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2018.03.09

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【Vol.2】相澤陽介氏と前田陽一郎が語る理想のデザインとは?

デザイン案がまとまり、サンプルの生産段階に入ったメカニックスーツ。その過程で、相澤陽介氏とLEON.JP編集長が理想のメカニックスーツについて語り合った。

CREDIT :

写真/金田 亮 取材・文/竹内 虎之介(シティライツ)

相澤陽介氏×LEON.JP編集長前田陽一郎が語る「理想のメカニックスーツ」

2018年春のリニューアルを目指し、LEONと相澤氏が提案したトヨペットの新メカニックスーツは、試作品の作成へと。
シリーズ2回目となる今回は、その試作品チェックの際に実施した相澤氏とLEON.JP編集長、前田との対談の模様を収録。デザインに込められた思いからデザインワークの裏話までとことん語ってもらいました! ※前回の記事はこちら

今回はデザインを合理的にしちゃいけないと思いました(相澤)

前田 今回のメカニックスーツは作業着としての機能やユニフォームとしての制約があるものだから、デザインだけを優先していいものじゃない。そこがおもしろいところでもあり難しいところでもあったと思うんですが…。
 
相澤 メカニックスーツにおいて何が一番大切かといえばもちろん機能です。そこは十分理解した上で、それでも今回妥協しちゃいけないなと思ったのは、トヨペットのひとつの顔になりえる服であるという部分ですね。機能に関してはサイズなどで多少融通の効くところは効かせても、デザインの方を合理的にしちゃいけないな、と。それをやっちゃうとどんどん普通の作業着になっていきます。だからコンセプトには最後まで忠実であろうと思いました。
 
前田 コンセプトというと「チーム感があること」、「プロフェッショナル感があること」それから「メカニックとしての誇りをもてること」でしたね。あと今回の件に関しては通常のメカニック用とトップクルー用を分けることも重要だったかと。
 
相澤 そうですね。それと現実性という点も大切にしました。コンセプトを重視するといっても機能性やコストの問題はありますから。その点今回は製作を担当してくれたイワタフクソーさんがとても熱心に接してくれて、本当に感謝しています。
 
前田 どういう点が良かったんですか?
 
相澤 初めに提案したデザインをまずはそのまま作ってくれたんです。彼らが見れば、それがコスト内で収まるか、上手く機能するかはすぐにわかるはず。でも、何も言わずに作ってくれた。で、それをベースにどこをどうすれば現実的なものになるかを詰めていったんです。彼らもデザインの重要性を十分理解してくれていたからこそ、最終的には現実的な機能とコストをキープした上で、当初の目的を達成できるデザインに落とし込むことができました。彼らもプロ、僕らもプロ。でも洋服と作業着では作り方も哲学も全然違います。そういうジャンルの違うプロの視点が入ることって、今回のようなプロジェクトをやる上ではすごく大切だと思います。
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端から見ても着実に前進している感じがした(前田)

前田 僕もその経緯を見ていて相澤さんのアプローチがとてもおもしろいなと思いました。「これでなきゃダメ」という提案の仕方ではなく、向かうべき方向性をザクッと示した上で、論理的な言葉を添えてデザイン案をイワタフクソーさんに渡していた。一方でイワタフクソーさんも、機能面の押さえどころやコストの重要性をちゃんとした言葉で返してくれた。そこから距離が詰まっていく様子は、端から見ても着実に前進している感じがしました。
 
相澤 寸法に関しても互いの意見を交えました。デザイン的にここだけは譲れないというところの寸法だけを提示して、ワークウエアとしての機能が絡んできそうなところは逆に意見を伺った。そういうふうにお互いのアドバンテージを引き出し合うようなやり方でサンプル作りに取り組んだんです。
 
前田 それは今回の件だけに限らず、相澤さんのモノ作りの基本だったりするんですか?
 
相澤 コラボレーションワークに関してはそうかもしれません。コラボレーションの場合、相手のアレルギー反応が出てしまうようなやり方はしたくないんです。相手の考えに寄り添いながら目的を達成するために僕を出していく。そういう意味では今回も同じです。
 
前田 ああ、わかります。それ、編集の仕事もまったく一緒ですね。それにしてもサンプルを見て正直びっくりしました。完成が本当に楽しみですね!

