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2017.11.25

時計業界のポジショニングを知らないのは日本人だけ

時計業界のポジションニングは、世界的には常識だった? 世界の時計事情に詳しいジャーナリストが、日本人にはなじみの浅い世界の時計業界の事情を紹介します。

CREDIT :

文/篠田哲生(時計ライター) イラスト/野村憲司(トキア企画)

スイス時計協会が実施した消費者意識調査によると、日本人男性が所有しているスイス製高級時計のトップ3は「ロレックス」「オメガ」「タグ・ホイヤー」。ここに国産時計の雄「グランドセイコー」を加えた4強が、日本における“高級時計”という位置付けだろう。確かにこのブランドたちは、歴史と品質のバランスに優れた良作である。

世界が認める“トラディショナル時計王国”

しかし時計業界においては、彼らとて番付でいえば【前頭】クラスに過ぎない。では最高峰ブランドはどこか? 愛好家の中で一般的なのは「パテック フィリップ」「ヴァシュロン・コンスタンタン」「オーデマ・ピゲ」「A.ランゲ&ゾーネ」の【時計四天王】。さらにはここに「ブレゲ」と「ジャガー・ルクルト」を加えて【時計六大巨頭】とする場合もある。
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自由な発想が魅力の“リシャール・ミル新興勢力”

しかしこの序列に亀裂を作っているのが「リシャール・ミル」だ。リシャール・ミルは2001年に始まった新興勢力であり、歴史では巨頭ブランドたちには敵わない。しかし新興ブランドゆえの“自由な発想”を武器に、ハイテク素材や特殊な構造を武器に、時計業界を揺さぶっている。
なにせ超高額時計を何本も購入するVIP顧客に話を聞くと、かなりの割合でリシャール・ミルを所有しており、しかも“軽くて付け心地がいい”という理由で数千万円クラスの時計を日常使いしているのだ。つまり、時計六大巨頭の時計はここ一番で使うモノであり、普段はリシャール・ミルというのが、ハイエンドウォッチの常識になりつつあるようだ。ちなみにリシャール・ミルのポジションには「ウブロ」や「ロジェ・デュブイ」が収まる場合もある。

リシャール・ミル「RM 11-03 オートマティック フライバッククロノグラフ」(1590万円 予価)

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自動巻、カーボンTPT®ケース、ケース径49.94mm、ラバーストラップ/リシャールミル(リシャールミルジャパン)
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“カジュアル時計王国”は日本勢が独占

では逆にカジュアルウォッチの世界はどうなっているのか? このジャンルで圧倒的に強いのは、カシオ「G-SHOCK」。本誌LEONのオヤジ世代なら誰もが知っている90年代の狂乱のブームとその後の鎮静化を経て、現在のG-SHOCKは世界的メガブランドへと進化。ブーム絶頂時の出荷本数を軽く超えており、しかも売り上げの半数は海外だ。
 
海外市場では価格を重視したモデルが売れる一方で、国内ではプレミアム戦略も進行中。10万円以上の高額G-SHOCKが、高級時計を所有する愛好家の休日用時計として人気を集めている。

G-SHOCK 「GPW-2000」(10万円)

クオーツ(ソーラー充電システム)、樹脂×SSケース、ケース径57.1mm、樹脂ストラップ/カシオ(カシオ計算機)
そのカシオも含め、日本の時計メーカーは、各社が高精度技術で鎬を削っている。セイコーはグループ企業のエプソンが開発した高精度リングアンテナを武器とするGPS衛星電波技術を採用。
 
シチズンもGPS衛星電波を使うが、処理速度と針の動きに徹底的にこだわり、使用感を高めている。カシオは電波受信機能、GPS衛星電波機能、スマートフォン連動の三種の技術を取り混ぜている。これらの高精度技術の完成によって、もはや精度競争は無意味になったといえるだろう。
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時計師たちによる集団”アカデミー”

このようにハイテク化が進む一方で、手作業にこだわる時計職人が現存し続けているのも時計の面白さ。かつてのフランク ミュラーがそうであったように、時計師個人が手を動かし、丁寧に時計を作っているブランドも少なくない。
 
ブランド化して成功したのは、フランソワ・ポール・ジュルヌ氏の「F.P.ジュルヌ」だろう。さらには2名の天才時計師による「グルーベル・フォルセイ」や英国出身のピーター・スピーク・マリンが手掛ける「スピーク マリン」も時計愛好家には有名だ。

F.P.ジュルヌ「ヴァガボンダージュⅢ」(672万円)

手巻き、プラチナケース、ケース径37.6mm、アリゲーターストラップ/F.P.ジュルヌ(F.P.ジュルヌ東京ブティック)
時計愛好家にとって“人とは違う時計をつける”ということは至福な行為。そのため新たな時計師を探すために、独立時計師協会(AHCI、通称アカデミー)を常にチェックしている。ここには菊野昌宏と浅岡 肇という二名の日本人時計師も所属。ネクストブレイクの機会を伺っている。
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「原宿に世界一の時計技師がいることを知っていますか?」

※先日ご紹介した浅岡 肇の記事はコチラから

一般的に知られている時計ブランドというのは、本当に僅かしかない。だから、知るほどに深みにはまっていく人が多いのだ。

● 篠田哲生

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

■お問い合わせ
F.P.ジュルヌ東京ブティック 03-5468-0931
カシオ計算機 03-5334-4869
リシャールミルジャパン 03-5807-8162

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