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2016.03.14

クルマ以外も本気で造る それが今の潮流です

※本特集は2016年2月号で掲載した企画の抜粋です。
自動車メーカーのブランディングも日々変化し続けている。
特にライフスタイル全般をカバーする取り組みは年々積極的で本気度も半端じゃない。
そこで今回はそういったクルマ以外の取り組みをキャッチアップする。

今の時代、最先端技術はクルマ以外からも生まれる

Biggest(最大)になるより、世の中からGreatest(最高)と言っていただく方が将来性がある」。これは、東京モーターショーにおいてトヨタ自動車代表取締役社長、豊田章男氏の言葉だ。2015年1月−9月にVWグループを抜いて世界の販売台数が首位になったことを意識しての発言だろう。

2012年に当時フェラーリのCEOであったモンテゼーモロ氏が「これからフェラーリは生産台数を減らしていく」と公言したことにも似ているが、ともに最優先はブランド力。それが今の自動車ビジネスにおける最善と言えるのかもしれない。

主な目的は技術の発展による社会貢献だが、一方で、本音はブランドビジネスへの転身だと考えられる。数を売るのではなく、技術力の高さをアピールしてブランド力を高める。結果、金額の多寡に関わらずユーザーが安心してクルマが買えるというのが狙いだ。

とはいうものの、自動車技術の発展は今みんなが同じ方向を向いている分、個性を出しづらくなっているのは事実。自動運転技術やエコなどが大半で、どこもテクノロジーは頭打ちの感が否めない。そこで各社が今積極的に力を注いでいるのが他分野への進出だ。

けれど、単なるコラボレーションや名前貸しではなくイチから手がける本格参入という点がポイント。それがブランド力の底上げとともに、新たな自動車技術の発展にも繋がるというわけだ。

売るクルマがない時にショールームをオープン

その代表例がブガッティだろう。ブガッティは、言わずと知れたスペシャリティモデルのみを造り続ける超絶ブランドだ。近年なら時速400㎞/hを叩き出し、1億円を超える値がついたヴェイロンが有名。そんなブガッティがこの度正式に日本法人の会社、ブガッティ・ジャパンを立ち上げ、青山にショールームをオープンさせた。

BUGATTI [ブガッティ]

超絶っぷりはアパレルでも同じ

ブガッティ・ジャパン青山ショールーム
テーラードのスーツにコート、ブルゾン、バッグにシューズまで、メンズ用のアパレルはすべて網羅したエットーレ・ブガッティ・コレクション。ショールームに飾られるのは約400点で、なかにはタキシードもラインナップしている。
興味深いのは、ブガッティは現在売る新車が世界を見渡しても1台もないことである。今年のフランクフルトモーターショーで、ヴェイロンのファイナルエディションを発表してからクルマは一切世に出ていないのだ(その限定車も発表前に即完売!)。

では、なぜ今ブガッティ・ジャパンを立ち上げたのか。その理由をマーケティングマネージャーに話を伺うと、「あえて現行車がない今だからこそ、クルマ色がついていない状態、すなわちクルマメーカーの域を超えた新しいラグジュアリーブランドとして展開することができるんです」とコメント。

それが証拠に、取材時のショールーム内は1階こそクラシック ブガッティが置いてありつつも、そのほかはアパレルのブティックと何ら変わらない空間に仕上がっている。

つまりクルマ色は一切なし。純粋に洋服だけが並んでいるのである。商品点数は約400点。もちろん今はウールのジャケットや、厚手のブルゾン、ニットなど秋冬モノで構成されていて、春はまた違ったアイテムが展開されるとか。

そして、アイテムの1点1点がかなりリッチかつスタイリッシュに仕上げられていて、名前貸しだけのライセンシーアパレルとは明らかに異なる本気度合いを感じる。
エットーレ・ブガッティ・コレクション
■左:エットーレ・ブガッティ・コレクションを収めたフォトブックは一流メゾンブランドさながらの完成度を誇りブガッティならではの世界観が表現されている。

■中央:ダブルブレストのスーツ。カシミアとシルクを贅沢に使い、軽く上品な着心地を実現。大振りのピークドラペルが印象的な一着。価格は47万5000円。

■右:4ポケのウールナイロンブルゾン。光沢感が品のいい表地も魅力だが、何と言っても裏地のミンクファーが超絶。取り外しも可能で3シーズン着ることができる。価格は132万円。

このショールームが表すとおり、ブガッティの目指すところは、自動車メーカーの枠を超えたラグジュアリーライフスタイルブランドだという。けれど、おもしろいのはブガッティは元々そういった創業理念があったことだ。それは、創業者のエットーレ・ブガッティを含むブガッティ家が芸術一家だったことが大きく、父は建築家で弟は彫刻家、エットーレ自身もミラノの有名美術大学の出身。そんな彼がフランスのアルザスに移り、興した自動車ブランドがブガッティであるがゆえ、創業当時からクルマの開発だけで満足するブランドではなかったというわけだ。そこで、立ち上げたのがエットーレ・ブガッティ・コレクションであった。彼の母国であるイタリアでの生産にこだわり、彼のアーティスティックなセンスを受け継いだコレクションになっている。

Bugatti Tokyo [ブガッティトーキョー]

Bugatti Tokyo [ブガッティトーキョー]

Bugatti Tokyo [ブガッティトーキョー]

