2021.05.08

【第45回】

本当に好きな人とは、すぐしちゃダメ!?

美人とは「美」という高スペックを備えたスーパーカーのような存在。その“スーパーぶり”に男は憧れるわけですが、果たしてそのスペックは彼女に何をもたらすのか? 「ワイングラスのむこう側」(cakes)で人気の林伸次さんが、世の美人たちの隠された恋愛事情に迫ってみる連載です。

CREDIT :

取材/林伸次 写真・構成/木村千鶴

「ワイングラスの向こう側」(cakes)でおなじみ、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」(バール・ボッサ)のマスターにして作家の林伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術でさまざまな美人さんの本音を聞き出す連載です。

テーマは今どきの美女たちの”悩める恋愛事情”。美人が出会った最低男を裏テーマに、彼女たちの恋愛体験(主に失敗)談と本音の恋愛観に迫ります。

第45回のゲストは、前回に引き続き脚本家のみなみさんです。前編では、4回お父さんが変わって苦労した子供時代のことをお話いただきました。そして、大学浪人中に家出してしまったとのことですが、さてそこから現在に至るまでのお話を聞かせてもらいましょう。
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キャバクラの体入で所持金が100倍に⁉

「渋谷。漫画喫茶に泊まって、週払いのティッシュ配りとかしてたんですけど、お金が追いつかなくて、とうとう残金300円になってしまった」

── ああ〜辛いなぁ〜(涙)、その後どうなったのでしょう?

「もう寒くて寒くて、トイレで泣いてました。行く当てもなくて、元旦にスクランブル交差点を歩いてたら、人の良さそうな、スカウトの人が話しかけて来たんですよ。『君、最近この辺徘徊してるけど、何してんの』って言われて」

── そういう仕事の人は、通りかかる女性をよく見てるんですね。

「そうなんですよね。それまでは全部無視してたんですけど、いい人そうに思ったので、『何もしてない。無職』って答えたら、『力になれるかもしれないから、一回ルノアール(喫茶店)行かない?』って言われて、紅茶ご馳走になったら、涙が出て来ちゃって」

── あ〜。大丈夫かなあ。聞いてて心配になる。それでどうでした?

「それで、『家出したんです。本当は受験したかった、でもできなかった』って言ったら、うんうんって聞いてくれて。それで、もうお金がない、って言ったら、『派遣のキャバクラとか行ってみない? 君、コミュ力高いでしょ。でも18歳か。ノンアルでどこまでできるかやってみたら』って」

── へえ〜。

「で、見つかったのが葛西のキャバクラ。元旦にやってるキャバクラが見つからなくて(笑)。でも交通費もないって言ったら、お年玉だよって、交通費とドレスのレンタル代をくれました。それでヘアメイクして、ドレスに着替えたら、つく席全部で場内指名もらえたんですよ!」

── おおおお! やるなあ〜。

「あれ、これ向いてんじゃない!? って。結果1日で3万円くらいを手にして、所持金が100倍に増えました(笑)」

── やった! 良かった。それでキャバクラはずっと続けていたんですか。

「昼の仕事と派遣のキャバ嬢を掛け持ちしてました」

── どうしてもお金を稼げるようになると、そこに依存したり、贅沢がやめられなくなったりする人がいると聞きますけど、大丈夫でしたか?

「そうですね、一時期は買い物依存症でした。稼げちゃったもんだから、ブランドものを買ったりして。でも年齢には合わないことでしたね。クレジットカードで買い物したのが払いきれず、ブラックリストです」

── あらら、その後大丈夫でした?

「謝って、ちまちま返しました。今はデビットカードしか持ってないです」

── あ〜なるほど(笑)。今も同じお仕事ですか?

「アルバイトをしながら、脚本の仕事をしています」

── そうなんですか! 脚本家になりたいと思ったのはどうして?

「元々、お笑い芸人になりたかったんです。昔から辛い時にはお笑いに助けられてたから、芸人になりたいって気持ちがずっとありました。中学生の時には、中川家さんやずんさんのネタを聞いてノートに書き起こしてたんです」

── あ〜、中川家は本当に面白いですよね、話がよくできている。

「そうですよね! 親と同居していた頃は、お母さんに『芸人にするために産んだんじゃない』って言われたりして、諦めてました。でも家を出てから、色んな仕事をして過ごす中で、今死んで残る後悔はなんだろうって考えた時、まだ芸人をやってなかったなって」
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お笑いライブの初舞台の最中に、”私、表舞台が好きじゃない”って気づきました

── 事務所に入ったり、オーディション受けたりしました?

「NSC(吉本総合芸能学院)の面接に飛び込みで行きました。その時、隣に同じ歳の男の子がいて、気が合ってコンビを組むことになって。中国人ハーフの子で、なんか尖ってて、キャラが立ってるなって思ったんですね。そこから2週間くらいでふたりでネタを書いて、地下ライブに出たんですよ」

── みなみさんは行動力がありますね〜。それで、どうでした?

