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2025.09.21

【試乗リポート】飛ばさなくても楽しい、スタイルアイコン「ポルシェ911タルガ4GTS」

ポルシェ911にはカブリオレとタルガ、2つのオープンモデルが存在する。ポルシェはなぜ手のかかるオープンモデルを2つもつくり続けているのか。複雑機構のルーフを備えた最新のタルガに乗って、そのワケを考えてみた。

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文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)

アンチロールバー付きの安全なカブリオレとして誕生

【試乗リポート】飛ばさなくても楽しい、スタイルアイコン「ポルシェ911タルガ4GTS」
ポルシェ911には実に多くのバリエーションが存在する。出力の異なるカレラ、カレラS、カレラGTSなどがあり、さらにボディタイプはクーペ、カブリオレ、そしてタルガがある。このタルガは初代911が登場した翌年の1965年に発表されたもので、今年で60周年を迎えた歴史あるモデルだ。
初代911タルガ。トップの幌を格納し、ビニール製のリアウインドウをたたむとほぼオープンの状態に。
▲ 初代911タルガ。トップの幌を取り外し、ビニール製のリアウインドウをたたむとほぼオープンの状態に。
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そもそもタルガは“アンチロールバー付きの安全なカブリオレ”として登場した。当時のカブリオレは横転時の危険が伴うため、太いBピラーをロールバー(通称タルガバー)として据え置き、脱着式のルーフパネルとファスナーによって開閉可能なビニール製のリアウインドウを備えたモデルがタルガだった。車名はレースの“タルガ・フローリオ”に由来にするものだ。
初代タルガのデザインを踏襲した最新型のタルガバー。
▲ 初代タルガのデザインを踏襲した最新型のタルガバー。
911にカブリオレが追加されるのはのちの1980年代のこと。しかし、タルガも途絶えることなく並行して代を重ねてきた。先代の991の時代からは初代の太いBピラーのデザインを踏襲しながら、手元のボタン操作ひとつでルーフが格納される複雑機構を取り入れている。
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4WD+ウェットモードで、安心、安全に

安全性に配慮し、最新のタルガは4WDのみの設定となっている。
▲ 安全性に配慮し、最新のタルガは4WDのみの設定となっている。
そして最新のタルガは「タルガ4S」と「タルガ4GTS」と、4WDのみの設定となっている。今回の試乗車は911初のハイブリッドモデルである「タルガ4 GTS」だった。

エンジンは新開発の3.6ℓ水平対向6気筒で、トランスミッション(PDK)内に最高出力56PS/最大トルク150Nmを発生するモーターを配置。さらにもうひとつモーターを内蔵する電動ターボチャージャーを組み合わせることで、システム最高出力541PS、最大トルク610Nmを発揮する。EV走行はしない、いわゆるマイルドハイブリッドだ。
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T字型のインパネは1970年代の911からインスピレーションを得たもの。メーターはフルデジタル式になった。
▲ T字型のインパネは1970年代の911からインスピレーションを得たもの。メーターはフルデジタル式になった。
インテリアは1970年代の911からインスピレーションを得てデザインされたもの。メーターパネルはついにフルデジタル式になってしまったが、伝統の5連メーターも選択できるようになっている。
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911といえばエンジンを始動する際には、キーレスになってもひねる操作を儀式としてきたが電動化にともないいまでは一般的なスタートボタン式になった。

軽くプッシュすると、力強い排気音とともにエンジンが始動する。アクセルペダルをゆっくり踏みこむと、低速域から太いトルクが発生する。中央のメーターをよく見れば、回生時にはグリーンの、アシスト時にはブルーのバーの表示が伸びる仕組みになっている。

右足に力を込めると4000rpmを超えたあたりから、いかにもポルシェの水平対向6気筒らしい力強い音を放ち、そして7000rpmあたりまでよどみなく吹け上がる。ハイブリッドとも、ターボとも、言われなければわからないかもしれない。それくらいシームレスでスムーズ、PDKも変速ショックを感じさせず、あっという間に速度が高まる。
フロントエアインテークのフィンが縦型になったのがハイブリッド化されたGTSの特徴。速度に応じて自動で開閉する。
▲ フロントエアインテークのフィンが縦型になったのがハイブリッド化されたGTSの特徴。速度に応じて自動で開閉する。
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足回りにはポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム(PASM)を標準装備しており、走行状況に合わせて減衰特性を自動的に調整してくれる。

走行モードはノーマルやスポーツがあるが、タルガにはより快適なノーマルのほうが適していると感じた。また最新の911には共通のモードだがウェットモードが標準装備されている。これはフロントホイールハウジング内に取り付けられたセンサーが路面の雨量を検知し、状況に応じてドライバーにウェットモードに切り換えるように促し、ウェットモードを選ぶと、アクセルレスポンスや出力を調整し、走行安定性を確保するというものだ。

実際、試乗中にゲリラ豪雨に見舞われ、案内に従ってウェットモードを選択してみたが、安心して走行することができた。

コンフィギュレーターの沼へ

ルーフの幌を格納した状態。
▲ ルーフの幌を格納した状態。
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雨がやんだのでいったん停車してルーフを開け放つ。カブリオレと異なりタルガのルーフの開閉は走行中には行えない。その理由は作動プロセスを目の当たりにすればわかる。よくもまあこんな複雑な動きをするものだと感心するほどで、負荷は相当に高そうだ。開閉にかかる時間は約19秒。
コンソ−ルにあるボタンを操作するとリアガラスが後方へ展開し、幌を収納。その後リアガラスが戻る仕組み。
▲ コンソ−ルにあるボタンを操作するとリアガラスが後方へ展開し、幌を収納。その後リアガラスが戻る仕組み。
ルーフ部分のみが格納されリアはガラスで覆われているカブリオレほどの開放感はないけれど、風の巻き込みは少ないし、適度なオープン感に浸れる。

トップの幌はブラック、ブラウン、レッド、ブルーの4色から選択可能。タルガバーはブラックのほかシルバーにすることもできる。ポルシェのホームページにあるコンフィギュレーターを試すとそのバリエーションの多さに沼にハマってしまう。
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実はタルガはクーペのカレラ4GTSに比べて車両重量が100kg重くなる。したがって運動性能やボディ剛性の面で劣ることは否めない。けれども圧倒的に洒落ている。

ポルシェもタルガのことを「取り外し可能なルーフを備え、独自のコンセプトとしての地位を確立した、スタイルアイコン」と説明している。これだけ多くのバリエーションがあるのだから、飛ばさなくても楽しめる911があってもいい、というわけなのだ。
タルガ4Sは、 3リッター6気筒ターボで最高出力480PS、最大トルク530Nmを発生。車両価格は2633万円。タルガ4GTS は、3.6リッター+ハイブリッドでシステム最高出力541PS、最大トルク610Nmを発生。車両価格は2747万円。
▲ タルガ4Sは、 3ℓ6気筒ターボで最高出力480PS、最大トルク530Nmを発生。車両価格は2633万円。タルガ4GTS は、3.6リッター+ハイブリッドでシステム最高出力541PS、最大トルク610Nmを発生。車両価格は2747万円。
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藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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