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2019.05.19

前も後ろも気持ちイイ! ベントレー・ミュルザンヌの魅力を改めて検証!

運転しても後席に乗っても気持ちいいクルマといえば? ベントレーを置いてほかにないだろう。2010年に発表され、2016年にマイナーチェンジ、まだまだ魅力たっぷりのベントレー・ミュルザンヌに乗った

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取材・文/小川フミオ

まだまだ色あせない、最高峰の気持ちよさ

新しいものを追いかけるのもいい。でもたとえば、最新のスポーツシューズでなく、コードバンのダブルモンクで背筋をぴっと伸ばしてキメたい時はないだろうか。クルマで後者に相当するのがベントレー・ミュルザンヌだ。

ルマン24時間レースが行われるサーキットから車名をとったのがミュルザンヌである。初代は1980年から92年まで作られ、いまの2代目は2010年に発表された。

このクルマの魅力は、気持のよさにある。今回乗ったミュルザンヌ・スピードなどは、数値の上でもとてつもないパワーを誇るが、真骨頂は、気持よく早いという、えもいわれる乗り味にある。
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フライングBと名づけられたマスコットがフロントにつく
ベントレーのおもしろさは、自慢の種がいろいろあるところだろう。たとえばこのモデルのサブネームである「スピード」だ。オリジンは1924年にコーチビルダー(車体架装業者)のバンデンプラが手がけた4座のボディをもつスポーツモデルだ。

いまその名前はスポーティな仕様に用いられている。ミュルザンヌを例にとると、ベースモデルのミュルザンヌが377kW(512馬力)の最高出力と1020Nmの最大トルクであるのに対して、ミュルザンヌ・スピードは395kW(537馬力)と1100Nmとさらに上をいっているのだ。

ベントレーというと、ロールスロイスと双璧をなす英国製の高級車と知っているひともいるだろう。2019年で100周年と歴史は長い。特徴は大きな車体と大きな排気量のエンジン。それでいてスポーティで、第二次大戦前はルマン24時間レースを含めて、数多くのレースを制した。

それをブランドのDNAと大事にしている結果、標準ホイールベース(3270ミリ)仕様でも全長が5575ミリもあるモデルでも、スポーティ性は守られている。直線が速く、かつ、コーナリングもかなりお得意の「スピード」モデルをミュルザンヌにも設定してしまうのだ。
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クラシックな雰囲気のリッドを持ったトランクに、Bの文字がモチーフになっているようなLEDのリアコンビネーションランプ
1931年いらい1980年までロールスロイスの傘下に入っていた時代が長く、パーツの多くの共用していたが、それでもベントレーはターボモデルとか、走る楽しさを感じさせるクルマづくりを続けてきた。

いまでは明らかにロールスロイスとは一線を画している。ロールスロイスが中立ふきんであいまいなステアリングフィールなど”伝統的な味”を残しているのに対して、ベントレー車はしゃきっとした操縦性だ。ステアリングフィールもやたらクイックではないけれど、しっかり反応があり、いきなり乗ってもとまどうことはいっさいないだろう。

なによりいいのは、独自の世界観のあるクルマだということだ。大きな車体もさることながら、乗りこんでみれば、ちょっと高めのスカットルにすこし隠れるようなドライビングポジションにはじまり、ぜいたくにウッドとクロームとレザーで構成された室内の居心地は何物にも代え難いと思うはずだ。

エアサスペンションシステムは連続可変式ダンピングコントロールを備えており、ふわりふわりと、いわゆるバネ上重量の重さによる重厚な乗り心地がうまく作られているのにも感心する。
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クロームとウッドがきらきらと輝くダッシュボードはベントレーならではのデザイン
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2770キロの巨体を、静止から時速100キロにするまで4.8秒

2016年にマイナーチェンジを受け、フロント部分では縦ルーバーのステンレス製大型グリルが採用されるようになった。従来より80mmワイドになったのも特徴だ。

新デザインのヘッドライトは最先端のアダプティブ式である。ハイとローの切り替えを自動で行う。さらに走行状況に応じて照射範囲を自動制御し、夜間の視認性を飛躍的に高めているというのもベントレーの強調点である。

アクセルペダルを少し踏み込んだだけで、1750rpmで最大トルクを発生しはじめる6.75リッターV8ターボエンジンは、後輪を駆動して、かなり強い力で車体を押しだしてくれる。すこし”ため”がありながら、重量級の物体が動き出す感覚をドライバーは背中でうけとめる。これこそ重量級のハイパワー車の醍醐味だと思う。

数値をみると、静止から時速100キロまでの所要時間は4.8秒だ。2770キロもある大きな車体のクルマでは信じられないほどの加速力だ。ポルシェ718ボクスターが5.1秒だからそれより速い。
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スーパーフォーミングで製作された継ぎ目のないアルミ製フロントフェンダーをはじめ、ルーフからリアクォーターパネルへと続く面は専門チームにより接合面がほとんど目立たないように手作業でロウ付けされている
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後席もまたいい場所だ。ややソフトなぐらいクッションがたっぷり入った座面と、肌触りのいいやわらかな感触のレザーで包まれたシートに身をまかせていることを嫌だと思うひとはいないだろう。

前席シートの背後には折りたたみ式のテーブルも備わるなど、戦前からの伝統が守られている。ウッドパネルの種類は、クルミ材、サクラ材、オーク材など、13種類だそうだ。ぶ厚いクッションも戦前のぜいたくな仕様を思わせて好ましい。

オプションでさまざまな仕様が選べるのも魅力のひとつだ。ただし日本では、外板色を含めて思うぞんぶん自分の好みをオーダーするひとはかなり少ないとか。

海外だとよく聞く話だが、パートナーの肌の色にあった内装色とか、好きなネイルや宝石の色を反映した外板色を選ぶとか。リセールバリューを考えない。それこそ究極のぜいたくだ。

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カーボンファイバーの構造のためドア開口部を大きくとっても剛性は確保されている
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ミュルザンヌが不得意とするのはコネクティビティや運転支援技術だ。登場が2010年だからアーキテクチャー(先進的装備を搭載できる土台)が前の世代となってしまうせいで、装備が限定的である。

それでも2016年からは、タッチスクリーン式インフォテイメントプラットフォームを使った新インフォテイメントシステムが搭載されている。スクリーンを押した際には、反発力により操作感が得られる。あえて古典的にデザインされたアナログメーターの世界観を重視しながら、各所に最新のテクノロジーが採用されているのだ。

でもこのクルマに乗るひとは、コネクティビティをあまり意識していない、とも聞く。マイナーチェンジごとに新しい装備が増えていくことになるだろうが、クルマとしては完成形だ。引くものも足すものも、あまりないという印象である。

CO2排出量などを考えると、V6気筒などダウンサイジングと、ハイブリッドシステムが必要になってくるだろう。それはそれで必要なのだけれど、デカいV8エンジンで重量級の車体を動かすキャラクターとは離れがたい。

乗ってみるとぜったいに病みつきになるクルマだ。運転手に見られてしまうかどうか。ファッションなどでカバーすれば、大丈夫だろう。ベントレーとの生活は旬の楽しみである。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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