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2021.07.16

【第6回後編】野呂エイシロウさん(放送作家)

モテる会話術/後編「マウンティングなんてもってのほか。自分を一番下っ端に置いてトークしろ」

現代における「モテ」の意味と意義を探る連載「モテ解体新処」。前回に続きゲストは、LEON本誌の連載、『それはまた誰かのハナシ』でもおなじみ、人気放送作家にして戦略的PRコンサルタントでもある野呂エイシロウさんです。

CREDIT :

写真/椙本裕子 文/木村千鶴

この春刊行された書籍『心をつかむ話し方 無敵の法則』(アスコム)が版を重ねて絶好調という野呂エイシロウさんが、現代における「モテ」の意味と意義を探る連載「モテ解体新処」に登場。前半では会話で相手の心をつかむには、相手に「感謝」の気持ちをもって臨むことが大切だと野呂さん。では、実際に話す時に野呂さんが心掛けている自分の立ち位置とは?

怒りは人を傷つけコミュニケーションを破壊する

キャバクラ通いに明け暮れて派手にお金を使っていた時には、タクシーの運転手さんとか局の受付の人にも横柄でした。タクシーの椅子を壊したこともあります。早朝、テレビの収録に向かうのに、自宅前からタクシーに乗って「汐留」とだけ言って寝ちゃったんです。で、「着きましたよ」って起こされたのがなぜか「白金」(笑)。

収録に間に合わず、怒って椅子を蹴飛ばしたら壊れてしまった。謝って弁償しましたけどね。でもそれが例えば、総理大臣が回してくれたハイヤーだったら、場所を間違えられても絶対に怒らないじゃないですか。結局ちょっとバカにしてるんだなって気付きました。

怒りは自分の思い通りにならない時に湧いてくることが多いように思います。多少は誰にでもあることかもしれないけれど、例え意図的ではなくても、怒りは人を傷つけたり、コミュニケーションを破壊したりもする。気をつけないといけないと思いました。

またゴルフの話を例に出しますが(笑)、ゴルフって、上手く打とう、ボールをコントロールしようとするとかえって上手に出来なくなる。道具ともコミュニケーションが必要なんですね。うまくいかないのをクラブのせいにして壊す人もいるでしょう。でも、それは自分のエネルギーの伝え方が悪いわけで、ボールや道具のせいじゃなく100%本人のせい。怒りの感情も自分でコントロールしないといけない。アンガーマネジメントは絶対必要なんです。
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ポジションは一番下っ端。マウンティングなんてもってのほか

ではどうするか? 僕がその対策としてやっているのは自分をそこにいる中の一番下っ端だと捉えるということ。その場にいる人がどんな立場や年齢だとしても、会話の中での自分のポジションを一番下にする。そうすれば自分の思い通りに行かなくて当たり前と言うか、腹も立たなくなる。マウンティングなんてもってのほか。逆に一番下を取りにいくと物事は大体良くなります。そして楽。

失敗しても「仕方ないよね、野呂さんなんだから」ってなる。昔から芸能界でも植木等さんとか高田純次さんとか、あえてちょっとダメっぽい感じが魅力の人がいますが、あんな感じ。出川さんもそうですね。そういう人ってスタッフに対しても「いい人」が多いんです。周りを労ってくれたり、みんながイラついている時にも和ませてくれたり。だから数多く仕事も回っていくんでしょう。それこそ、微差なんですよね。実力が拮抗していたら、必ず「いい人」に仕事が行きます。驕らず、の態度がやはり大事なんです。

もうひとつ、自分が一番ダメだった時、苦労した時を思い出すのもいい方法です。初心に返るってよく言いますけど、仕事を始めたばかりの時は、どんなに安い仕事でももらったらうれしかった。活躍している野球選手だって、初めてホームランを打った日のことは忘れていないと思います。最初の頃のうれしかった瞬間。そのことを忘れないでいたら謙虚になれるよなって思います。

ウチでも、僕がちょっとでも偉そうなこと言うと、妻に「あなたと同じ年齢の時に、孫(正義)さんはもっと凄かったわよ」とか、「上には上がいるんだから、それと比べてどうなのよ、マーク・ザッカーバーグと比べたらゴミみたいなものよ」って言われてます(笑)。

僕、家事はなんでもやるんですけど、昔はそれも時々文句を言ってたんです。「なんで俺がやんなきゃならないんだよ」って。そうしたら妻に「あなたが住み込みのお手伝い雇えないのが悪いの!」言われました(笑)。ひどい? いや、でも僕は彼女のそういうめちゃめちゃな性格が好きなんです。彼女と付き合い出した時、「よくこんな美人が俺とデートしてくれるな、カウンターの隣に座ってくれるな」って思っていました。田舎から出てきた俺がこんな素敵な人とって。それを思えば「ありがとう」でしかないですよ。とまぁ、結婚以来ずっとドSとドMでやってます(笑)。
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わからないことは素直に「教えてほしい」と頼む

