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2025.11.01

噂の「ミシュランキー」覆面調査員とはどんな人? 声から人物をプロファイリング

ミシュランガイドによるミシュランキーホテルのグローバル発表会がパリで華やかに開催されました。今年、3ミシュランキーに輝いたのはいったいどんなホテル? そして覆面調査員ってどんな人? 食いしん坊編集部員が私見を交えてプロファイリングします。

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文・編集/秋山 都(編集者・ライター)
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文・編集/秋山 都(WebLEON) 

世界のホテル格付けが変わる——「ミシュランキー」グローバル発表、パリにて

美食の象徴であるミシュランガイドが、いま“滞在”という新しい領域に踏み込んでいます。2025年10月8日、フランスはパリの装飾芸術美術館(Musée des Arts Décoratifs)にて、「ミシュランキー(MICHELIN Key)」のグローバル発表が華やかに行われました。それは、レストランの“星”に続く、ホテルのための“鍵”の時代の幕開けを象徴するイベント。その歴史的な瞬間に、幸運にも立ち会うことができました。
ミシュランキー
▲ 2025年10月8日、パリの装飾芸術美術館で「ミシュランキー」のグローバル発表会が華やかに開催された。
ミシュランキーとは、ミシュランガイドが2024年から導入を始めた、宿泊施設を対象とする新たな格付け制度。星が「料理」に光を当ててきたように、キーは「滞在体験」に焦点を当てています。つまり、美食の三つ星が「そのために旅行する価値がある卓越した料理」と定義されるように、キーに値するのは「泊まることそのものが旅の目的となり得るかどうか」——その一点を見極める指標です。
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評価は1キーから3キーまでの3段階。1キーは「特別な滞在(a very special stay)」、2キーは「卓越した滞在(an exceptional stay)」、そして3キーは「非の打ちどころのない、一生に一度の滞在(an extraordinary stay)」。また評価の基準としては、建築やデザインの完成度、ホスピタリティの質、土地とのつながり、価格に見合う体験価値……それら5つの普遍的な基準をもとに、ミシュランの匿名調査員が世界中のホテルを審査しているのだそうです。

注目の3ミシュランキーを獲得したのは?

ミシュランキーホテル
▲ 昨年に続き2年連続で3ミシュランキーに選ばれた「パレスホテル東京」総支配人の渡部勝さん(左から4人目)。
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今年の3ミシュランキーに選ばれたのは、前年から引き続き、「強羅花壇」(神奈川県箱根町)、「ホテル ザ ミツイ キョウト」(京都府京都市)、「アマネム」(三重県志摩市)、「パレスホテル東京」、「フォーシーズンズホテル東京大手町」(東京都千代田区)、「ブルガリ ホテル 東京」(東京都中央区)という6軒に加え、新たに2キーから3キーへ格上げされたのは 「あさば」(静岡県伊豆市)。

上の評価基準と照らし合わせながら見るとフムフム……「強羅花壇」や「アマネム」はそれ自体が旅のデスティネーションとなっており、多くの海外富裕層が日本旅行のコースに組み込んでいますよね。また「パレスホテル東京」のホスピタリティはホテル通の間でも定評が高く、「ホテル ザ ミツイ キョウト」の京都という土地柄を活かした建築やサービスも有名。さらに「あさば」は、能舞台のある池に面した畳敷きの客室の静謐な美しさと、伊豆の旬の食材を活かしたおいしい料理も魅力……と、いずれも最高ランクである3ミシュランキーに輝くのは納得のラインナップです。
2キーには、今年3月に開業した「ローズウッド宮古島」、1キーには25年1月にオープンした「パティーナ大阪」(25年1月開業)や、「エスパシオ 箱根迎賓館 麟鳳亀龍」(24年秋開業)などがそれぞれニューエントリー。きちんとニューオープンのホテルもおさえているんですね。と思えば、「オーベルジュときと」なんて、知る人ぞ知る立川の穴場オーベルジュや、日本初の鮨オーベルジュ「一 能登島」も新しく1キーに選ばれており、ミシュランの調査力の広さ、深さに驚きました。いったい、どんな人が調査しているんだろう?
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ミシュランキー ホテル
▲ 東京、香港・マカオ、ソウルなどアジア地域での「ミシュランガイド」発行に尽力し、「ミシュランガイド」を大きく発展させたグウェンダル・プーレネック氏。
「ミシュランキーの調査員については、レストランの調査員同様に身元を明らかにすることはできません」と語りだしたのは、「ミシュランガイド」でインターナショナル・ディレクターを務めるグウェンダル・プーレネックさん。一説には「ミシュランガイド」のために世界には100人程度のインスペクター(調査員)がレストランへ通い、評価を決めているとされていますが、ミシュランキーも基本的には同様にインスペクターが宿泊施設へ覆面で赴き、調査しているんだとか。
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ミシュランキーホテル
▲ 「ミシュランガイド」初版本の複製(右)。初期には簡単な地図と店情報、また自動車装備についてのコラムが掲載されていました。
「と言っても、アメニティはいくつあるのか、などというチェックリストがあるわけではありません。我々が他社のサービス*と異なるのはあくまでインディペンデントであるということ。常にオープンなマインドで、その食事や、宿泊体験は行く価値があるのかどうか、インスペクターが自身の体験から判断しています。ホテルの場合にはvisit(訪問)とstay(宿泊)の両面から調査できるようにしていますが、必ず宿泊費はフルでお支払いすることで公平性が保たれています」
*ホテルの主な格付けには、匿名の調査員が900項目をチェックする「フォーブス・トラベルガイド」、米国自動車協会による「AAA」、コンデナスト・トラベラーによる読者投票ランキングなどがあります。
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なるほど、他の格付けサービスはホテルから登録費用などを徴収するものも多いので、ミシュランガイドはその意味でも中立ということでしょう。それはミシュランキーを獲得したホテルのリストを見ても明らかで、今回選ばれた施設の7割が大手チェーンではない独立系、さらにその25%(つまり全体の約3割)が20室以下の小規模なものでした。画一的なサービスより、よりパーソナライズされた“おもてなし”を受けたいと思うのは万国共通ということなのですね。
ミシュランキーホテル
▲ 25年10月8日、パリで行われた「ミシュランキー」グローバル発表会。
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それにしても気になるのはインスペクターの存在。レストランでは「男女ふたりで来る」「食事中にわざと何かを落とす」「お酒をほとんど飲まない」などと数多くの噂がささやかれていますが、ホテルではどうなのかな……とモヤモヤしていたら、グローバル発表会前日のプレスカンファレンスで、なんとインスペクターに取材が叶いました。

