• TOP
  • WATCHES
  • 今さら聞けない「スポーツウォッチ」の定義とは? ダイバーズやクロノグラフも

2025.08.31

第33回

今さら聞けない「スポーツウォッチ」の定義とは? ダイバーズやクロノグラフも

その名の通り、アクティブなシーンにも対応するタフさを備えた「スポーツウォッチ」。活動的な大人の心強い相棒ですが、その定義や選びの目線はご存知ですか?

BY :

文/渋谷ヤスヒト

知っているようで知らない「スポーツウォッチ」の定義とは?

ブライトリングのダイバーズコレクション「スーパーオーシャン」。1950年代に水中探索やプロダイビング、水上スポーツが盛んになったことを背景に登場しました。300m防水を有しながらプレイフルなカラーもラインナップしており、好みやシーンに合わせて選ぶ楽しさもあります。
▲ ブライトリングのダイバーズコレクション「スーパーオーシャン」。1950年代に水中探索やプロダイビング、水上スポーツが盛んになったことを背景に登場しました。300m防水を有しながらプレイフルなカラーもラインナップしており、好みやシーンに合わせて選ぶ楽しさもあります。
「スポーツウォッチ」のルーツは、今から100年ほど前の20世紀前半に登場した「ツールウォッチ」です。つまり、アスリート、冒険家、兵士などが道具として使うために、その過酷な環境下での使用を想定して設計された特殊な腕時計です。

そして、このツールウォッチを継承・発展させて、厳しい環境(とくにスポーツシーン)で安心して付けられ、また、その際に必要な機能を搭載した腕時計を「スポーツウォッチ」と呼んでいます。
PAGE 2

過酷な環境に耐えうるスポーツウォッチの性能

最初期のスポーツウォッチとしては、例えば、1904年にルイ・カルティエが飛行家アルベルト・サントス=デュモンからの依頼を受け、飛行中に手を離さずに時間を確認できるように製作されたカルティエのサントス
PAGE 3
また、ポロ試合中の衝撃に耐えうる時計を、という英国人将校の要望によって、1931年に反転式ケースを備えて生み出されたジャガー・ルクルトのレベルソが知られています。

ただ、現在ではどちらも、「ドレスウォッチ」として位置づけられているのは興味深いことです。それだけ現代のスポーツウォッチが、当時とは別の意味での進化を遂げたことの証でもあるでしょう。

ところで、スポーツウォッチと普通の腕時計との一番の違いは何でしょうか。それは、過酷な環境に対応できる性能です。具体的には以下の4点が挙げられます。

(1)強い加速度(G)や衝撃が加わっても問題なく動作を続ける耐震衝撃性

(2)水しぶきがかかったり水中に落としたりしても、時計内部に水が侵入して壊れる心配のない防水性

(3)スポーツ中などでも、情報がひと目で読み取れる優れた視認性

(4)過酷な環境で長く使い続けても壊れない耐久性

PAGE 4

スポーツウォッチが衝撃を逃す仕組み

なかでも耐衝撃性は、スポーツウォッチにはもっとも不可欠な機能です。何かにぶつけたり落としたりしただけで壊れてしまう時計は、野外では安心して使えません。

そして、腕時計を構成する部品の中でいちばんデリケートで壊れやすいのがムーブメントです。昔の機械式ムーブメントには、実は耐衝撃性はほとんどありませんでした。そのため、落下などの衝撃が加わると、ムーブメントの心臓部である「脱進調速機」の中で、1秒間当たり4回も往復回転運動をしている「テンプ」の軸が折れてしまう、天真折れという致命的な故障が起きていました。

そこで、天真折れを防ぐために考案されたのが「インカブロック」や「キフ」に代表される耐震衝撃装置です。これはてんぷの軸の上下にある軸受のルビーをバネで浮かせることで、強い衝撃が加わっても、このバネが衝撃を逃がしてくれるという仕組みです。
PAGE 5
現在では、この耐震衝撃装置は、スポーツウォッチばかりでなく普通の腕時計にも基本的に搭載されています。

ただ、ゴルフのクラブを振る時のように、一瞬でも強烈な遠心力が時計に加わる場合は、この耐震衝撃装置は吸収しきれません。そのため、ゴルフ用ウォッチでは、ムーブメント全体をショックアブソーバの役割をするゴムなどで囲むような、専用の耐衝撃装置が必要になります。

また、外装に軽くて強靭な素材を使うことも、耐衝撃性を確保するには欠かせないことのひとつです。軽いと何かにぶつかったときの衝撃も少なくなるからです。

そのため最近では、スポーツウォッチにとって定番のステンレススチール(SS)の代わりに、軽いチタンやファインセラミック、強化プラスチック、カーボンファイバー系の樹脂をケースに採用するモデルも増えています。
PAGE 6

密閉性を高めて、スポーツ中や悪天候時の水に対応

(左)ロレックスの初期のオイスターケースモデル。 © Rolex/Jean-Daniel Meyer (右)ドーバー海峡を泳いで渡ったメルセデス・グライツを掲載した1927年の広告。 © Rolex
▲ (左)ロレックスの初期のオイスターケースモデル。 © Rolex/Jean-Daniel Meyer (右)ドーバー海峡を泳いで渡ったメルセデス・グライツを掲載した1927年の広告。 © Rolex
防水性もスポーツウォッチには絶対に欠かせない機能です。時計という精密機械にとって、水はいちばんの大敵。スポーツ中、特に雨や雪などの荒天の時や、川や海などでの野外活動中の腕時計は、大量の水しぶきや汗にさらされます。そんな状況でも、時計の内部に水や水蒸気が侵入しないようにするためには、ケースを完全密閉構造にしなければなりません。
PAGE 7
この完全密閉構造を世界に先駆けて実現したとされているのが、ロレックスの「オイスターケース」。その防水性を1927年にメルセデス・グライツがドーバー海峡を泳いで渡った際に着用して証明したというエピソードは、実証スタイルの広告キャンペーンの先駆けとしても有名です。

