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2020.11.07

2020年、腕時計トレンドはこう変わった。実はお買い時!?

新型コロナによって大打撃を受けた世界経済。時計業界もその例外ではありませんが、2020年の新作腕時計にはどんな影響があったのでしょう?

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文/広田雅将(『高級腕時計専門誌クロノス日本版』編集長)

2020年の新作が出揃ったところで、腕時計のイマは明るいのか……?

2020年、リーマンショックから完全に立ち直ろうとしていた時計市場は、コロナ禍によってその姿を大きく変えてしまいました。

まず、バーゼルワールドとウォッチズ&ワンダーズというふたつの時計見本市が中止/オンライン開催となり、注目されるモデルが大きく偏ってしまったこと。例年ならば、見本市に足を運べば、小メーカーの魅力的な時計もすぐに見つけることができました。しかし、実際に時計を見る機会がなくなった結果、人々の目線は、露出の大きなメジャーブランドの売れ線に集中したのです。ロレックス「サブマリーナー」の盛り上がり方はその好例でしょう。

そしてもうひとつが、普通に時計を買う人たちが減り、ヘビーな時計コレクターが目立ったこと。景気が良くても悪くても、コレクターは買い続けるという時計業界の定説が、今年ほどはっきり出た1年はなかったでしょう。売れる限定モデルを多く持つメーカーは、2020年もビジネスが堅調に違いありません。

もっとも、今年の9月以降、中国をはじめとする時計市場は急激に盛り返してきました。それを見越して、各社も新製品の発表を下半期に集中。新型コロナの影響は感じるものの、2020年のトレンドがおぼろげながら浮かび上がってきました。
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トレンド その1

変わらず堅調な超ラグジュアリーモデル

今年のトレンドでまず際立つのが、超高価格帯の堅調ぶり。コロナ禍で世界経済は大きな影響を受けたものの、超富裕層にはまったく関係ないようです。各社とも、ロックダウン中は工場を閉めていましたが、解除に合わせて超富裕層向けに新作を次々とリリースしています。
それを象徴するのが、A.ランゲ&ゾーネの「トゥールボグラフ・パーペチュアル」でしょう。これは、A.ランゲ&ゾーネを代表する超複雑時計。初代モデルは2017年発表ですが、2020年は手作業を強調した特別なモデルとなりました。

A.ランゲ&ゾーネ設立175周年モデルと考えれば当然でしょうが、景気が悪い時期に、6000万円超えの時計をリリースできるのは、超富裕層の動きが景気に影響されていないため、です。

リシャール・ミルも同様で、例年同様、1億円超えのモデルを当たり前のように発表しています。
ハイエンドなモデルをもうひとつあげるならば、オーデマ ピゲの「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ トゥールビヨン クロノグラフ」でしょう。普通、こういった複雑モデルの場合、既存のムーブメントを使うのが定石です。

しかしオーデマ ピゲは、このモデルのためだけにあえて特別なムーブメントを作成。徹底してシンメトリーを強調したレイアウトは、より特別な時計を求める富裕層に響くでしょう。しかも、このモデルは日本先行発売の限定版。オーデマ ピゲはユーザーの心をくすぐるのが相変わらず巧みです。
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トレンド その2

コレクター垂涎の限定モデル

コレクター向けビジネスが上手いのは、セイコーと、それ以上にオメガ。毎年のように発表されるオメガ「シーマスター」や「スピードマスター」の限定版は、驚くほどのプレミア価格で取引されるようになりました。
2020年も、オメガは恒例の007モデルをシーマスター300Mに追加。さらに、スピードマスターのキャリバー321モデルをほぼ完全に復刻したほか、世界中の時計好きが待ちわびていた、「スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念」をリリースしました。

