• TOP
  • STAY&TRAVEL
  • 「実は生肉天国!ワルシャワの“タルタルステーキ”が自由すぎて面白い」ポーランドに行きたくなる20のメモ

2025.05.11

「実は生肉天国!ワルシャワの“タルタルステーキ”が自由すぎて面白い」ポーランドに行きたくなる20のメモ

前回からお伝えしている「ポーランドに行きたくなる20のメモ」の8つ目は、タルタルステーキについて。現地のレストランでは、ポーランド牛を使ったタルタルステーキが前菜の定番です。その美味しさの理由と、個性豊かなタルタルステーキを食べられる8軒のレストランをご紹介。

BY :

文/大石智子(ライター)
ポーランドに行きたくなる20のメモ1〜7はコチラ
butchery & wine ハーブのマヨネーズがのったタルタルステーキ(約1900円)。

メモ8:実は生肉天国!ワルシャワの“タルタルステーキ”が自由すぎて面白い。生肉ウォッカも初体験!

「ポーランドに行きたくなる20のメモ」の8つ目は、特別版として現地のタルタルステーキを詳しくレポート。日本では牛の生肉を提供するには厳しい検査があるため、飲食店でタルタルステーキを目にすることは、なかなかありません。代わって欧州では様々な店が気軽にタルタルステーキを提供。生肉好きにとって、それは欧州渡航の楽しみのひとつであり、ポーランドも然り。2024年は、ワルシャワにある8軒のレストランでタルタルステーキを注文し、食べて聞いたメモは以下に細分化されていました。
PAGE 2
・ 牧草を食べて育つポーランド牛の赤身肉が美味しい
・ タルタルステーキは自由演目!店ごとに個性がまったく異なる
・ 旬の食材が多用され、タルタルステーキが季節を表す
・ 生肉の相棒はポーランド産ウォッカ
・ 思いついたその日にさくっと気軽に食べられる


次項にて、その背景をお伝えしていきます。

豊かな牧草地で育つ肉牛を、欧州のシェフも賞賛

実はポーランドの牛肉輸出量は、EU第2位。かくいう筆者も、2017年にスペイン・バスクのステーキ店「カサ フリアン」で初めてポーランド牛を口にし、その美味しさに衝撃を受けたのでした。「カサ フリアン」といえば、世界中の肉好きが訪問を熱望するステーキ店(なんと2026年に東京に開業!)。当時、同店のシェフが「ポーランド牛で凄くいいのが入ることがあって、赤身が素晴らしい」と話し、その薪焼きは人生トップ3に入るステーキでした。

ポーランドの肉牛は小規模生産者が多く、店に届くまでの供給網がシンプル。ブッチャーが優秀で、シェフの好みに合った肉質を手頃に効率よく仕入れられるそうです。
PAGE 3
飼育環境も申し分なし。ワルシャワで2軒のステーキハウスを含む7軒のレストランを運営するFerment Group代表ダニエル・パヴェウェックさんに、ポーランド牛が美味しい理由を聞きました。ちなみにFerment Groupはワルシャワのグルメシーンを牽引する存在。1つ星レストランや気軽なイタリアンも展開します。ダニエルさんはロンドンの飲食業界に15年携わり、2008年に祖国へ戻りステーキハウスからスタート。ポーランドになかった“熟成肉”を取り入れた人でもあります。

「もともとポーランドは生乳の生産が盛んで、肉牛でもホルスタイン種が扱われています。そんななか、いま欧州で高い評価を得ているのは、ホルスタイン種と肉牛をかけ合わせた交雑種。味わい深い赤身をもち良質な脂肪分も蓄え、でも脂肪は多すぎない。なぜなら、牧草を食べて伸び伸びと育っているからです。ポーランドは大陸性気候で、雨が多く牧草地が豊か。そして重要なのは、夏の間に牧草を確保して、牛を屋内に入れる寒い冬の間も、刈りとった良質な牧草を食べさせていることです」