腕時計の防水性能は、ケースの素材や加工技術、防水パッキンなどの進化で1980年代以降、さらに進化しました。今ではスポーツウォッチの防水性は100m防水以上が普通です。防水性能を高めるために、多くの時計では、防水面で一番の弱点となるリュウズに「ネジ込み式リュウズ」(ロッククラウンとも言う)を採用するようになりました。

ただ、こうした構造上の工夫だけでは、完全な防水性は実現できません。防水性の確保にはどうしても、合成ゴムやシリコンゴムなど、経年劣化が避けられない「防水パッキン」が必要になります。そのため、購入当初と同じ防水性をずっと確保するためには、定期的なオーバーホールと消耗部品である防水パッキンの交換が必要です。
PAGE 8

暗くても時間がよくわかる視認性と、ぶつけてしまっても心強いタフさ

イタリア海軍特殊潜水部隊にも腕時計を供給したパネライは、ダイバーズウォッチの名手。サンドイッチ構造の文字盤にすることで、蓄光塗料スーパールミノバ™を強く光らせます。「ラジオミール オット ジョルニ」手巻き、ブルニート eSteel™ケース(45mm)、カーフストラップ。10気圧防水。147万4000円/パネライ(オフィチーネ パネライ)
▲ イタリア海軍特殊潜水部隊にも腕時計を供給したパネライは、ダイバーズウォッチの名手。サンドイッチ構造の文字盤にすることで、蓄光塗料スーパールミノバ™を強く光らせます。「ラジオミール オット ジョルニ」手巻き、ブルニート eSteel™ケース(45mm)、カーフストラップ。10気圧防水。147万4000円/パネライ(オフィチーネ パネライ)
野外や水中などの暗闇では、確実に時刻などが読み取れる優れた視認性も重要です。そのためスポーツウォッチの針やインデックスには、特殊な塗料などが使われています。この塗料には、昔は自発光性の放射性物質、ラジウムを含んだものが用いられていましたが、現在では蓄光性塗料の「スーパールミノバ」が広く使われています。
PAGE 9
また、スポーツウォッチに欠かせないのが、過酷な使用環境でも外装が壊れない耐久性、汗や塩水などに長時間触れてもダメージを受けにくい耐蝕性、そして、岩などの硬いものに接触しても傷が付いたり削れたりしない耐傷性です。

ケースやブレスレットに関しては、例えば、切削工具にも使われるタングステンカーバイドやファインセラミックを採用するなど、ステンレスにはない特性を持つ素材などを使う場合もあります。

近年では、表面処理技術を活用して、ステンレスやチタンなどの表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)などの特殊なコーティングを施して耐久性を高めた時計も増えています。ストラップの素材に関しては、強化ナイロンやカーボンファイバーで強化したラバーなどが一般的になってきました。

さらに、文字盤を覆う風防ガラスは、硬度が低く傷が付きやすいミネラルガラスやアクリル樹脂(プレキシガラス)に代わって、表面に特殊な硬化処理をして傷が付きにくく割れにくい強化ガラス、さらにダイヤモンドに次ぐ硬さ(モース硬度9)を誇るサファイアクリスタル(人工的に作られたサファイアの単結晶)が一般的になっています。
PAGE 10

「クロノグラフ」や「ダイバーズウォッチ」も

「モナコ」は、タグ・ホイヤーの歴史的な名作クロノグラフ。こちらはブラックのチタンケースがより男らしい限定モデル。「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ ストップウォッチ」自動巻き、TIケース(39mm)、レザーストラップ。147万4000円/タグ・ホイヤー
▲ 「モナコ」は、タグ・ホイヤーの歴史的な名作クロノグラフ。こちらはブラックのチタンケースがより男らしい限定モデル。「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ ストップウォッチ」自動巻き、TIケース(39mm)、レザーストラップ。147万4000円/タグ・ホイヤー
PAGE 11
また、レース競技などのラップタイムなど経過時間を計測するストップウォッチ機能が付いた「クロノグラフ」、スキンダイビングやスキューバダイビングなど水中でのアクティビティに対応した「ダイバーズウォッチ」、気圧や高度や方位計、GPSセンサーを搭載した「フィールドウォッチ」は、スポーツウォッチの中でも特に高機能なものといえるでしょう。

ただ、こうした高機能なスポーツウォッチは今、より多機能でこうしたデータの処理や記録がスマートフォンのアプリとの連携でできるスマートウォッチに取って代わられつつあります。

いま、スポーツウォッチを付ける理由は、単なるスポーツシーンでの道具・計器としてだけではないでしょう。スポーティかつアクティブな雰囲気を楽しむファッションアイテム、そして、その人のライフスタイルを彩り、センスと個性を表現するアクセサリーでもあります。

スポーツウォッチは道具としてだけではなく、今後も技術革新とデザインの進化により、新たな可能性を切り開いていくでしょう。
※掲載商品はすべて税込み価格です

■ お問い合わせ 

オフィチーネ パネライ 0120-18-7110
カルティエ カスタマー サービスセンター 0120-1847-00
ジャガー・ルクルト 0120-79-1833
タグ・ホイヤー 03-5635-7054

コチラの記事もオススメ!! 

PAGE 12

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        今さら聞けない「スポーツウォッチ」の定義とは? ダイバーズやクロノグラフも | メンズウォッチ(腕時計) | LEON レオン オフィシャルWebサイト