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2020.06.13

【ドライバーズサロン】よく見りゃココがあの由来

名車の面影が息づくクルマ【前編】

編集部の視点から見たちょいマニアックな話からとっておきの新車情報まで、読めば誰かに話したくなるクルマのネタ帳です。今回のテーマはクルマの世界における過去のアーカイブの復刻やオマージュについて。その前編をお送りします。

CREDIT :

文/藤野太一、近藤高史(本誌)

ファッションの世界で昨今、よく耳にする過去のアーカイブの復刻やオマージュ。普遍を愛し、当時のモチーフや 流行をアレンジして取り入れるのはよくある手法です。では、クルマの世界ではどうなのでしょうか。実は調べれば調べるほど、多くのデザインや意匠が過去の名車を彷彿させてくれるのですよ。

傑作デザインを復刻することの難しさ

【Inspire】の意味を辞書で調べてみると《鼓舞する》、《(ある感情や思想を)起こさせる、吹き込む》などと書かれている。そして、ことクルマのデザインに関していえば《触発される》、《感化される》、《インスピレーションを得る》といった意味合いでよく使われる言葉だ。

でも小難しく、インスパイアなんて言わずとも、過去の傑作デザインをそっくりそのまま現代に蘇らせればいいのではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、そう単純にはいかないからこそ、クルマのデザインは実に面白いのだ。

現代のクルマは、法規制でがんじがらめ。デザインは、すべからく衝突安全性という課題に直面する。例えばスチールメッキのパンバーであれば質感も高く、いかにもクラシックでリッチな雰囲気を演出できる。でも、万一の事故の際に人身傷害をいかに軽減するかが大きな課題となっている現在において、そんな屈強な素材を使うことはできない。ゆえに衝撃を吸収するため、バンパーには自ずと樹脂製パーツが使われることになる。

それ以外でも、ヘッドライトの位置やボンネットの高さにいたるまで、数多の制限がある。かつてジャガー車はボンネットの先端にブランドを象徴する「リーピング・キャット」と呼ばれるマスコットを掲げていたが、歩行者保護の観点から取り除かれた。メルセデス・ベンツも同様で「スリーポインテッド・スター」のオブジェは姿を消し、一部最新のSクラスなどは可倒式にすることで対応している。

以前、BMWのあるカーデザイナーからこんな話を聞いた。
「最新の3シリーズも、メルセデスのCクラスも、安全要件をはじめ、このクラスに求められる室内空間を確保し、燃費や高速性能のための空気抵抗値を達成しと、さまざまな要件を加味すれば、実はそのディメンションにはほとんど差がありません。だから3シリーズのような定番で競争の激しいセグメントのモデルほど、デザインは重要な意味をもつことになる。そして、BMWであることをもっとも顕著に表している要素のひとつが、キドニー・グリルになるのです」

ちなみに“キドニー”は英語で腎臓の意味だ。1933年にBMWとして初のオリジナル4輪車「303」をデビューさせる際に、他車との差別化を図るためにグリルを2分割したことが始まりだった。以来、いくつかの例外をのぞいて歴代のBMWモデルにはすべてキドニー・グリルが備わっている。そして最新のモデルではデザイナーの言うとおり、BMWであることを声高に主張するかのようにそのグリルは巨大化している。
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時代が変わっても変えてはいけないもの

そんな“らしさ”を表現するため、数あるクルマのなかには過去の傑作デザインを現代の技術で再現したリバイバルモデルもある。ミニ、VWビートル、フィアット500などがそう。これらに共通するのは、実用性よりもデザインを重視した2ドアモデルであること。それゆえ後席の使い勝手は劣るし、ラゲッジスペースも広くとれない。自動車メーカーにとっては、他クラスと相容れない専用パーツをたくさん用意しなければならずコスト面での負担も大きい。

そこでミニやフィアットは、ベースモデル以外にワゴンやSUVタイプなどの派生車をつくることで、それらをうまく賄っている。一方でベースとカブリオレしかなかったVWビートルは販売台数が伸びず2018年末で生産終了となってしまった。リバイバルモデルといえども、実用性や最新の安全性も求められる時代になってきたのだ。

◆ フィアット 500

誰もが"チンク"とわかる普遍のデザイン

【Old】 フィアット ヌオーヴァ チンクエチェント

▲ルーツは1957年に誕生した2代目500。正式名称はNUOVA 500(ヌオーヴァ チンクエチェント)。 イタリアを代表する大ヒット作だ。全長3mを切るサイズで4人乗りを実現するため 後部にエンジンを置くRR方式を採用。ボディ後部を延長したワゴンタイプも存在した。

【New】 フィアット チンクエチェント

▲チンクエチェントの第3世代は電気自動車。ひと目でソレとわかる内外装のデザインは踏襲。1回の充電でWLTPサイクルで最大320kmの航続が可能。本国ではアルマーニやブルガリとのコラボモデルも発表された。

[Spec]

全長×全幅×全高:3630×1685×1515㎜ 
最高出力:87kW(118ps)
価格:日本発売未定/フィアット(チャオ フィアット)

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リバイバルモデルには、もうひとつ別のパターンもある。ジープ、メルセデス・ベンツGクラス、ランドローバー ディフェンダーなどだ。これらに共通する点は、いずれも軍用車をルーツとすること。四角いデザインは見た目のためではなく、機能としての必然性から生まれたものだ。その本物感がいまや街乗りのファッションアイテムとして高く支持されるようになった。

ジープは縦長の7スロットグリルと台形のホイールアーチを歴代モデルに受け継ぎ、Gクラスではデザインはもとより、まるで金庫の扉のようなドアの開閉音を昨年登場した新型で再現している。新型ディフェンダーはラダーフレーム構造をやめ、モノコックボディ&四輪独立懸架サスペンションと中身を一新したにもかかわらず、水平基調のルーフラインやショルダーライン、弧を描くようなホイールアーチなどを踏襲することで、モダンでありながらもディフェンダーであると、ひと目でわかるデザインを実現した。

◆ ランドローバー ディフェンダー

デザインそのものが先代へのオマージュ

【Old】 ランドローバー ディフェンダー

▲直線と曲線の組み合わせの妙
1948年に生産が始まったランドローバーシリーズをルーツとし1983年のモデルチェンジでランドローバー90/110と改称。90年代に入り上級モデルのレンジローバーやディスカバリーとの差別化をより明確にするため、ディフェンダーの名が付けられた。

【New】 ディフェンダー 110 ファーストエディション

▲水平基調に現代の愛らしさをプラス
2016年に生産終了した本格オフローダー、ディフェンダーの復刻モデル。ボディ骨格をラダーフレームからモノコックへとモダンに刷新しショートホイールベースの「90」とロングホイールベースの「110」がある。

[Spec]

全長×全幅×全高:5018×2008×1967㎜
エンジン:2.0リッター直列4気筒 
価格:820万円(税込)〜/ランドローバー(ランドローバーコール)

後編へ続く。
2020年6/7月号より
※掲載商品はすべて税抜き価格です

■ お問い合わせ

チャオ フィアット 0120-404-053
ランドローバーコール 0120-18-5568

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