そんなポーランド牛はステーキも美味しいですが、正直、現地でより魅せられたのがタルタルステーキ。なぜかと言えば、これまでのどの国よりもタルタルが“自由”だったから。タルタルステーキというと、ケッパー、玉ねぎ、卵黄、マスタードといった王道の材料に基づくものが大多数。しかしポーランドでは、生肉をベースに各店が好きなものをのせ、肉のカットも様々。タルタルの幅広さで言えば世界随一かもしれません。
PAGE 4
夏はハーブ、秋はきのこといったように旬をも表します。まるで丼もののように個性に富み、フレンチのようにソースも多様。美味しい赤身肉のおかげで食べ心地はサラダのように軽やかです。

元々ポーランドは豚肉の消費量が牛肉より多いですが、外食産業でいえばタルタルステーキは主流な前菜。そこで、現地で食べ歩いた8軒を以下ご紹介します。ちなみにポーランドには予約困難店が少なく、大半が当日または前日予約で入りました。

◆ alewino

ワインが豊富なビストロのタルタルは、薬味の加減が絶妙

alewino 昨年秋のタルタルステーキ(約2200円)。
▲ 昨年秋のタルタルステーキ(約2200円)。詳細はコチラ
PAGE 5
最初はワインショップとしてスタートした「alewino」はポーランド版ビストロ。いまも店内にショップを備え、250種以上のワインを用意します。オーストリアやポルトガル、イタリアなど欧州各国のワインが揃い、ナチュールも充実。常時20種以上をグラスで提供し、ワルシャワで美味しいワインを飲みたくなったら、ここは間違いないです。

そんな店のタルタルステーキは、昨年秋の場合、西洋わさびとチャイブ、胡桃、きのこ、にんにくが最高の脇役集団。西洋わさびの清涼感とマヨネーズのコクが赤身肉に相性抜群です。挽肉くらいなめらかな肉に、胡桃の歯応えがよいアクセントとなっていました。素直に美味しい。そこにスペイン「エンビナーテ」のグルナッシュ主体のワインを飲めたのも好ポイント。
alewino 春から秋は広いテラス席が気持ちいい店。
▲ 春から秋は広いテラス席が気持ちいい店。
PAGE 6

◆ butchery & wine

街随一のステーキハウスは生肉まで流石のクオリティ

butchery & wine ハーブのマヨネーズがのったタルタルステーキ(約1900円)。
▲ ハーブのマヨネーズがのったタルタルステーキ(約1900円)。詳細はコチラ
ポーランドで唯一、8年連続ミシュランのビブグルマンを受賞しているステーキハウス。生産者との繋がりが深く、家畜の栄養管理や輸送、屠殺にまで関わっているとか。国内随一の仕入れルートをもち、タルタルステーキに使うのも最高峰ポーランド牛のサーロイン。肉の食感を保つ細かなサイコロ状にこだわり、丁寧な手切りを徹底しています。
PAGE 7
タルタルの材料は、エシャロット、キュウリのピクルス、ケッパー、タバスコ、ディジョンマスタードなどベーシック。スペイン産の爽やかなアルベキーナ種オリーブオイルが全体をまとめています。食後の印象は「肉質がいい」に落ち着くので、生肉の直球の美味しさを味わいたい人におすすめ。
butchery & wine 赤と黒を基調とした店内。
▲ 赤と黒を基調とした店内。
butchery & wine ステーキはもちろん、牛タンや牛ハム、骨髄など肉料理は15種以上。
▲ ステーキはもちろん、牛タンや牛ハム、骨髄など肉料理は15種以上。
PAGE 8

◆ Koneser Grill

タルタルステーキに魚介を合わせていたステーキハウス

Koneser Grill ボッタルガやクレソンがのるステーキタルタル(約2200円)。
▲ ボッタルガやクレソンがのるタルタルステーキ(約2200円)。詳細はコチラ
上の「butchery & wine」と「Koneser Grill」は、ともにダニエルさんのグループのステーキハウス。同じく最高峰ポーランド牛を扱います。前者のタルタルステーキはサーロインでしたが、こちらではサガリを使用。風味の強いサガリを丁寧にトリミングし、細かなサイコロ状に手切りしています。
PAGE 9
エシャロット、ウスターソースといった定番の材料に、タイのチリソースや醤油などのアレンジを随時追加。合わせる食材も月ごとに変わり、初夏はボッタルガ、クレソン、マッシュルームのピクルスなど。昨年12月は、根セロリ、黒にんにく、小鰯でした。そんなタルタルステーキについて店では、「ウォッカと相性抜群です」と、同郷ペアリングを推奨しています。
Koneser Grill フィレのステーキと骨髄。
▲ フィレのステーキと骨髄。
PAGE 10
Koneser Grill 攻めたシェフのイラストのある店内。
▲ 攻めたシェフのイラストのある店内。

◆ U WIENIAWY

客席の隣で生肉が切られていくパフォーマンスに注目!

