセルとコイルスプリングは新型でも踏襲。上下の可動領域は非常に高い。
ネバダ州境のシエラネバダ山脈を超える峠道、ルビコントレイルで国際試乗会が開かれた。
インパネ周りのデザインもより現代的に進化している。
新型にもソフトトップとハードトップが用意されるが、今秋日本にまず導入されるのはアンリミテッドのハードトップに限られる
ノーマルのタイヤでも走破性能は非常に高いので、専用タイヤにすれば無敵だ
伝統のデザインを踏襲しながら細部がモダンにアップデートされている
デモンストレーション中のジープラングラー
ショートボディのソフトトップ。王道のジープスタイルといえばこれだろう。
ルビコントレイルを行くラングラージープ
街中ではより一層存在感が増す、伝統のジープスタイル
派手なカラーが似合うのもジープラングラーの魅力
デモンストレーション中のジープラングラー
SUVでは到底走破不可能な岩場もしっかりとした足取りで進む
ルビコントレイルを走っていると絶景の数々に出会う
細部をモダンにリファインしながらもイメージは王道のままに
この程度の悪路であれば快適に走ることが出来る
渡河能力も非常に高い
悪路をコンボイで進む様は圧巻だ
舗装路の走行性能もアップグレードしている
● 塩見 智 / 自動車ジャーナリスト
1972年岡山県生まれ。関西学院大学文学部仏文科卒業後、地方紙記者、自動車雑誌編集者を経てフリーランスの自動車ジャーナリストへ。ニューモデルの取材では何よりもまずトランクを開けてキャディバッグが入るかどうかをチェックするほどのゴルフ好き(だがうまくはない)。