2018.03.13
かつて、クルマといえばオーダーメイドが当たり前だった?!
ロールス・ロイスの「ビスポークプログラム」やベントレーの「マリナー」をはじめ、昨今、プレミアムブランドがクルマに一家言ある富裕層たちのために、こぞって本格的なビスポークサービスを展開している。しかし、クルマの歴史を振り返れば、そもそもオーダーメイドが上がり前だった。ここでは、クラシックカーの時代から現代にいたるまで、クルマにおけるビスポークの世界をひも解く。
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文/小川フミオ
エンジン付きのシャシーが販売されていた
ロールス・ロイスを例にとると,販売されていたのはエンジンつきシャシー。欧米を中心した顧客はそれに自分好みの車体を載せていた。
戦前のロールス・ロイスがクラシックカーのイベントに出展されるときは、必ず誰がボディ製作を手がけたが銘記される。馬車(コーチ)時代から続くやりかたで、彼らは英国ではコーチビルダーと呼ばれた。
クルマのビスポークビジネスを支えていたのはハリウッドだった
70年代、富裕層が愛用したシューティングブレークとは?
もちろん、カラーや内装素材だけでも、自分の好きなクルマに仕立てられたら、とてもぜいたくなことだ。
ビスポークサービスの現在形
「ガールフレンドのマニュキュアを持参して、同じ色に塗った車体のクルマを誕生日プレゼントに、というケースもあります」。担当者はそう説明してくれた。
1つは選択の幅の広さ。現代のロールスロイスを例にとると「(ファントム)パレット」という特別仕立ての仕様が用意されている。それでは満足できないという客には「ビスポークプログラム」がある。
ビスポークの際はデザイナーがアドバイスしてくれる
道具としてのクルマの最高のかたちがビスポーク
ビスポークをやれるぐらいの人なら、当然、各地からゲストを迎えて、自慢のクルマに乗せることもあるだろう。その際、なぜこの仕様にしたのか(できれば一瞬で)理解してもらえたら、そのビスポークは成功といえる。
スーツのビスポークの最大のポイントは、いかにフィットしているかにある。クルマの場合、注文主の価値観がいかにクルマ好きの世界観にフィットするかが重要なのだ。
ジョン・レノンはスピーカーをつけていて、通行人が近寄ってくると「あっち行け」などと大きな音声で流し、びっくりするのを見て楽しんでいたとか。それはどうかと思うけれど、道具としてのクルマの最高のかたちがビスポークであるということだ。
ロンドンのウェストミンスターに1805年に創業したコーチビルダー「HOOPER」。ロールス・ロイスやベントレーなど名車のボディを手がけてきたが1959年に廃業。写真はクラシックカーの祭典「グッドウッド・リバイバル 2014」でロールス・ロイスがHOOPERのショップを復活させたもの。
戦前のハリウッドスター、フレッド・アステアが特注したロールス・ロイス「ファントムⅠ」。ボディ後端に搭載されたルイ・ヴィトンのトランクが馬車時代の名残を感じさせる
1920年代のベントレー「3 Litre」。ボディ後端がすぼまった“トーピドー”と呼ばれるボディをまとっている
1965年にデビューしたアストンマーティンのGTクーペ「DB6」をベースにつくられたシューティングブレーク
こちらはアストンマーティン「V8クーペ」ベースのシューティングブレーク。3台のみが製作された
ロールス・ロイスがある上顧客のためにファントム・クーペをベースに4年の歳月をかけて完成させたスペシャルモデル「スウェップテイル」。まさに1点モノだ
ビスポークならば、こんなインパクトのある仕上げも可能。写真はロールス・ロイス「ドーン」
ベントレーが展開するビスポークサービス「マリナー」では、ベンテイガをベースにラグジュアリーなピクニックを楽しむための仕様も用意されている
ジャガー・ランドローバーが英国に開設したビスポーク部門「スペシャルビークルオペレーション(SVO)」
「SVO」のプレゼンテーションルームでは、豊富なカラーサンプルを実際に手に取り、デザイナーにアドバイスを受けながら選ぶことができる
インテリアの素材やカラーもデザイナーも同様。シートなどに刺繍を施すことも可能だ
仕様が決定したクルマは1台1台、手作業で仕上げられる
ジョン・レノンが特注したロールス・ロイス「ファントム Ⅴ」
イエローのベースカラーにペイズリー模様が描かれたボディはインパクト大
ロンドンのウェストミンスターに1805年に創業したコーチビルダー「HOOPER」。ロールス・ロイスやベントレーなど名車のボディを手がけてきたが1959年に廃業。写真はクラシックカーの祭典「グッドウッド・リバイバル 2014」でロールス・ロイスがHOOPERのショップを復活させたもの。
戦前のハリウッドスター、フレッド・アステアが特注したロールス・ロイス「ファントムⅠ」。ボディ後端に搭載されたルイ・ヴィトンのトランクが馬車時代の名残を感じさせる
1920年代のベントレー「3 Litre」。ボディ後端がすぼまった“トーピドー”と呼ばれるボディをまとっている
1965年にデビューしたアストンマーティンのGTクーペ「DB6」をベースにつくられたシューティングブレーク
こちらはアストンマーティン「V8クーペ」ベースのシューティングブレーク。3台のみが製作された
ロールス・ロイスがある上顧客のためにファントム・クーペをベースに4年の歳月をかけて完成させたスペシャルモデル「スウェップテイル」。まさに1点モノだ
ビスポークならば、こんなインパクトのある仕上げも可能。写真はロールス・ロイス「ドーン」
ベントレーが展開するビスポークサービス「マリナー」では、ベンテイガをベースにラグジュアリーなピクニックを楽しむための仕様も用意されている
ジャガー・ランドローバーが英国に開設したビスポーク部門「スペシャルビークルオペレーション(SVO)」
「SVO」のプレゼンテーションルームでは、豊富なカラーサンプルを実際に手に取り、デザイナーにアドバイスを受けながら選ぶことができる
インテリアの素材やカラーもデザイナーも同様。シートなどに刺繍を施すことも可能だ
仕様が決定したクルマは1台1台、手作業で仕上げられる
ジョン・レノンが特注したロールス・ロイス「ファントム Ⅴ」
イエローのベースカラーにペイズリー模様が描かれたボディはインパクト大
● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト
慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。