2025.05.01
第5回 常盤貴子 【vol.02】
美しい人、常盤貴子。「連ドラをやり続けて、ふと自分の引き出しが空っぽになっていることに気づいた」
大人の女性の美しさに迫るグラビア連載「美しい人」。第5回目に登場いただくのは常盤貴子さんです。かつて連ドラの女王とも呼ばれいくつものトレンディドラマでヒロインを演じた常盤さん。今も幅広く活躍する一方、旅や日々の暮らしを自在に楽しむ姿が支持を得ている常盤さんの「美」の秘密とは?
- CREDIT :
文/渡辺朋子 写真/野口貴司 スタイリング/𠮷村結子 ヘアメイク/板倉タクマ 編集/森本 泉(Web LEON) プロデュース/Kaori Oguri

第5回ゲストとしてご登場いただいたのは常盤貴子さんです。vol.01(こちら)では、トラブルまで愛しいという常盤流「旅」の魅力についてお話しいただきましたが、今回は女優としてのお仕事にかける思いを伺いました。



【interview 02】
『悪魔のKISS』のオーディションの時に、自分の中で覚悟を決めた
常盤貴子さん(以下、常盤) 芸能界への興味というよりも、ちょっとしたバイト感覚というんですかね(笑)。ほかのところにスカウトしていただいていたにもかかわらず、なぜかスターダスト(今の事務所)しか頭になくて、実際に応募したのも、当然スターダストだけだったんです。
──それはなぜですか?
常盤 わからない(笑)。どういう事務所で、どういう方がいらっしゃるかも知らなかったんですけど。そういう勘で生きているところは昔から変わらなくて(笑)。

常盤 もともと私はメイクページのモデルさんとかを考えていたんですけど、マネージャーさんたちがだんだん女優業のほうへ引っ張っていってくれて。当時はなんでそっちなんだろう? と不思議に思うことはありました(笑)。「次、この仕事入りました」と言われて現場に行くとセリフがひと言もない時もあって。何もしゃべらないのに何のためにマイクをつけているんだろう? と思ったり(笑)。初めての体験ばかりでいつしか夢中になっていました。

常盤 でも意外とそこは淡々としていたかもしれないですね。それよりもあのドラマでは手話を覚えなければいけなかったので、その予習復習が受験勉強より大変だったという記憶があります。共演の豊川(悦司)さんたちにもご迷惑をおかけするわけにはいかないと思うと、撮影でどんなに遅く帰ってきて、寝る時間が少なくなっても、次の日のセリフは絶対覚えないといけないわけで。どんな状況でも自然にセリフが言えるところまで持っていかなきゃいけないという自分が勝手に作り出したプレッシャーのほうが大きかったので。だから、逆に外の声は全然聞こえていなかったですね(笑)。

常盤 それで言うと、その前に『悪魔のKISS』というドラマで、それこそ本当に全然無名なところから主役級の役をやらせていただいたので、そっちのほうが世にちゃんと名前を出してもらったという意識は強かったかもしれないですね。

常盤 それは『悪魔のKISS』のオーディションの時に、自分の中で覚悟を決めた感じですね。ちょうどその頃、短大を卒業して就職するか、この世界で生きていくかという選択を迫られた時で。事務所の社長に「働くのは3年後でもできるから、まずはこの世界で頑張ってみれば?」と言っていただけたことで自分の中で勇気が持てて、オーディションも受けることにしたんです。そこで一度心を決めてしっかりやらなきゃと思ってから、その意識は今までずっと変わりません。
── そこから「連ドラの女王」と言われるほど、主演ドラマを何本もやられていましたが、当時のご自身を振り返ってみるといかがですか?
常盤 すごく走ってた感じですかね。たぶん、ずっと走って、それである時力尽きちゃったんでしょうね(笑)。

常盤 それがレスリー・チャンさんと共演させていただいた映画(『もういちど逢いたくて/星月童話』)をやる前のタイミングだったんです。それまでは自分も楽しかったし、吸収する時期だったからやれていたんだけど、やり続けているうちに、ふと自分の中の引き出しが空っぽになっていることに気づいて。このまま続けてもただ惰性でやっていくだけで、そんなことに意味があるんだろうかというところにぶち当たったんです。

── それもすごい話ですね。
常盤 社長がレスリーをどれだけ大物かということを知らずに問い合わせをしちゃったというところから始まって(笑)。当時、日本のトレンディドラマが香港でも人気で、皆さんが私を知ってくださっていたり。いろんな偶然とか運やタイミングが重なって実現したんですけど、本当に行き当たりばったりで(笑)。

常盤 それはもう人との出会いですね。この世界の人たちって、みんなおもしろいじゃないですか。今日の撮影も、みんなで朝から熱海まで来て、「何、撮ってんだろうね」「これおもしろくない?」「いいね、いいね!」って言いながら盛り上がって。結局、みんなで一緒にいると楽しいよねみたいな(笑)。そういうことを自然に楽しめる人たちと、それができない人たちって絶対いると思うんです。それが楽しめる人たちってやっぱり同じ感覚を持ってると思うから、一緒にいて楽しいしうれしいし、そういう人にどんどん会いたくなっちゃうからだと思います。
※vol.03に続きます。

● 常盤貴子(ときわ・たかこ)
神奈川県生まれ。1991年に女優デビュー以来、「愛していると言ってくれ」、「Beautiful Life」など数々のヒットドラマのヒロインを演じる。2004年に『赤い月』で第28回アカデミー賞優秀主演女優賞、2015年には『野のなななのか』で第29回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。ほかにもドラマ「カバチタレ!」、「天地人」、「まれ」、「やすらぎの郷」、「グッドワイフ」、「御上先生」、映画『間宮兄弟』、『魂萌え!』、『20世紀少年』、『花筐/HANAGATAMI』、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』、舞台『マクベス Macbeth』、『王将-三部作-』など出演作多数。現在、KBS 京都・BS11・TOKYO MX「京都画報」(ナビゲーター)、NHK E テレ「おとな時間研究所」(司会)に出演中。

俳優・常盤貴子さんによる撮り下ろし・書き下ろしのフォトエッセイ。常盤さんの衣食住を紹介しています。フォトグラファーの撮影によるカラーグラビアも一部盛り込みつつ、エッセイ部分はすべて常盤さんが撮影した写真で構成。また、文章もご本人によるもので、飾らない人柄があらわれた、時にクスッと笑える内容に。「暮らし」「おしゃれ」「美容と健康」「心の栄養」「仕事と私」の5つのテーマを7万字超の文章で綴っており、読みごたえもたっぷりです。
5月16日発売 主婦と生活社刊
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