U WIENIAWY 混ぜる直前に手切りされていく肉。写真/升谷玲子
▲ 混ぜる直前に手切りされていく肉。詳細はコチラ。写真/升谷玲子 
PAGE 11
歴史建造物に入るレストランの雰囲気は、まるで1930年代のワルシャワ。今回の8軒のなかで、レストランもタルタルステーキも最もクラシックです。レシピは王道にして、最大の個性は肉のカットからすべて客席の前で調理すること。既にカットされた肉を材料と合わせるワゴンサービスはよく知られていますが、肉のカットから始まる店は稀。魚と同じく切り立ての美味しさを期待できます。

大人数で来る客も多く、10 人前のタルタルが隣で作られるなんて光景も珍しくありません。日によってはトランペットやバンドの生演奏も開催。生肉×生調理(ワゴンサービス)×生演奏が揃えば、躍動感はひとしおです。
U WIENIAWY 仕上げはたっぷりのマスタード。ここもウォッカと一緒に味わうことを推奨します(約2080円)。
▲ 仕上げはたっぷりのマスタード。ここもウォッカと一緒に味わうことを推奨します(約2080円)。
PAGE 12

◆ Le Braci

美味しくならないわけがないイタリアン仕立て

Le Braci 昨秋のタルタルステーキ(約2400円)。
▲ 昨秋のタルタルステーキ(約2400円)。詳細はコチラ
改めて行き直したいイタリアン。なぜなら、前述のダニエルさんと話すためアペとして立ち寄っただけだったのに、前菜も空間も魅力的だったから。お皿を無数に積み上げたアーティスティックなエントランスの先は、全面緑に塗られた空間。ロンドンの流行りの店に通ずる賑わいとお洒落さで、満席になるはずです。夕食を自宅でさっと済ます人も多いというポーランド。それがここでは、業界人が集うような“いまどき”な夜を目撃しました。
PAGE 13
Le Braci 入口の皿のオブジェとベンチ。
▲ 入口の皿のオブジェとベンチ。
タルタルステーキは旬を重視。11月の場合、南イタリアで秋の一定期間にだけ採れるフレッシュなタマゴダケが準主役でした。それがフィレ、トスカーナのEXVオリーブオイル、レモン汁、パセリ、トーストした胡椒、36カ月熟成のパルメザンチーズと一体化。厳選食材を惜しげもなく使うところに、「肉を美味しく食べさせたい」という気概を感じます。
Le Braci 緑に統一した空間の中、白いクロスが高級感のポイントに。
▲ 緑に統一した空間の中、白いクロスが高級感のポイントに。
PAGE 14

◆ elixir by Dom Wódki

タルタルステーキとウォッカの共演で「肉カクテル」が完成

elixir by Dom Wódki タルタルステーキ(約2600円)とウォッカ(約690円)のペアリング。
▲ タルタルステーキ(約2600円)とウォッカ(約690円)のペアリング。詳細はコチラ
ポーランドを代表するお酒と言えばウォッカ。「elixir by Dom Wódki」はウォッカの家(Dom Wódki)と店名につく通り、750種類のウォッカを揃え、それらと料理のペアリングを楽しむための場所です。メニューは全品どのウォッカが合うか明記。それも2銘柄ずつ書かれ、タルタルステーキの場合は「Orkisz」と「DWÓR SIERAKÓW PIEPRZOWA」で両方試してみました。共にアルコール度数40%で、もちろんポーランド産。
PAGE 15
こんな度数が高いお酒、タルタルステーキの味が分からなくなるのではと勘ぐります。しかし意外やいいスパイスとなり、度数の反動か飲んだ後の方が肉をまろやかに感じました。ウォッカに合うことを前提に、タルタルステーキにはラベージ(ハーブ)やエシャロット、きゅうりのピクルスが添えられ、マスタードと卵黄でまろやかさもプラス。卵黄を64℃の低温調理で仕上げるガストロノミックさもみせます。

