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2019.06.18


独占連載 「LEONレーシング」【Vol.2】メカの仕事はレース前が9割

メルセデス AMG GT 3を駆り、チャンピオンチームとしてスーパーGT300クラスに臨むLEONレーシング。この新連載では、その戦いぶりの舞台ウラを独占公開! レースだけでなく、マシンやタイヤ、さらにはレースクイーンなど、チームのすべてをお届けします!

CREDIT :

写真/吉田成信 取材・文/大谷達也、近藤高史(LEON)

 ピットインしたマシンに飛びかかったと思うやいなや、秒単位で給油やドライバー交代、タイヤ交換などの作業を済ませて再びコースに送り出す……。
レーシングチームのメカニックと聞いて、まず思い浮かべるのは、おそらくそんなシーンではないだろうか。
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LEON RACINGのチーフメカニック富田洋二朗。ほかのメカたちをまとめ、確実で迅速な作業を率先して行っている。
 しかし、LEONチームでチーフメカニックを務める富田洋二朗は「レースウィーク初日のフリープラクティスを走ったら、僕たちの仕事は9割が終わったも同然」と言い切る。つまり、メカニックたちが普段から取り組む膨大な量の仕事から比べれば、レース中のあのピット作業は大した労力ではないというのだ。

 では、レーシングチームのメカニックたちはどんな仕事をしているのか? 改めて富田チーフメカニックに訊ねてみた。

「レースが終わってファクトリーに戻ってきたマシンを徹底的にばらして、各部を清掃しながらパーツの状態をチェックし、再び組み上げます。そして必要に応じてパーツを新品に交換する。これが僕たちのメインの仕事といっても過言ではありません」

レース後に必ず行なうこの作業に、彼らは1週間から10日を費やす。分解、清掃、チェック、交換、再組み上げと言葉にすれば簡単に聞こえるが、百戦錬磨のメカニックたちがこれだけの日数をかけて行なう仕事なのだから、かなり入念な内容であるのは間違いない。
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「エンジンは降ろしませんが、ギアボックスは一度降ろして分解し、内部の歯車の状態を確認します。寿命に近づいた歯車には小さな“虫食い”ができるので、これを見つけたら交換します。たとえ“虫食い”がなくても使用する部品は走行距離を管理しているので、指定された距離が近づいてきたら早めに交換します」

「足回りもスプリング、ダンパー、アーム類とほとんど全部外して分解と清掃を行ないます。特に注意が必要なのがピローボールと呼ばれるレース専用の部品。人間にたとえれば関節のような役割をするものですが、使っているうちにガタが出てきて最後ははずれてしまいます。もしも走行中にこれが起きると足回りが抜け落ちることになりかねないので、ガタが出始めたピローボールも早めに交換します」

 このように破損の兆候が見られたり、使用限界が近づいたりしたパーツだけでなく、次のレースが行なわれるサーキットの特性を見越して予防的に部品を交換するケースもあるそうだ。

「たとえばツインリンクもてぎはとてもブレーキに厳しいサーキットなので、もてぎに向かう前にはブレーキのメンテナンスを普段以上に念入りに行ないます。ちなみにブレーキパッドはどのサーキットでも1走行ごとに交換しますが、ブレーキが酷使されるもてぎのレースに備えて特別に寿命が長いパッドを用意するほか、ブレーキローター(ブレーキディスク)にもクラック(ヒビ)が入っていないかどうか細かくチェックします」

「いっぽうで鈴鹿はダウンフォース(空気の力を利用してマシンを路面に押しつける作用のこと)が大きいのでマシンの底面が路面と接触する可能性が高く、スキッドブロックと呼ばれる一種の摺り板を事前に交換しておいたり、サーキットにスペアパーツを持ち込んだりします。同じ理由から、ピット作業の際に車体を瞬時に持ち上げるエアジャッキという車載パーツもダメージを受ける可能性が高いので交換するかスペアを持ち込みます」
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ピットインしてくるレーシングマシンを待ち構える富田とピットクルー。ドライバーが1秒を削るのは至難の業だが、ピット作業での1秒はあっという間だ。
 彼らの念入りな仕事ぶりは、まるで患者の体調を管理する主治医のようだが、どうしてそこまで予防策を徹底させるのだろうか?

「チームが勝利するためには何のトラブルもなく走りきるのがいちばん大切。つまり安全第一。そのためにはサーキットでバタバタするのではなく、事前にできるだけ準備を済ませておくというのが僕の基本的な考え方です」

 ちなみに、LEONチームが走らせるAMG GTはマシンの信頼性が高く、これが昨年のタイトル獲得にも大きく貢献したと富田チーフメカニックはいう。

「デビュー当時は細かいトラブルが起きましたが、これはどんなレーシングカーでもよくあること。でも、メーカーが迅速に対応してくれるおかげで、トラブルはほとんど出ていません。日本のレースにも本国のエンジニアが帯同してくれますし、パーツの供給もとても早い。本当に助かっています」

 メカニックたちのサポートがあるからこそ、黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手は全力でレースを戦うことができるのだ。

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