2017.06.20
昭和のいい女が愛したあの店、あの場所【2】向田邦子の場合
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文/川田剛史 撮影/小澤達也(Studio Mug) イラスト/Isaku Goto
脚本家、作家だった向田邦子さんは没後30数年を経ていまなお新しいファンを増やし続けています。その理由は、彼女のライフスタイルが昔も今も女性の憧れだから。高度経済成長期にまだまだ珍しかった海外のブランドをさっそうと着こなしたり、料理の知識を誌上で披露したり。
文芸の世界のみにとどまらない彼女の生活そのものが、多くの人の注目を集める魅力的なものでした。いまで言うなら、ファッションセレブとカリスマ料理家がジョイントしたような存在でしょうか。そう聞けば、平成女子も気にならずにはいられますまい。
こんなところからも彼女のグルメぶりが伝わってきませんか? 『向田邦子の手料理』(講談社)によれば、引き出しの中には「鶯宿梅」の万玉(福岡)、「瓢亭」の梅甘煮(京都)、「勘場蒲鉾店」のつけあげ(鹿児島)などなど、多くのグルメ情報が収められていたそうです。
気配りの人が選んだ南青山の和菓子
◆ 菓匠 菊家
水羊羹は通常、春から店頭に並びますが、「うちでは日にちは決まっていなくて、納得のいく桜の青葉が手に入るようになったら作り始めます」と女将の秋田隆子さん。
なめらかな口当たりと、ふるふる揺れる触感がウリなれど、茶席で懐紙に乗せても崩れないという絶妙の固さ加減。
こちらは寒天を使った干菓子で、カラフルな色使い、シャリッとした表面と柔らかい中身の食感の対比がユニークな逸品です。
それぞれの色ごとに味が異なり、梅酒、ハッカ、葡萄酒などの風味が楽しめます。
今なお、お店には向田ファンが彼女の愛した味を求め、訪れるそうです。平成女子をお店に案内するもよし、手土産に渡すもよし。ただ、「向田邦子って知ってる?」と一言添えるのをお忘れなく。
■菓匠 菊家
菓匠 菊家
住所/東京都港区南青山5-13-2
営業時間/平日9:30~17:00、土曜9:30~15:00
お問い合せ/☎03-3400-3856
※売り切り次第閉店