それはともかく、やはり謙虚な気持ちがないと、インプットもできなくなると思うんです。僕ら世代って結構否定しちゃうから。今の子供のなりたい職業がユーチューバーでも、否定するのは大きな間違い。僕らだって子供の頃は野球選手とか映画スターになりたいって言ってたし。時代によってスターは違う。今のスターはスマホの中にいるんです。今のことが分からないなら、素直に「教えてほしい」って頼めばいいんです。

老若男女、みんな教えるのは好きなんです。相手が知らないことを伝えるのは『教えるエンタメ』みたいなもんで。僕も若い女性たちの飲み会に呼ばれて、永遠と低温調理器の話を聞かされることもあるんですけど(笑)、そこで上手な家電レンタルの使い方を教えてもらったりして、結構助かってます。

女性の中には「教えて!」って聞いてくるおじさんは可愛いと思ってる人もいるらしい(笑)。女性だけじゃなく、若手のADさんとかをご飯に誘って、新しい音楽や、文化の話を聞くことも多いです。コミュニケーションって、近ければ近いほど面白いことが起こる。結果、得もする。やっぱり自分を下っ端にして、教えてもらうほうがいいんです。

先輩に奢られたら後輩に奢り返して「恩送り」する

ただ、教えるのってある意味面倒だし、彼らの時間をもらっているわけですから、大人として、その対価は払います。彼らの食べたいものを奢るとか。僕も駆け出しの頃に、先輩に凄く世話になってたくさん奢ってもらいました。その人たちにはお返しできなかったから、若手の人に「恩送り」をしている部分もあります。まあ、みんなは“金づる”って思ってるかもしれないけど(笑)、めんどくさい人、セクハラする人なんて思われるよりは、「あの人呼ぼうよ」って言われたほうがよほど良いかなと。

僕は日本って桁違いにいい国だと思っています。だって自分は努力して道路を作ったわけでもないのに、先人がインフラも整えてくれたし、生まれた時から電気もガスも水道も通ってる。そしてのらりくらりと近隣国とも戦争せずに平和にやってきているわけじゃないですか。恵まれてるよなって。

感謝のネタが手元になければいくらでも探してみればいい。僕は昔、親父のこと馬鹿にしてたんです、サラリーマンで部長止まりかなんて。でも父たちの頑張りがあって今がある。気も利かないし融通も効かない親だけど、そういうところだって反面教師としてよかったなって。探せばなんでもいいところがある。
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結論は自分が気持ちよくなるために喋らないこと

結論めいた話になりますが、結局は、話し方を「テクニック」と思っていたら上手くいかないと思うんです。そういう気持ちはきっと話し方にも出るんじゃないかな。心の中、自分の根幹を変えないと、それが言葉尻に現れるんですよ。

テクニックで生きるって、ある意味自分の人生に嘘つくことでもあると思うんです。それはよほどの天才じゃないと出来ないだろうし、それよりは「自分を下に置いて皆に感謝する」という風に根本的な姿勢を変えていく方が楽だと思うんですよ。そうすれば謙虚になれるし、言葉で人を傷つけることがなくなるから。

自分のポジションを相手より高いところに持っていく必要はないし、それを狙うと実は損すると思うんですよ。そこに気づいてない人が多い。会話で大事なのは自分が気持ち良くなるために喋らないこと。気持ち良くなっていいのは本当に自分が一人になった時、風呂とトイレの中だけにしておきましょう(笑)。

●野呂エイシロウ

1967年愛知県生まれ。愛知工業大学卒。放送作家・戦略的PRコンサルタント。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。『ザ! 鉄腕DASH!!』『奇跡体験アンビリバボー!』『ズームインスーパー』などにたずさわる。30歳の時から“戦略的PRコンサルタント”としての仕事をスタート。クライアントには「SoftBank」「ライフネット生命」「GROUPON」をはじめ国内外の企業150社以上があり、“かげの仕掛人”として活躍している。著書に『終わらす技術』(フォレスト出版)、『毎日〇×するだけでお金が貯まる手帳術』(集英社)など。

『心をつかむ話し方 無敵の法則』

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会話を盛り上げるのは「おもしろネタ」より「一般論」/人を巻き込むときは相手のメリットを明確に/プレゼンするときは「前置き」は全カットでOK/入りにくい会話は「同意」と「相づち」で切り込む/好印象を残すなら相手に2倍話してもらう/ネガティブな話は「予告」を緩衝材にする...etc. 恋愛、SNS、テレワーク、営業、プレゼン、会議、どんな場面でも誰が相手でも使える一冊。アスコム刊。価格1540円(税込)。

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