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2019.07.28

二代目メルセデスベンツAクラスの発表会は船の上だった!?

世界中を旅してきた筆者が、いまも強く印象に残っていた新型メルセデスベンツAクラスの発表会とは?

CREDIT :

文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第105回

2代目メルセデスベンツAクラスの船上発表会

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欧米ブランド新型車の国際発表試乗会は楽しい。スケールが大きいし、ブランドの威信を懸けて全力投球してくるからだ。

試乗車台数ひとつとっても、日本ブランドとはケタが違う。日本ブランドの場合、せいぜい10台とか20台といった台数だが、欧米、とくに欧州ブランドは40台、50台用意されるのは珍しくない。

さらに、デーラー世界大会ともなると、お披露目される新型車の台数はさらに増える。

僕はデーラー世界大会にもよく招待されていたが、もっとも台数が多かったのは300台?くらい。場所はモロッコのマラケシュ。マイアミで200台?くらいというのもあった。

もっとも、そうした台数の場合、クルマのコンディションにはそうとうバラツキが出るのが珍しくなかった。というのも、正式な生産車ではなく、その前段階の生産試作車が多数を占めるからだ。

ジャーナリスト向け国際試乗会でも、最終生産試作段階のクルマが用意されるのは珍しくない。しかし、ジャーナリスト向けは、当然ながら「いい状態のクルマをピックアップしている」という点が違う。

最近の生産試作車の仕上がりの平均点は高いが、かつての平均点は低かった。メーカーによっての違いもかなりあった。上記した300台?を持ち込んだメーカーの場合、平均点はかなり低かった。いや、酷かった。
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走り出して数百メートルで、「これはやばい! 危ない! やめよう!」といったクルマさえあった。

最近はコストの制約が厳しいので、かつてのように、驚かされ、圧倒されるような発表試乗会はほとんどなくなった。が、イベントのセンスと中身の濃さという点では、とくに欧州プレミアムブランドは、まだまだ、大きく日本ブランドの先を行っている。

今回ご紹介するのは、2代目メルセデス・ベンツAクラスの国際発表会。試乗会は含まれず、純粋に発表会だけに絞られたイベントだ。ギリシャのアテネで行われた。

いや、正確に言えば、アテネ港を出発してエーゲ海をクルーズする船上で行われた。2004年6月のことだ。

船は4万トン級のクルーズ船。ドイツの「AIDA Cruises」が所有する船だが、クルーズ船としてはとくに大きな方ではない。

とはいえ、船に馴染みのない僕としては、アテネ港の岸壁に横付けされた船を間近で見た時「強く圧倒された」ことを覚えている。

出航前の船尾デッキで、アテネ港を眺めながらお茶を飲んだ。天候は快晴微風。大型船での旅は初体験だったが、当然心は弾んだ。

アテネを出港したのは午後4時頃だっただろうか。出港してしばらくの間、僕はデッキでエーゲ海を眺めていた。昼と夜の間で、海の色と空の色が刻々変わってゆく、、心奪われる 時間だった。
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かなりの速度でクルージングしているため、デッキに流れ込んでくる風が、髪をシャツを震わせた。

ワールドプレミアのセレモニーは、灯りを落としたミーティングルームで行われた。社長を始め、主要な幹部が揃って乗船していた。

初代Aクラスは、多くの技術上の問題を抱えたままでの見切り発車が災いして、困難なスタートを切った。が、2代目は万全の準備を整えてのスタートだった。

ゆえに、社長の挨拶も、プレゼンテーションも力の入ったもので、巻き返しの意欲は力強く伝わって来た。

エーゲ海をクルーズする船の上での国際発表会というアイデアにしても、そんな意欲が端的に示されたものと言っていいだろう。

プレゼンテーションが終わると会場はメインデッキに移された。

大きく傾き始めた陽は船上のすべての陰影を際立たせ、それだけでもドラマチックだった。そんな中、2代目Aクラスはメインデッキ中央の特設舞台でベールを脱いだ。
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2層構造という最大の特徴も、基本的造形も初代から受け継いではいたが、新型Aクラスは、洗練度もプレミアム度も、明らかに引き上げられていた。大きく、、。

新型Aクラスを取り囲む人たちがまばらになり始めたのは小一時間ほど経ってからだっただろうか。ちょうどその頃、エーゲ海は赤く染まり始めた。サンセットだ。

舞台ではいろいろなパフォーマンスが行われたが、それを観るか観ないかは自由。疲れたら部屋に戻って休んでもいい。

ディナーはメインダイニングに用意されたが、いつ食べるか、メニューからなにを選ぶかも自由。プレゼンテーションと役員へのインタビューを除けばすべてが自由だった。

僕は部屋でシャワーを浴びた後、ディナーに。
ダイニングルームはクラブ風で、ピアノのライブを聴きながら、、。

ディナーが終わると、メインデッキのステージで行われるナイトショーを観賞、、。満天の星空、微かに伝わって来る巨大な船舶エンジンの鼓動、船が切り裂く波の音、心地よい海風、、すべてが心地よかった。

ナイトショーのエンディングは花火。船尾から鮮やかな光りの尾を引きながら、次々と花火が打ち上げられ、エーゲ海の澄んだ蒼い夜空を鮮やかに彩った。

最後の方で、シルバーのリングに「赤いスリポインテッドスター」の花火が打ち上がった時は、一斉に拍手が鳴り、歓声が挙がった。
「鮮やかな刻印」として、今もクッキリ脳裏に残っている。

あの時の写真を見る度に、様々なシーンがそうとうリアルに浮かび上がってくる。それだけインパクトが強かったということだろう。

多くの旅を重ね、多くの想い出を作ってきたが、「メルセデスAクラスとのエーゲ海の船旅」は、超の着く特別な想い出だ。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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