2017.06.27
日本にふたりだけ?「カタモノ名人」と呼ばれる匠
- CREDIT :
監修・写真/冴木一馬 取材・文/岩佐史絵
というわけで日本のカタモノ名人といえばこの人、という秋田県は大仙市の北日本花火興業 代表取締役 今野義和さんに、カタモノの見どころやカタモノとはなんぞや、というお話を伺いました!
ユニークなカタモノ花火、じつは超高度な職人技でした
ふだんの大曲駅は、実にのどか。ですが、花火大会があるときにはこの駅も街も、様相が一変します。大曲といえば花火業界では年に一度の大舞台。毎年8月に競技会が開催されますが、日本全国の花火師にとってここは新作を披露し、その粋を競い合う場なのです。
そんな“花火の街”大曲に、カタモノの第一人者と言われる今野義和さんを訪ねました。
もともと創造花火が人気の土地柄だったことも手伝って日本独自の丸い花火にこだわりなく、新しい花火に挑戦するのも抵抗がなかったといいます。
今野さんがカタモノ作りを始めたのは、単に依頼があったから。とはいえ、カタモノは真円の花火と違って「どの角度から見ても同じように見える」という条件を満たすことができません。せめて上下だけでもきちんと見えるよう試行錯誤したそう。「やっこ凧と同じ原理ですよ」とのことですが、具体的な作り方は企業秘密。
が、たとえばシンプルに見えるスマイルマークでいうと、ただ丸い花火の中に色の火薬(星)をスマイルマークのカタチに配列すればいいのかというとそうではなくて、「火薬の飛距離は外側のほうが広がるからね、そこは計算して配置しないといけません」と教えてくれました。
実はかなり手間がかかっているのです。
カタモノ職人はサーカスでいえば“ピエロ”の存在?
我々は花火の真下にいるからね」。なるほど!だからカタモノ花火は同じ図案でも複数回、続けてあげることが多く、「3回もあげたらひとつくらいちゃんと見えるんじゃないの」という、計算しつくしてもなお完璧にするのが難しい花火なのだそうです。
では、そんな難しい花火になぜ挑戦するのか。「カタモノって、絵で表現するものだから小さな子どもから大人まで、誰もが楽しめるものです。同心円を描く日本の伝統花火にはわびさびがあるけれど、カタモノには笑顔がある。サーカスでいえばピエロの役割ですね。ときどき現れて、人々を笑顔にする」。
「前にもある大会であげてみたことはあるけれど、今年は“ユニークなおじさんの顔”がお目見えしますよ」と、にやり。……な、なにそれ?見てみたい!!と思ったかたは、秋田市夏まつり雄物川花火大会と全国花火競技大会へ、ぜひ!
●今野義和さん
● 今野義和さん
北日本花火興業 代表取締役、4代目社長。若いころから創造花火への憧れがあり、社長自ら率先して制作。この道30年以上、カタモノの制作の第一人者となる。秋田県大仙市生まれ。
● 冴木一馬
写真家。世界を股にかけ花火を撮り続けて30年。撮影だけでなく、花火の歴史や民俗文化をも調査・研究し、花火のことならなんでもござれ、花火師の資格まで有する日本唯一の“ハナビスト”。山形県出身。http://www.saekikazuma.com/
写真集『花火』光村推古書院刊
写真集『花火』光村推古書院刊
A4判 オールカラー96頁
ソフトカバー 本体2400円
ワンシャッター、多重露出をおこなわず、花火本来の姿をとらえることにこだわりぬいたハナビスト冴木一馬による花火写真集。