世界中の一流ブランドのブティックが並ぶ青山に店を構えるこちら。1階にはバッグや時計がディスプレイされ、アパレルは2階に。

住所/東京都港区南青山6-4-13 ☎03-6427-5393
営業時間/11:00~19:00 水曜定休

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意味がないから意味があるレクサスの取り組み

本格的にアパレルを手がけるのは珍しいケースだが、世の中には売り出さないコンセプトモデルにおいても、クルマ以外を開発することは少なくない。

昔は自立歩行ロボットが話題をさらっていたが今は一段落。最近は東京モーターショーで話題をさらったレクサスのホバーボードが印象に残る。“アメージング イン モーション”というブランド理念とともに「不可能とされることを実現しようと、常に挑戦し続ける」ポリシーのもと、開発に着手したとか。

18カ月の期間を費やし、ドイツの科学者チームと共同で開発。このホバーボードがクルマの開発に直接的に通じるところは当分ないかもしれない。けれど、クルマ好きのみならず多くの人々の度肝を抜いたことは確実。それがレクサスならではのブランディングといえよう。

LEXUS [レクサス]

まさに気分は未来のマクフライ映画の夢物語が現実に

LEXUS プロスケーター ロス・マクグラン
「不可能なんてない。どう解決するかだ」を合言葉に開発が進められた。製作に関わったスタッフは、プログラマーやエンジニアだけでなく、実際にプロスケーターのロス・マクグラン氏の試乗も行い取り組んだのがこだわり。テクノロジーも凄いが、ウッドとアルミを組み合わせた美しいデザインも魅力だ。製作はハンドメイドが大半。上部はコンマ数ミリ単位の手作業で木を削りバランスを調整。下部は超伝導体を使い、磁気で浮遊するユニットを構築。90㎏の荷重までOKとか。

一方で、メルセデス・ベンツは地上から離れてヨットを開発。それはクルマ以外のプロダクトのデザインや販売を手がける「Mercedes-Benz Style」のブランドで行われ、スタイリッシュでラグジュアリーなデザインが目を引く。このヨットは、英国のシルバー・アロー・マリーン社と共同で開発されたもので、ふたつのディーゼルエンジンの最高出力は940hp。デッキにハイテク素材を使用し、かなりスッキリした外観に仕上がっている。このヨットの最大収容人数は10人で、船内は、ヌバックやユーカリ材のパネルを使い、ゆったりとした時間を過ごせるよう落ち着いた雰囲気になっている。ちなみに座席は必要に応じてベッドに早変わりするそうだ。ヨットはクルマと同じく乗り物ゆえにクルマの開発にも通じるし、何よりヨットといった海のスポーツはラグジュアリーなイメージもアピールできるのでうってつけの取り組みといえよう。

MERCEDES-BENZ [メルセデス・ベンツ]

最古の自動車メーカーが仕掛けるブランド改革が止まらない

メルセデス・ベンツ クルーザー
このヨットは、英国の老舗メーカー、シルバー アロー マリーン社も関わって開発。デッキにはカーボンといったハイテク素材を惜しみなく使い、船内はヌバックやユーカリ材のパネルを採用してラグジュアリーな雰囲気に仕上げた。実は一部のVIPに販売され、その価格は驚異の1億6600万円だったとか。室内はとにかくラグジュアリー。最大収容人数は10人で座席は必要に応じてベッドにも早変わりする。スライド式の窓は自動的に陽射しの量も調整してくれるとか。

また、当然ながらクルマの開発に発展させるために開発することも多い。例えば、アウディが手がけたカーボン素材スキーは、アウディがプロスキー分野をサポートしていることと同時に、モノコックやフレームなどに使われるカーボン素材の開発に大きな役割をもつ。

AUDI [アウディ]

技術による先進を表すスポーツギア

アウディ カーボン スキー
アウディはドイツのスキーブランド、ヘッドと共同でカーボン製のスキーを開発。木やFRPよりも軽く耐久性が高いのがウリ。何よりデザインの格好良さも魅力的だ。実際に何度もテストされ、機能性も凄いとか。

そして、一見関係ないように思えるベントレーのインテリアアイテムやランボルギーニのテーラードスーツも、インテリアトリムやシートなどに使われるレザー、ファブリックと相通じるものがある。マセラティも同様にエルメネジルド・ゼニアやポルトローナ・フラウを組んで生地を開発したりするのも同じことがいえるかもしれない。

BENTLEY [ベントレー]

家具ブランドとして実は英国では地位を確立

ベントレー ホームコレクション
贅を尽くしたウッドやレザーがクルマだけ、というのは確かにもったいない。そこで今英国で人気を集めているのがベントレーのホームコレクションなのである。ソファ、テーブル、キャビネットなどアイテムは多彩。日本導入が待ち遠しい。

LAMBORGHINI [ランボルギーニ]

まさにビジネススーツのスーパーカー

ダヴェンザ ランボルギーニ スーツ
イタリアの最高峰テーラー、ダヴェンザとランボルギーニが手を組んだこちらのスーツ。最高峰の生地を使い、イタリアンラグジュアリーを演出。日本での正規販売は未展開。
いま自動車メーカーは自動車メーカーの枠を超えてブランドビジネスをより強化させている。その背景には、生き残りをかけた自動車産業の新たな戦略が垣間見える。そういった他分野の活躍をチェックしながらクルマを選ぶのも大いにアリだし、そこから次の贔屓のブランドが生まれるかもしれない。
写真/森 浩輔 文/田中康友

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