ここ数年ずっとパブリックデザインをやってみたかった(相澤)

相澤陽介
相澤 自分でもなかなか上手くいったんじゃないかと思っています。当初の提案からはいろいろと変わっていますが、それもアップデイトだと思っています。デザイナーとしてそういう柔軟性は良くないという意見もあるかもしれませんが、僕は最初のアイデアに対して先方と話をしながら広げていって、また小さくして、最後にまとめるというやり方が好きです。なるべく意見の交換をしたい。「これしか出さない」というやり方もあると思うんですが、僕は目指すべき方向性のなかである程度の幅をもたせ、こういう考えならこう、こういう考えならこっち、というような選択肢を提案します。そして見る人がリアルにイメージできるようなものを作ってから、もう一度まとめるという方法が好きです。
 
前田 今回の件は特に、洋服と違って自分たちが着るわけじゃないですからね。
 
相澤 そう、僕が着ることはないけれどトヨペットの全国8000人のメカニックの人たちは毎日着るんですよ。いわば日常生活のなかにあるものです。その生活に対する責任はすごく感じます。だから僕の好き嫌いよりも、メカニックの人たちが良いなと思うものってどういうものなんだろう? と探りながら作業しました。
 
前田 8000人か、すごいですね。8000人が毎日着る服のデザインをするのってどういう気持ちですか?
 
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相澤 実はここ数年、こういう仕事がしたいなってずっと思っていたんです。ファッションデザイナーってデザインをしているわけですが、なかなかパブリックデザインに到達できない。建築家やグラフィックデザイナーのようなパブリックなデザインをしてみたい、そんな願望がありました。だから、今回の仕事は素直にうれしいです。

強く意識したのは“見られる作業着”というところ(相澤)

前田 たしかに制服だからパブリックですね。そんななかでレーシングスーツっぽいデザインを選択したのはどういう理由ですか?
 
相澤 話を聞くなかでトヨペットのオーナーの方って、レースに関心の高い人が多いことを知ったんです。そこでまずレーシングスーツに近いものというアイデアが生まれました。その後、コンセプトに照らし合わせて考えていくなかでピットクルーの存在が気になり始めました。彼らはドライバーではありませんが同じようなスーツを着ている。しかもチームです。さらにテレビなどにも必ず映る。つまりは“見られる”作業着を着ているということです。見られる作業着って世の中にそんなに多くないと思うんですが、販売店のメカニックの方は接客もしますから、まさに見られる作業着を着る人。そういう意味ではピットクルーと同じじゃないかと思い、アイデアを進めていきました。
 
前田 なるほど“見られる作業着”か。そこで機能性とファッション性の融合があるわけですね。
 
相澤 ファッションデザイナーの観点でいうと、古着屋で売られているアメリカの企業のロゴが入った作業着って気になる存在です。商品になっているということは、作業着だけど格好いいということですよね。でも、これまでの日本の作業着ってそういう観点がまったくないまま来ているから、そこを変えたいと思いました。例えば今回デザインしたツナギを上下で切った時、上だけを普段着として着られるか着られないか。それはすごく大事なことだと思って取り組みました。
 
前田 でも、古着の作業着の格好よさって単に洋服としての格好よさだけじゃないですよね?
 
相澤 そこなんですよ。あれは独自性の格好よさだと思います。だから今回はレーシングスーツ風のデザインに加え、トヨペットのアイコニックな部分をしっかり受け継ぐという点がとても大事だと思ってやりました。

これだけ自分のデザインを言葉にできるデザイナーって、会ったことがない(前田)

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前田 それこそ本来のブランディングですよね。それでチャネルカラーであるグリーンにもすごくこだわったんですね。
 
相澤 アイコニックというだけでなく、お客さんの目線で考えた時、お店のなかでどれだけグリーンの比率を大きくするかが大切だと思いました。作業している人がみんな統一されたグリーンを身につけていたら、必然的に販売店全体が緑色になります。すると、ここはトヨタの販売店のなかでも「トヨペット」なんだと感じられるはず。服そのものの格好よさとお店全体に与える影響。パブリックデザインをやるからには、そういうミクロとマクロの両方の視点をもってやらなければいけないとずっと感じていました。
 
前田 いや、それにしてもその説得力はすごいですね。相澤さんみたいに自分のデザインを言葉にできるデザイナーの人って、会ったことがないですよ。
 
相澤 コラボレーションワークが多いせいで、気がついたらプレゼンしなきゃいけない場面がとても増えていたんです(笑)。そのとき重要なのがお互いの納得。デザインが良ければいいだろう、では通用しないんですよ。
 
前田 俯瞰する作業がひとつ入ってきますもんね。
 
相澤 そうですね。そして、言葉にするためには広い視野も必要です。今回の仕事に関しても、いろいろな意見はあると思いますが、僕は他のメーカーや販売店のものをできるだけ多く見ようと思いました。そこから派生してレーシングスーツやレース関係のユニフォームまでかなり見ました。そもそも僕個人のアイデアなんてものには限界がありますからね。
 
前田 それを堂々といえるところがすごいと思う!
 
