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2019.12.20

興奮がとまらない! アメリカ3州の音楽と文化を巡る旅【第3回】

超陽気な音楽の都・ニューオリンズで、オヤジジャズとセカンドラインにハマる!

3週連続でお届けするアメリカでの“音楽に溺れる旅”。最後となる第3回はジャズ発祥の地、ニューオリンズをご紹介します。ジャズのイメージばかりをもって訪れてみたところ、そこは想像を超える音楽のるつぼ。アマからプロまで、熱いミュージシャンたちのプレイは旅の終点にふさわしい音色なのでした!

CREDIT :

写真・文/大石智子

趣ある街のアガるホテルにチェックイン!

アメリカ3州を巡る旅の6日目、テキサス州オースティンから計8時間のドライブを経て、いよいよルイジアナ州ニューオリンズに到着(日本からはダラスやヒューストン経由で約15時間)。
クルマがホテル「ソニア・ハウス」のある旧市街に入ると、辺りは「ここ、アメリカなの?」と思ってしまうようなヨーロピアンな空気感です。それもそのはず、ニューオリンズは1718年にフランス領となり、その後1763年からはスペイン領だった街。1803年にアメリカに売却されるものの、領土時代の名残が建物に色濃く表れている地なのです。

街の建物は高くても4階建てで、赤茶、青、黄色と発色がよく、多くがバルコニーを備えます。そして、バルコニーには“アイアン・レース”と呼ばれるレース調の鉄製手すりが施されている。アイアン・レースは多くが黒く、ちょっと女性の高級ランジェリーの柄のようにも見えてきます。

すべてが繊細かつ趣たっぷりで、それでいてアメリカ南部らしい陽の強さとノスタルジックさも漂う。ニューオリンズ、着いて5分で大好きになりました!
気分が上がったまま到着したホテル「ソニア・ハウス」がまたステキでした。もとは1829年に大農場主であったジョセフ・ソニア・デュフォーサさんファミリーのお屋敷として造られた建物。その後1984年にホテルとして生まれ変わり、多くの旅人を魅了してきました。

近年は各国でリノベーションによるホテルが増えていますが、これほどもとのかたちに順じたホテルも珍しいでしょう。モダンさは極力控えめで、ある意味、200年のタイムスリップを味わう感覚です。

アンティーク家具が品よく配され、中庭も広く、クレアという猫が気まぐれにホテルをうろついているのがいいユルさを与えています。旧市街・フレンチクォーターにはご機嫌な酔っ払いが夜中まで騒がしい通りもありますが、このホテルの中はいたって静寂。ニューオリンズを再訪する時、私はまたここに泊まるでしょう。

ニューオリンズは路上が舞台となる街

▲陽気な曲を奏でるセカンドラインを引き連れる新郎新婦。抜群のリズム感でプロかと思うほどの踊りっぷり。
ホテルにうっとりしているのもつかの間、まだ明るい18時に街を散策しながらディナーへ向かうことに。すると、向こうから賑やかなブラスバンドとともにドレスアップした人たちが踊りながらやってきます。近づくと先頭はウェディングドレスに身を包んだ花嫁さんとボウタイをした新郎。めちゃくちゃダンスが上手いと思った皆さんは一般人の結婚式のパレードだったのです。

週末だったため、その後も結婚式のパレードを2組見ることになりますが、このようなブラスバンドを率いるパレードは“セカンドライン”と呼ばれるもの。ニューオリンズの葬儀のパレードから生まれたセカンドラインは、さらにたどると、奴隷として連れてこられた黒人たちの故郷アフリカでの音楽やリズムが由来となっています。

トランペットやトロンボーン、マーチングドラムなどから出るアップテンポな音楽は、有名どころでいうと『聖者の行進』のリズム。この曲もそもそもは葬儀パレードでよく演奏された黒人霊歌のひとつ。埋葬を終えたあとは明るい音楽を奏で、天国へ行くことを祝う意味があるとされています。故人の魂の解放を表すためにも底抜けに明るい。そんなアゲアゲなセカンドラインに、筆者も故人じゃないけど魂が解放されたのでした。

というわけで、人々の日常に音楽が根づいているニューオリンズでは、旧市街・フレンチクォーターのいたる所でさまざまなストリートミュージシャンに出会います。週末に10組以上は見かけ、例えば以下のような個性豊かな方々でした。

・ドリーンさん=クラリネットと歌が上手なジャズミュージシャン。実はCDを15枚以上出している有名人で、オーケストラにも呼ばれるような名人。どこに出没するかはその日次第。

・ドーナツ屋の前にいるオヤジ系ブラスバンド=トランペット奏者のエフレム・タウンズさんは、もとはグラミー賞をとったDirty Dozen Brass Bandというバンドに結成時からいたメンバー。

・青年タップダンサー=上半身裸で精悍な佇まい。

・高校生のブラスバンド=「テクはまだまだでも勢いは負けない」とは地元民談。

・バグパイプを吹くスコットランド人=セント・ルイス大聖堂の目の前というベストポジションにて、恐ろしいほどの肺活量でバグパイプを演奏。
実は有名なミュージシャンもストリートにいるのがニューオリンズの面白いところ。逆にストリートから有名になるケースもあり、高校生が学校帰りにブラスバンドをやっているところを「今度うちの店で演奏しない?」と声をかけられることもあるとか。路上の若者にチャンスを与えるほど、ニューオリンズは音楽に関して寛容なのです。