「あのですね、舞台に出た瞬間に、『あ、私、表舞台好きじゃない』って気づいたんです。それ1回で自分自身がライブに出るのはやめて、つくる側になろうと思いました」

── それで裏方に。どういう行動をとりましたか。

「社会人向けのシナリオセンターっていう所で書き方を教えてもらったんですが、すぐに行かなくなっちゃいましたね。やり方がわかればいい、小手先のテクニックみたいなのはいらないやって思って」

── でもああいうところって、誰か紹介してもらうとか、きっかけがもらえるとか、いい面もあると思うんですけど。どうやってその仕事ができるところにたどり着いたんですか。

「たまたま近所のバーに業界人が集まるところがあるんですが、失恋して、そこで荒れ果てて飲んだくれているところをオーナーが拾ってくれたんですね(笑)。今のバイト先でもあるんですが、そのオーナーが知り合いを紹介してくれたんです。その人に脚本の仕事をもらっています」

── あ〜、そういう近道があるんですね。まあでも僕もそんな感じなんで。お客さんに出版社の人がいて、林さん書かない?って言ってもらってからの今ですから。

「うん、人の力を素直に頼る(笑)」
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会うはずもないところでばったり会うことが頻繁にある彼に不信感が募り……

── いいと思います。あ、失恋って言葉で思い出しましたが、恋愛の話を全然聞いてなかった(笑)。高校生以降の恋愛ってどんな感じでした?

「19歳の時に、17歳上の人と2年くらい付き合ったんですが、その人には人を好きになる大切さみたいなものを教えてもらいました」

── いいですね〜。あ、え? 17歳上?

「でもそんなにおじさんじゃなかったですよ。広告代理店を経営している人」

── その人は紳士的な人だったんですか?

「いい人でした」

── それなら良かった。でもその年齢だと結婚は考えないですよね。

「いや、向こうも35歳超えてるし、考えてくれてるみたいでしたよ。でも……」

── 何かあったんですね。

「探偵をつけられました(笑)」

── えっ!? じゃあ本気で結婚を視野に入れて、それで探偵をつけたんだ。怖い人ですね……。それ、なんで発覚したんですか」

「見せたことのない身内の顔を知ってたり、会うはずもないところでばったり遭遇したりってことが続いたんです。彼は心配性なので、渋谷みたいな若者の集まる繁華街で遊んだらダメって言われてたんですけど、やっぱり遊びたいでしょう。普通に女子で集まってカラオケに行くくらいですけど、内緒で行ったら、店を出たところでばったり会うんです」

── それは、なんとなく気持ち悪いですね。

「いや本当にびっくりしたし、不信感は募るし。だから酔わせて、『もしかして私にGPSとかつけてない?』って聞いたんです。そしたら『もっといいものつけてるよ、探偵だよ』って。何かあった時に君を守ってあげられるって言ってましたけど」

── うわ〜! それはやりすぎ。でもまあ心配してたんでしょうね。

「今ならそう思えますけど、当時はね〜。それでお母さんに相談してみたんです。そしたら、『あなたが愛されてるって思うんだったら良いけど、1ミリでも恐怖に感じたら、別れた方がいい』って」

── お母さん、経験者だからね。

「はい(笑)。で、やっぱり恐怖に感じて、別れたいって言ったら、『なんで! こんなに好きなのに!』って言われちゃって」

── 怖い怖い。

「本当に怖かった。完全に別れるまでかなり時間がかかりましたよ」
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セックスは「愛してる」って眼差しがあればいい

── そういう人がいるんですね〜。みなみさんが好きになる人って、どういうタイプが多いんですか?

「だいたいは直感なんですけど、それでも、周囲の人に慕われている人格者で、才能のある人が好き(笑)」

── それは女子がみんな好きになるやつですよ(笑)。そういう人たちって無茶苦茶モテるじゃないですか。どうやって振り向かせるんですか。

「駆け引きは面倒くさいから、私は嘘なしでいきますね。自分からグイグイいくほうです」

── でもグイグイいったら男はなんかそんなに落ちないって言いますけど。

「簡単に体を許さないってことですね」

── あ! なるほど。グイグイいって寝たら、ただのセフレになっちゃうって言いますもんね。

「そう、そこはギリギリまで我慢です(笑)」

── みなみさんはセックスの相性は気にしますか? 女性に聞くと、形の相性があるっていう人が多いんですよ。

「大きすぎるのはダメですけど、それ以外は女性側が引き締めれば合わせられるから。鍵穴みたいに合ってくるものだと思います」

── へえ〜、それってあるんですね〜。じゃあ、男性がセックス上手くなくても大丈夫ですか。

「うん、ただ慈しむだけでいい。セックスは上手い下手というよりも、自分を愛しんでくれる、愛してくれる眼差しだけで気持ちいいんです」

── それは男子が勇気をもらえる言葉です。今日は波乱万丈なお話を聞かせてくれて、本当にありがとうございました。

【林さんから〆のひと言】

これを読んでくれている方、どんな女性だろうと思っているはずですが、とても正直で明るくて、みんなに愛される雰囲気でして、やっぱりそういう方だと周りに良い大人が集まってくるし、強く生きていけますよね。脚本、期待しております!

■ bar bossa(バール ボッサ)

ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間 / 月~土 19:00~24:00
定休日 / 日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185

● 林 伸次(はやし・しんじ)

1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CD ライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセー「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。最新刊「なぜ、あの飲食店にお客が集まるのか」(旭屋出版)は、林さんが「このお店はすごい! 」と感じた飲食店のオーナーに自らインタビュー取材。繁盛店の秘密に迫ったドラマティックなビジネス書です。

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