2017.07.10

成功者はなぜ今もウブロに惹かれるのか

CREDIT :

文/篠田哲生

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「成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。」篠田哲生著(幻冬舎)
2012年に出版された拙著「成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。」(幻冬舎)は、当時、最も勢いのあった時計ブランド「ウブロ」を通して、時計業界のカリスマ経営者であるジャン-クロード・ビバーの時計と経営に対する哲学を綴った本である。あれから5年たった今では、「ウブロ」は目端の利く時計好きだけでなく、幅広い一般層にも名前が浸透している。
 
そこにはどういう戦略があったのか? 2012年からの5年間で、ウブロが変わったこと、そして変わらなかったことを検証しながら、ウブロの現在を見ていこう。
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サッカー界への働きかけが、さらなる躍進のきっかきに

ウブロがメジャーブランドとなるきっかけを作ったのは、2005年に誕生した傑作「ビッグ・バン」であることに異論をはさむ人はいないだろう。このコレクションは、現在でもウブロの屋台骨であり続けている。

しかし良い時計を作るだけでなく、その素晴らしさを明確に伝えなければ意味がない。そこでウブロはマーケティングで、時計業界を圧倒する戦略に出た。彼らが目を付けたのは「サッカー」だった。サッカーは世界的スポーツだが、ファンの多くはかなり若い。しかしウブロの名を心に刻み付けることで将来のファンを育てることを目的としていた。

その戦略は現在も継続しているのだが、注目すべきはその“引き”の強さ。ウブロがサポートしているイタリア・セリエA「ユヴェントス」、ポルトガル・スーペルリーガ「ベンフィカ」、そしてイングランド・プレミアリーグ「チェルシー」の全てがリーグチャンピオンになっているのだ。しかもこれらのチームが参戦する「UEFA チャンピオンズリーグ」も、ウブロが公式計時を担当している。

ウブロ ビッグ・バン ウニコ レトログラード クロノグラフ チャンピオンズリーグ 278万円

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各国のリーグチャンピオンたちが集う世界最高峰のサッカーの大会「UEFA チャンピオンズリーグ」の公式計時もウブロが担当。このクロノグラフは12時位置の巨大なレトログラード針を使って、サッカーの試合時間を計測する。センターのカウンターは、1=前半、2=後半を意味している。世界限定100本、自動巻き、ブラックセラミックケース(45㎜)、ブラックラバー×ダークブルーアリゲーターストラップ。10気圧防水/ウブロ
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ニッチであっても顧客満足度を高めるスポンサー活動は精力的

さらにはニッチなジャンルも見逃さない。アルプスの名峰マッターホルンの麓にある避暑地「ツェルマット観光局」の公式パートナーであり、ドミニカ共和国のシガーメーカー「アルトゥーロ・フエンテ」ともパートナーシップを結び、さらには「2017 WBC(ワールド ベースボール クラシック)」のグローバルスポンサーも務めている。

たとえニッチであろうとも、好奇心旺盛なウブロオーナーの興味が向く先であれば、積極的にスポンサー活動を行う。それがウブロの手法であり、その眼力は少しも劣ってはいない。

あのフェラーリとパートナーシップを実現

ウブロ/テクフレーム フェラーリ トゥールビヨン クロノグラフ カーボン 1449万円

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創業70周年を迎えたフェラーリとのパートナーシップモデル。フェラーリ デザイン センターがデザインを担当し、宙に浮かぶようなトラス構造のケースが生まれた。ケースサイドのレバーはフェラーリレッドで仕上げており、ここでクロノグラフを操作する。世界限定70本、手巻き、カーボンファイバーケース(45㎜)、ラバーストラップ。3気圧防水/ウブロ
ウブロの名を知らしめる活動として、今でも重要視しているのが「フェラーリ」だ。ジャン-クロード・ビバーは、世界中に知れ渡っているにも関わらず、ブランドのステイタスが少しも衰えないフェラーリを“究極のブランド”であると考えている。だからこそウブロはフェラーリと“パートナーシップ”を結ぶ。

ロゴの入った時計を作るのではなく、哲学でつながり合うのだ。2013年に誕生した「MP-05 ラ・フェラーリ」は、その典型と言えるだろう。名車ラ・フェラーリの名を冠したトゥールビヨンウォッチは、車のエンジン構造をヒントに生まれた。

哲学を知り、メカニズムを学ぶことで生まれた時計には、ビジネスを越えた尊敬の念が籠っている。さらにフェラーリ創業70周年となる2017年には、この節目を祝して初めてフェラーリ デザイン スタジオが時計のデザインを担当。「テクフレーム フェラーリ トゥールビヨン クロノグラフ カーボン」を見れば、ウブロとフェラーリの蜜月関係が分かるだろう。
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開発部門へのたゆまぬ投資により、高度な技術力を実現

しかしウブロの魅力は、周到なマーケティングから生まれているだけではない。2010年にリリースされた自社製クロノグラフムーブメント「ウニコ」の進化だけでなく、様々なコンプリケーションも続々と誕生しているのは、自社マニュファクチュールが本格稼働し、研究開発部門への設備投資も進んでいるから。さらには2015年の10月に既存社屋の横に巨大な新社屋「H2」が設立され、より高度な時計作りが可能になっている。
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2015年に完成した第二社屋「H2」。ここでは特殊素材を使ったケースやムーブメントの製造を、主に担当している。
これらの指揮を執るのは、現在はウブロ会長となったジャン-クロード・ビバーと、その片腕として長年ブランドを支えてきた現CEOのリカルド・グアダルーペだ。ビバー氏はもうすぐ古希を迎えようという年齢だが相変わらず多忙を極めており、LVMH ウォッチ部門のトップ、ウブロとゼニスの会長、タグ・ホイヤーのCEOも兼務している。引退どころか、ますますパワフルに働いているのだ。しかも本人は80歳まで現役を続けるために、食事制限やワークアウトも欠かさない。

「5人の子供を持つ母親と同じで、愛情があれば乗り切れるものだよ。愛情や情熱というのは“奇跡の感情”であり、私を疲れさせないんだ」。ジャン-クロード・ビバーの情熱は、この5年間少しも衰えてはいない。ウブロの快進撃が止まらない理由は、ここにあったのだ。
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左●リカルド・グアダルーペ_1965年スイス・ニューシャテル生まれ。ブルガリやブランパンでプロダクトマネージャーを務め、さらには独立時計師のコンサルタントとしても活躍。2004年にウブロに入社し、2012年の1月よりウブロのCEOとなる。右●ジャン-クロード・ビバー_1949年ルクセンブルク生まれ。大学卒業後、オーデマ ピゲやブランパン、オメガを経て2004年にウブロのCEOに着任。05年に「ビッグ・バン」を発売し、大ヒットを記録する。時計文化に敬意を払いつつも、機構や素材を現代的に進化させ、しかもそこに斬新なマーケティング戦略を加えることで、ウブロをメガブランドへと躍進させた。現在はウブロの会長を務める。
■お問い合わせ
ウブロ 03-3263-9566

● 篠田哲生 / 時計ジャーナリスト

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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