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2019.10.06

アウディA8で巡ったザルツブルク音楽祭

40代で好きになったクラシック。その最高峰の音楽祭に招かれたときの華麗な思い出。

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第114回

ザルツブルク音楽祭とアウディ A8

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音楽は好き、、大好きだ。でも、なにが好き、なにじゃなければダメ、、といったことはまったくない。なにか一つに夢中になるとか、凝り固まるといった性分ではないのだろう。

好きが昂じて職業にまでなってしまったクルマにしても同じこと。趣味嗜好の強い人は、とかく旧い価値に拘りがちだが、僕にはそれもない。旧いものも好きだし、新しいものも喜んで受け容れる。

とはいえ、クラシック音楽とはほとんど縁がなかった。親兄弟や友人にもクラシック好きはいなかったし、接する機会もなかった。

そんなことで、クラシック音楽に接するようになったのは遅い。40才台も半ばを越えた辺りから。東京赤坂の「サントリーホール」オープンがきっかけだった。

指揮者もオーケストラの名も忘れた。が、クラシックに縁のなかった僕でも知っていた、高名な指揮者/オーケストラのコンサートに招待され、「ナマでクラシックを聴く素晴らしさ」を初めて体験した。

以来、サントリーホールを中心にクラシック・コンサートに通うようになった。とはいえ、僕も家内も底の浅い素人愛好家に過ぎない。だから、高名な指揮者/オーケストラのコンサートにばかり通うことになった。「高名」ということしか、コンサート選びの基準がなかったのだ。
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ワレリー・ゲルギエフを知ったのは1990年代半ば頃だったかと思う。コンサートの招待状をもらったからとりあえず聴きに行ったという、きわめて消極的なきっかけだった。

きっかけは消極的だったが、最初の出会いでいきなり虜になった。僕にとっても家内にとっても「高名」ではなかったゲルギエフの存在感は、一気に頂点にハネ上がった。

「ゲルギエフの音楽」に惹かれたのはもちろんだが、指揮ぶりにも強く惹かれた。その背中からはオーラが放たれていた。ゲルギエフの世界に完全に引き込まれた、、とでも言えばいいのだろうか。

家内も同じだった。「金縛りに遭ったみたい」と言っていたことを思いだす。

以後、東京で行われるゲルギエフのコンサートは、わが家の定番になった。

さて、本題のザルツブルク音楽祭に話しを進めよう。

オーストリアのザルツブルクで毎年夏に開かれるこの音楽祭。歴史を辿ると、1920年頃にまで行き着く。世界でももっとも歴史があり、多くの物語がある音楽祭といっていい。

世界の頂点に立つ指揮者、オーケストラ、歌劇団、ソリストたちが集まり、世界中から音楽を愛する人たちが集まる。

歴史の刻まれた美しい街はふだんから旅行者が多いが、音楽祭の時期は一段と華やかになり、活気に満ちた街になる。

そんな、ザルツブルク音楽祭に招かれる幸運に恵まれたのは2000年。しかも、ウィーン・フィルハーモニーを指揮するのはワレリー・ゲルギエフだった。もう最高だ。

招いてくれたのはアウディ。僕と家内がゲルギエフの大ファンだと知っていたアウディ・ジャパンのプレゼントだった。

アウディは長年ザルツブルク音楽祭のメインスポンサーの役割を担い続けているが、両者のイメージの相性は素晴らしくいい。

ザルツブルクで泊まったホテルも思い出深い。世界的に大ヒットしたミュージカル映画、「サウンド オブ ミュージック」(1965年)に出てくる湖の畔の城を改築したホテルが用意されていた。

アウディは移動の足も用意してくれていた。
ダークスーツでビシッと決めたショーファーとガイドのついたA8のロングホイールベース・モデル!。

コンサート開演は夕方なので、それまではフリータイム。「A8を自由に使ってザルツブルクを楽しんで下さい」ということだ。なんと贅沢な、、でも、いかにもアウディらしい「キメ方」だ。

とりあえず、ザルツブルクの街を流してもらい、歩きたいところがあるとそこで降ろしてもらった。気になる店が目に入ると、そこで停めてもらった。人気のカフェにも連れて行ってもらった。

世界中を走り回ったが、ショーファーとガイド付きの贅沢なリムジンで街を巡る、、こんな贅沢な経験は後にも先にもこの1度だけだ。

同じような形でアウディから招待された方々もいらしたようで、街では同じ濃いグレーのA8ロングに度々出会った。
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コンサート会場は祝祭大劇場。しっとりと落ち着いた、しかし、華やかさもあり、そして強いオーラが漂う祝祭大劇場、、1度は、と思っていた劇場だが、念願が叶った。

祝祭大劇場の前に整然と並んだA8ロングの「エレガンスと威容」も、クッキリ脳裏に焼き付いている。

ワレリー・ゲルギエフとウィーン・フィルハーモニーの共演は素晴らしかった。
その上、ザルツブルク音楽祭と祝祭大劇場でのコンサートという大きな憧れの実現も重なったので、テンションは否応なく上がった。

カラヤンのような華麗さはないものの、エネルギッシュで情熱的なゲルギエフの指揮と、艶やかで重厚なウィーン・フィルハーモニーの演奏は、「ただ音楽が好きなだけ」の僕をも深淵にまで引き込む力をもっている。

クラシック音楽に特別な造詣がなくても、微妙な音を聞き分けられる耳を持っていなくても、だ。

ゲルギエフとウィーン・フィルハーモニーの共演は日本でも経験していた。しかし、クラシック音楽史の根幹を成してきた地で、劇場で聴くそれは、過去の経験とは大きく異なる次元の音だった。息もできないような感覚で、その音の世界に引き込まれた。

これは、、指揮者も、1人1人の楽団員も、観客も、、すべてが、聖地での演奏に特別な感情と昂ぶりをもって臨んでいることと無関係ではないだろう。

ザルツブルクで過ごした2000年の夏、、一生の思い出だ。

今年の暮れ、サンクトペテルブルクのマイリンスキー歌劇場管弦楽団を率いてゲルギエフが来日する。そのチケットは、もうしっかりゲット済みだ。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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