相澤 デザイナーはアーティストじゃないですから。ただし、どんなにリサーチをしても何かのコピーになっちゃいけない。それをいかに自分のなかで消化して新たなアウトプットにできるかが勝負だと思っています。

トヨペットをトヨタの販売店のなかで一番格好よくしたい(相澤)

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前田 トップクルー用を別仕様にするというのも今回のデザインのポイントだったわけですが、そっちはどういう考え方でデザインしました?
 
相澤 トップクルー用は“ラスボス”感ですね(笑)
 
前田 たしかに! それは感じます(笑)
 
相澤 実は作る時悩みました。販売店のなかでグリーンの比率を増やしたいという考えのなかで、ひとりだけスペシャル感を出す場合、濃淡どっちに振ったらいいのか、と。
 
前田 え、明るい色のバージョンもあったんですか?
 
相澤 そうなんです。デザイン画では白バージョンも作ったんですよ。トップクルーはすごい技術とプライドをもった人材ですから“汚さない”プロフェッショナル感というのもアリかなと思って。もう一方は、最終的に決定したダークトーンのバージョンです。こちらはグリーンの濃度をどんどん上げていって黒に近づけるという方法論。これが黒になってしまっては意味がないので、グリーンと認識できるギリギリの濃さを狙いました。いわば“純度の高いグリーン”です。考え方としては、色の濃さによって技術力の高さを表現しようというものですね。
 
前田 両者とも納得できる意味がありますね。
 
相澤 単に白っぽいのと黒っぽいのを提案したんじゃなく、このふたつはデザインの考え方が違います。白はよりメンタリティを重視したプロフェッショナル感、濃い方はより販売店のアイデンティティを重視した上での上級感の表現です。
 
前田 では、提案するときの気持ちとしてはイーブンだったわけですね。
 
相澤 トップクルー用だけでなく、一般用に出した3案についてもどれを選んでもらってもいいと思って出しました。
 
前田 さっきもおっしゃっていたように、同じ方法論のなかでの硬軟ではなく、方法論の違うA、B、C案だからですね。そして、どの方法論を採用しても目的は達成できるようになっている。それから、すべてのデザイン案で左胸にはトヨタ自動車のマークが入っていましたが、あそこはハズせないこだわりだったんですね。
 
相澤 トヨタマークを心臓に、という意味を込めました。そして絶対に入れたかったです。なぜならクルマを買う人にとって販売店の違いは、よくわからないことだと思ったから。だから、まずはトヨタのクルマを売っているということを明確にしたかった。その後、グリーンを認識してもらって、トヨペットに愛着をもってもらうという順番じゃないかと思ったんです。
 
前田 そういえば、相澤さんも最近グリーンのアイテムが増えたんじゃないですか?
 
相澤 そうなんですよ(笑)。他のコラボの時もそうなんですが、取り組んだ仕事相手をすごく好きになってしまうんです。最近は何か色を選ぶものがあるとついついグリーンを選んでしまう(笑)。だから僕としては、トヨペットを絶対にトヨタの販売店のなかで一番格好よくしたいと思って取り組んでいます。
気になるメカニックスーツの全貌をお楽しみに! 次回は、実際の制作の現場へと潜入します!
● 新メカニックスーツのデザインについて、詳しくはこちら

● 相澤陽介(ホワイトマウンテニアリング デザイナー)
 
1977年生まれ。多摩美術大学染織科を卒業後、コム・デ・ギャルソンを経て、2006年にホワイトマウンテニアリングを設立する。これまで「モンクレール」、「バートン」、「バブアー」といった世界的なブランドでスペシャルラインのディレクションを担当したほか、「ホワイトマウンテニアリング」と「アディダス オリジナルス」とのカプセルコレクションを発表。2018年春夏シーズンには「ハンティング・ワールド」のクリエイティブディレクターに就任。

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