そんなストーリーももつストリートミュージックを楽しむ際には、チップの準備をお忘れなく。リスペクトも賞賛もお金が表すと思えば、言葉の壁もありません。

ライブハウスでオヤジジャズに酔う

今回、街歩きおよびライブハウス巡りを案内してくれたのは、ニューオリンズ在住20年以上になる元ミュージシャン。この地の音楽に精通したガイドさんに、なぜニューオリンズの人たちは音楽に秀でているのか聞くと、以下の答えが返ってきました。

「子供の頃から家に人が集まると、自然とセッションが始まる環境がここにはあります。音楽は生活のなかにあるもので、やろうと思ってやっているものではない。ダンスも習うのではなく音楽がなると勝手に踊ってしまう。そういう時間が多くて、家族や親戚にミュージシャンがたくさんいる有名な音楽ファミリーがいくつもあります」

ちょうどこの会話の前に見たジャズライブの老舗「Preservation Hall」で演奏していたアーティストも、ボーカル兼トランペットは4世代目、トロンボーンは5世代目と、おっしゃる通り。

そして驚くのが、ニューオリンズのミュージシャンには楽譜が読めない人がたくさんいるという話でした。読めなくても十分活躍できるというのです。

「ニューオリンズの音楽は即興の嵐なので、楽譜を用意することはほとんどありません。あってもコード譜ぐらい。リハーサルも基本ないですし、テクがあってもほかの楽器と即興でうまくからめないとバンドでは呼んでもらえない。なので、音楽学校を出ずに耳で聴いて覚えた叩きあげのミュージシャンが多いですね。他の国のプロから見ると、普通じゃない指使いやコード進行と思う演奏もあるでしょうが、それが面白味になって独自のリズムやメロディが生まれます」

そんな話を伺いつつ、ライブハウスを引き続き巡ります。面白かったのが、ニューオリンズジャズの名所「Preservation Hall」のあとに行った中心地から離れたシガーバー「Dos Jefes」。地元民しかいないバーでは皆が気ままにシガーを吸い、お喋りをして、BGMはザディコの生演奏。

ザディコとはルイジアナ州のクレオール音楽に、ケイジャン音楽やブルース、R&Bが混ざってできた音楽で、アコーディオンが入るからかどこか懐かしく、シガーの煙とも絶妙に合ったのでした。
その後は3連続でジャズを体験。「The Jazz Playhouse」で87歳女性ヴォーカリストの全身楽器のような声の出し方に聴き惚れ、蒸気船クルーズ「ナッチェス号」では船上ジャズを堪能。そして最後の晩は「Fritzel’s European Jazz Pub」でオヤジバンドによるジャズを聴いて締めくくりました。

自分にとって今回ニューオリンズで聴いたジャズは楽しくもリラックスできるもので、いつも気負わず聴いていた。その理由と関係あると思ったのが、ガイドさんの「ジジイは音数が少なくていい」との言葉。以下、続きます。

「成熟したミュージシャンは余裕があるから音を無理に詰め込まず、大事なところはバシッとキメます。だからこちらも気負わずに楽しんで聴けるし、ちゃんと感激する瞬間もある。大人数になってもオレオレになりませんよ。逆に不安な人は音数が増えがち。漫才や落語もそうですよね」

何にでも共通するグサッとくる話を最後に聞き、ホテルでジャズを聴きながら帰国へのパッキング。2泊だけのニューオリンズはたくさんのリズムにまみれていたこともあり、本当にあっという間の滞在でした。音楽以外にもルイジアナ州の食のスタイルであるクレオール料理やケイジャン料理とともにワインを飲む時間もおすすめです。

そして、昼はストリートミュージシャンを観て、夜はライブハウスにふらりと入り、一日を成り行きで過ごす。そんないい音楽のあるゆるっとした時間は、特に忙しく働く大人にとって最高の旅となるでしょう。

ラスベガス、オースティン、ニューオリンズでの音楽と文化を巡る旅を終えたいま、思い起こすのは、やはりライブは格別ということ。それも、音楽の歴史が濃い街が舞台だったからこそ体感します。みなさんもカメラにおさまらない唯一無二の思い出を作りに、アメリカへの旅を計画してみてはいかがですか?
取材協力:ニューオリンズ観光局
https://www.neworleans.com

ブランドUSA
https://www.gousa.jp/

アメリカン航空で音楽の旅へ!

アメリカン航空は、2020年3月末より、羽田-ダラス フォートワース国際空港(DFW)線の新路線を開設し、羽田-ロサンゼルス国際空港(LAX)線も増便いたします。またLAXからは1日あたり200便以上、DFWからは1日あたり900便以上を運航し、アメリカ国内はもちろん、中南米やカリブ諸国へもスムーズに乗継可能となっています。aa.com

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。SDエイバルファン。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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