いま明かされるミシュラン覆面調査員の姿……アレ?

世界からジャーナリストが集まったプレスカンファレンスの場にて、インスペクター取材として与えられた時間は20分。事前に配布された資料には「How provide a human based, trusted recommendation
in full Independence? By an anonymous inspector(いかに人間を中心とした信頼できるおすすめを完全なる独立のなかで提供できるか? 匿名調査員)」とあるだけで、内容は一切明らかにされていませんでした。インスペクターは仮面をかぶって現れるのか? それとも昔のワイドショーみたいにカーテンの向こうで話すのか? そわそわしながら、その時を待ちました。
ミシュランキー ホテル
▲ ミシュランキーを獲得したホテルに贈られるプレート。これからはこの赤いプレートを色んなホテルで見かけるでしょう。
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始まってみますと、インスペクターはこの場にはおらず、オンラインで声のみの参加でした。一瞬落胆しましたが、声からでも意外に多くの情報が伝わってくるもの。実際に聞いた内容と、私のイマジネーションにより彼女の人物像を描いてみようと思います。
性別/女性

国籍/英国(本人がロンドン在住であることを明かしていたのと、言葉にかすかなブリティッシュアクセントがあったため)

年齢/50代(落ち着きのある声と話し方。本人の肩書はシニア・インスペクターとのことで、10人ほどのチームを率いているそう)

経歴/大学卒業後、高級ホテルで10年程度の勤務経験をもつ。その後、ミシュランから声がかかり、ヘッドハンティング(これは事実。ミシュランのインスペクターはホテルやレストランなどのホスピタリティ業界で勤務経験を持っている人が多いのだそう)

ブリティッシュアクセントがほんのわずかであったことから、おそらくキャリアは英国だけではなく、グローバルな分野で活躍していた方ではないかと推測しました。仕事のことは親しい友人や家族にもヒミツにしなくてはいけないそうですから、慎重な性格でしょう。でも一方で、家を長く留守にする刺激的な毎日を楽しむことができる大胆な一面も。子育てはもうひと段落しているのかな。私は映画『007』シリーズでジュディ・デンチ演じるM(ジェームス・ボンドの上役でMI6の長官)を想起し、明るい髪色でショートカットの女性をイメージしました。
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ミシュランキー ホテル
▲ミシュランの星を表す花のマークに鍵がついた、ミシュランキーのマーク。
彼女がどんな風にレストランやホテルを調査するか……それは残念ながら聞けなかったのですが、実際に存在したインスペクターの声を聞くだけで、ミシュランのセレクションがよりリアルに見え、感じられるのが不思議です。以前、富裕層向け雑誌の編集を手掛けていた際、「富裕層は同じ富裕層の口コミしか信頼しない」と言われました。これは「同じ価値観でモノやコトを判断できる人を信じる」という意味ですが、ミシュランも同様に私たちの隣にいて、信頼できる目利きの友人のような存在なのかもしれません。そしてそれは、これからも続くAI時代にあって、もっとも重要な情報のひとつとなっていくでしょう。その評価に同意できても、できなくても、それはある一定のジャンル(この場合はホテルやレストランなどホスピタリティ業界)を知り、経験を積んだ人の実体験に基づく、生の声なのですから。

「ミシュランキー」なホテルをもっと知りたい⁉

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