皿上で自分が混ぜるスタイルも個性的で、最初にほぼ肉だけの味を試せたのはここだけ。肉だけでも素直に美味しい。そして混ぜ、ウォッカを飲むと、もはや口内調理で完成するウォッカベースの肉カクテル。ピアノの生演奏も行われ、ポーランド牛、ウォッカ、音楽を一度に楽しめるので、初ワルシャワなら満足度の高い店となりそうです。
elixir by Dom Wódki ポーランド伝統料理を揃え、ウォッカがずらりと並ぶバーも併設。
▲ ポーランド伝統料理を揃え、ウォッカがずらりと並ぶバーも併設。
PAGE 16

◆ Rozbrat 20

1つ星レストランのアミューズまでタルタルステーキ

Rozbrat 20 紫の花がのるものがタルタルステーキ。テイスティングメニュー(ショート2万2300円〜)。
▲ 紫の花がのるものがタルタルステーキ。テイスティングメニュー(ショート2万2300円〜)。詳細はコチラ
2025年現在、ワルシャワでミシュランの星を獲得するレストランは2軒のみで、うち1軒がこの「Rozbrat 20」。シェフのバルトシュ・シムチャクさんは、英国を代表するトップシェフ、トム・エイキンズの元で腕を磨き、故郷に戻り“モダン・ポーリッシュ”を日々昇華しています。そんなバルトシュさんがアミューズに選んだのがタルタルステーキ。以前、通常ポーションで提供していたことがあり、それが大好評だったため、ひと口版として継続しているのです。
PAGE 17
ポーランド牛のサーロインをキュウリのピクルス、マスタード、ウスターソースなどで和え、ハーブのマヨネーズやマッシュルームのピクルスで仕上げています。下のタルトの繊細な薄さとクリスピーさが、肉の風味を際立たせるポイント。「提供時に適切な温度であることも大事にしています」とシェフ。刺身に通ずるその感覚に、日本人の多くは共感するでしょう。
Rozbrat 20 ポーランド料理で育ち、英国やフランスの調理技術を自身のルーツと融合させるシェフのバルトシュ・シムチャクさん。
▲ ポーランド料理で育ち、英国やフランスの調理技術を自身のルーツと融合させるシェフのバルトシュ・シムチャクさん。
PAGE 18
Rozbrat 20 シンプルかつナチュラルな店内。
▲ シンプルかつナチュラルな店内。

◆ Delicja Polska Restauracja

空間もタルタルもロマンティックな仕上がり

Delicja Polska Restauracja フィレを使ったタルタルステーキ(約2600円)。写真/升谷玲子
▲ フィレを使ったタルタルステーキ(約2600円)。詳細はコチラ。写真/升谷玲子
PAGE 19
旧市街に位置するクラシックなレストラン。ポーランド各地の伝統料理を高級に仕上げ、全般的に味つけはしっかり目です。タルタルステーキは、ベースはクラシックながらエディブルフラワーやサマートリュフをのせるなど、華やかさもあり。白を基調にピンクを効かせたロマンチックな空間でいただけます。
Delicja Polska Restauracja ファンシーな店内。写真/升谷玲子
▲ ファンシーな店内。写真/升谷玲子
PAGE 20
以上が、ワルシャワのタルタルステーキリストでした。もしも初ポーランドで試す件数が限られるのであれば、「alewino」とステーキハウスのどちらか、「elixir by Dom Wódki」はおすすめの優先です。ただしイタリアンも捨てがたい。取り急ぎGoogleマップにピンを差してくださいませ。

次回は、ワルシャワの意外なカクテルやミュージアムの見どころについて。
大石智子(ライター)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

こちらの記事もオススメです

PAGE 21

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        「実は生肉天国!ワルシャワの“タルタルステーキ”が自由すぎて面白い」ポーランドに行きたくなる20のメモ | 旅行 | LEON レオン オフィシャルWebサイト