2020.02.08
2020年が「変革期」になると言われる理由とは
ドラレコ連携や5Gで変わる「カーナビ」最新事情
世間でよく聞くのが「カーナビはスマートフォン(スマホ)に取って代わられる」という話。しかし実際はスマホ利用が増えてもカーナビ出荷は伸びているのだ。ますます進化するカーナビは、2020年がその変革期になるとも言われている。その最新事情をレポートした。
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文/会田 肇(カーAV評論家)

スマホ利用が増えてもカーナビ出荷は伸びている
それはなぜなのか。まず、スマホは画面が小さいことが挙げられる。スマホの画面サイズは6インチ前後か、それ以下。近くで見るなら十分なサイズだが、カーナビとして車線ガイドや交差点名などを読み取るには、画面が小さすぎる。

スマホと比べた画面サイズは、人気の9インチでも2倍以上の面積比となり、それに伴って表示内容もすべてが大きくなるため、見やすさでは圧倒的にカーナビのほうが上なのだ。
とくに昨年12月からは運転中のスマホの取り扱いが厳しくなったうえに、カーナビも画面を凝視することが禁止されている。そうした中で、カーナビを安全に利用するうえでも画面サイズの大型化は避けて通れない状況にあると言っていいだろう。
自車位置精度に対する信頼性も、カーナビを選ぶ大きな理由になっている。
スマホは、測位をGPSだけに頼る。GPSは周囲の影響を受けなければ、日本が独自に打ち上げた準天頂衛星「みちびき」を併用することで精度を高めることはできる。しかし、受信環境によっては周囲にビルや高架道などの建築物があり、山間でも山岳の影響によってGPSからの電波は乱れ、これが不安定さを招いてしまう。
カーナビはGPSを利用するものの、普段はクルマ側からの車速パルスとカーナビ内のジャイロセンサーを組み合わせ、マップマッチングを併用したアルゴリズムを活用することで安定した測位を実現している。
この安定度はスマホとは桁違いで、例えば地下駐車場から出たときの案内はスマホでは絶対に無理。つねに安心してルート案内が任せられるのはカーナビでしかありえないのだ。
コネクテッド化で迎える変革期
スマホであればストリーミングでいくらでも音楽や映像を楽しめるが、ディスクを入れてすぐに再生できる手軽さ、それにTV番組がいつでも見られるカーナビの魅力を捨てがたいと思っている人は数多い。少なくとも身近なソースを楽しめるニーズがカーナビを支え続けているのは確かなのだ。
そのカーナビもここへ来て大きな変革期を迎えている。それが“コネクテッド”への対応である。

その風向きが変わってきたのは、「CASE」に例えられる新たな自動車業界の流れからだ。
CASEは、2016年にドイツ・ダイムラーが発表した中長期戦略の中で採り上げられた言葉で、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング・サービス)、Electric(電動化)の頭文字を取った造語だが、今後の自動車業界を根底から変えるテーマとして発表された。
以来、この考え方は業界全体を席巻するようになり、とくにカーナビはそのコネクテッドの部分で大きな役割を果たすと期待されているのだ。
5G通信で交通事故を防ぐサービスも可能に
この実用化によって、例えば事故の発生をいち早く後続車に伝えられたり、クルマ同士や歩行者、インフラなどとの通信がより高密度に行えるようになる。つまり、5Gの実用化は、交通事故を未然に防止する環境をもたらすサービスとして期待されているのだ。

欧州で義務化が始まっている「eコール(自動緊急通報システム)」もそれによって実現が可能となったサービスの1つだ。
今後は音声コントロールが一般化し、現状ではスマホだけの測位にとどまるカーナビ機能も、自動車メーカーが進める「SDL(スマートデバイスリンク)」によって車両側の情報も反映できるようになっていく見込みだ。
スマホは車載機と連携することで、安全かつ高い実用性が伴っていくのが今後の流れと言っていいだろう。
カー用品店で販売されるカーナビも、コネクテッドへの対応が始まった。

他社はスマホと連携するにとどまっている段階だが、いずれこうしたニーズに対応せざるをえない状況になっていくのは避けられないと思われる。
2020年、カーナビは新形態へ
昨今のドラレコへの人気を反映したものだが、撮影した映像をカーナビの大画面でチェックできるのが最大のウリだ。撮影した場所をカーナビの地図上に表示できたり、ドラレコの操作や設定をカーナビ側で行えるのもメリットとなる。このタイプは、とくに新車での装着率が高い、自動車メーカー純正に多いようだ。
こうした背景の下、純正ナビも市販ナビも共にコネクテッド化への流れを加速させていくのは確実だ。5Gでの通信はインフラの整備が進んでからとなるが、少なくともクルマ同士が通信する“ローカル5G”への道は意外に早く開ける可能性はある。
そうした意味で2020年はカーナビにとって新たな形態へ発展する契機につながる年になるかもしれないのだ。