これは、スピードマスターコレクターが好む要素をすべて入れただけでなく、ムーブメントには、超耐磁性能を誇る「Cal.3861」の量産版を搭載した、いわば“全部のせ”。絶対に売れるという要素だけを詰め込んだ本作は、受注が殺到しているそうです。もっとも、景気の悪さを反映してか、今までのスヌーピーモデルと異なり、本作は非限定モデル。それでも売れてしまうのだから、コレクターたちの熱は景気に関係ないようです。

また、パテック フィリップも新工房落成記念として、限定版の「カラトラバ Ref. 6007A-001」を発表。ケースは珍しいSS製で、ユニークピースのみに使われる文字盤の柄を採用するなど、明らかにコレクターを意識した作りになっています。当然、このモデルは発表と当時に即完売でした。
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トレンド その3

ベーシックモデルの質が底上げされた

景気を問わず、この5年ほど大きな流れになっているのが、ベーシックへの回帰です。他にはない時計を好む富裕層や限定モデルを望むコレクターに対して、普通の人々は、ベーシックで質の良いモデルを求めるようになってきたのです。
▲「ポルトギーゼ・オートマティック 40」自動巻き、SSケース(40.4mm)、アリゲーターストラップ。72万5000円/IWC
▲ 「ポルトギーゼ・オートマティック 40」自動巻き、SSケース(40.4mm)、アリゲーターストラップ。72万5000円/IWC
もちろん、今までもこういったモデルは存在していましたが、2020年はその傾向がいっそう顕著になったといえるでしょう。代表例が、IWCの「ポルトギーゼ・オートマティック 40」。昨年発表した新型ムーブメントを載せることで、このモデルは直径が約40mm、厚さ12mm強とかなり小さくなりました。

にもかかわらず、ポルトギーゼならではの頑強さや高精度、そして優れた仕上げはそのままで、価格もかなり戦略的。小さなポルトギーゼが欲しい、という声に応えた本作は、ベーシックで質の高い時計を求める市場のあり方を象徴したモデルです。
▲ 「SLGH003」自動巻き、SSケース(40mm)×ブレスレット。100m防水。世界限定1000本。100万円/グランドセイコー
▲ 「SLGH003」自動巻き、SSケース(40mm)×ブレスレット。100m防水。世界限定1000本。100万円/グランドセイコー
グランドセイコーの「SLGH003(グランドセイコー誕生60周年記念限定モデル)」も、やはり2020年を代表するモデルになりそうです。価格は100万円オーバーですが、搭載する「Cal.9SA5」は、現行の量産自動巻きとしては最良のひとつ。高い振動数と長いパワーリザーブに加えて、薄さを実現したこのムーブメントは、新しいグランドセイコーのレベルをもう一段底上げしました。時計好きに注目されるモデルですが、上質で高精度、そして堅牢と言った特徴は、ベーシックで良い時計を探している、普通の人々にこそ響くでしょう。

他にも、ジャガー・ルクルトが、定番の「マスター・コントロール」をフルモデルチェンジ。見た目こそ従来にほぼ同じですが、耐磁性能が大きく高まり、パワーリザーブが約倍近く伸びた結果、使い勝手は大きく増しています。
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景気の悪化で大きく変わった時計市場。しかし、結果としてどの時計も、値段に比して「お買い得感」が増した印象が強いです。良い物を高く売るのは当たり前。しかし、景気のあり方は、そんな各メーカーの姿勢に、一石を投じたと言えるかも言えるかもしれません。

確かに、以前と比べて時計の価格は大きく上がりました。しかし、2020年の新作は、いずれも質を考えると価格はかなり戦略的なのです。「景気の悪い時期に出た時計には傑作が多い」という言葉が、時計業界にはあります。

なるほど、出そろった新作を見る限り、その言葉は、当たらずとも遠からずではないでしょうか。

● 広田雅将(ひろた・まさゆき) 

1974年生まれ、大阪出身。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活躍し、2016年より現職。関連誌含め連載を多数抱える。また、一般・時計メーカー・販売店向けなど、幅広い層に対して講演も行う。
高級腕時計専門誌クロノス日本版[webChronos]

※掲載商品はすべて税抜き価格です

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