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2024.12.27

壊れているのではなく、継がれている──葛藤や欠点も魅力にする、稲木ジョージの金継ぎ哲学

金継ぎをジュエリーで表現したKINTSUGIは世界で多くの人を魅了し続ける。しかし、装飾品でなく伝えたいのはその哲学──“金継ぎ哲学者”という新たな役割を担った稲木ジョージがその“次”と使命をお気に入りの場所「ザ・リッツ・カールトン東京」の『ザ・バー』で語った。

CREDIT :

写真/Kazuki Maeda(マエティコ) 取材・文/渡辺 豪(LEON) 協力/ザ・リッツ・カールトン東京

稲木ジョージ (ミラモア創設者&金継ぎ哲学者)
世界中を見渡しても稀有な金継ぎをモチーフにしたジュエリー”KINTSUGI”コレクションを展開する「ミラモア」。その創設者であり、金継ぎ哲学の伝道師でもある稲木ジョージ氏が来日、ブランド5周年の振り返りとこれからについてLEONに語った。
── ミラモアの5周年が終わり、次は6周年、どういった一年でしたか?

稲木ジョージさん(以下、稲木) 2024年は、5周年の節目として初めて六本木ヒルズでのポップアップを行いました。イベントなどに立つ機会は少ないのですが、多くのお客様とお話をする機会があって、良い経験になりました。

── 六本木ヒルズのヒルズボックス(蜘蛛の像がある隣のポップアップスペース)での売上が六本木ヒルズで歴代2位の実績だったそうですね

稲木 ありがたいことに、毎日多くの方にお越しいただきました。売り上げも大切ですがやはり、いままでミラモアを知らなかったお客様から多くのうれしいお声をいただいたのも刺激になりました。
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── 例えば、どういった出会いがあったのでしょうか。

稲木 ミラモアのKINTSUGIのコレクションに対して深い理解とシンパシーをもってくれている方が本当に多くて。自身の悩みやコンプレックスと金継ぎの不完全でもよい美しさ、肯定し生きていくパワーを皆さんが重ね合わせてくれているのを目の当たりにしました。

── 修復していく過程とその形がまさに光り輝く個性=“金”であるということを皆さんが自身に置き換えられているんですね。

稲木 はい。なかでも印象的だったのは、30歳まで生きることができない難病を宣告をされた方の来店でした。30歳まで生きることができた記念としてKINTSUGIのジュエリーを自身へのプレゼントに購入してくださって……胸が熱くなりますよね。その場にいる、スタッフも号泣してしまって。多くの方の人生に金継ぎの哲学が広まって活かしてもらえているのであれば、これ以上のことはありません。
稲木ジョージ (ミラモア創設者&金継ぎ哲学者)
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── 最近は、特に金継ぎの哲学を中心に執筆もされていますね。

稲木 はい、ミラモアのサイトで金継ぎと恋愛観についてコラムを書きました(ウェブサイト内コラム:絆を継ぐ参照)。表層的な美しさや華やかさに惹かれるのは当然ですが、人は困難や醜い部分に直面すると放置したり諦めたりしてしまいます。人間関係にも許しや修復をもって、強くなる絆があると書いたのですが、これは多くの方から良い反響をいただきました。

── 不完全であることの美しさ、人の精神性を金継ぎに見立てたお話ですね。

稲木 そうです、“壊れているのではなく、継がれている”というコンセプトをミラモアでも掲げていますが、特に恋愛と金継ぎ哲学は置き換えやすく親和性もあるのではないでしょうか。完璧な愛、なんてものは存在しません。誰もが、弱さや欠点をもっていて、代わりのきかない存在ですから。不完全ななかにある愛嬌や、かわいらしさ、それこそが個性であり愛されるべきものではないのか、と考えています。
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── 金継ぎの哲学は生きるための多くのことに応用できそうです

稲木 先日、金継ぎの哲学を掘り下げ、さらに多くの分野に活かしていきたいと考え、“金継ぎ哲学者”という肩書きを新たに加えました。作品としてのジュエリーがあり、金継ぎの哲学がともにあって完成する。そもそも、ジュエリーを作るだけが目的ではなく、伝えたいものがあってこそのジュエリーなので。

── あくまでコンセプトありきということでしょうか

稲木 いま、世の中には多くのデザインが溢れていますが、デザインだけで終始してしまうものも多くありませんか。でも、例えばカルティエのトリニティには素敵な逸話がありますよね。ジャン・コクトーがエディット・ピアフに3つの想いを届けたくて、あのデザインになった……コンセプトを基にしたデザインに行きついてストーリーが生まれる、そうあるべきだと考えています。
稲木ジョージ (ミラモア創設者&金継ぎ哲学者)
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── ジュエリーも稲木さんの考える哲学を伝えるための手段のひとつだ、と

稲木 その通りです。伝えたいことがあるから、そのアウトプットになる。ミラモアのジュエリーは葛飾の自社アトリエでハンドメイドで手掛けられておりクオリティは素晴らしいものであると皆さまにお約束できます。モノづくりの側面ではそういった日本の手作業の良さを周知していきたいという気持ちはありますが、本質はさらに奥深くに忍ばせているのです。

── 金継ぎ哲学がすべてのベースにあるのですね

稲木 はい、ですから金継ぎ哲学者であるという自覚と責任をもって名乗ろうと思い。ニューヨークの自宅でクリエイティブについてどう伝えようか考えていた時に突如使命感に襲われて「よし、金継ぎ哲学者になろう!」と決めました。友人や、社員たちは当初戸惑っていましたが(笑)、ありきたりのことはやりたくありません。自分自身のスタンダードを貫いて、より多くの方たちに金継ぎ哲学を周知していきたいと考えています。
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── 通常のブランド、とは一線を画すアプローチですね

稲木 普通のことはしたくないので(笑)。ミラモアはモノでもデザインでもなく哲学を伝える“フィロソフィーブランド”として、私のアイデアを形にし、伝播させていきますよ。

── 多くのコンテンツが生まれそうですね

稲木 すでに公開されていますが、ミラモアのウェブサイトとYouTubeチャンネルで『壊れているのではなく、継がれている』という対談企画も始めました。最初の対談相手は、長年の友人であり金継ぎ哲学を理解してくれているマリウス葉さんです。彼が日常の苦悩、葛藤などをどう乗り越えてきたのか……そこにどう金継ぎの哲学が活かされてきたのか……私も彼も気取らず赤裸々にそれぞれの過去の話をしたり、と……まあ、観てください(笑)。

── 稲木さんの2025年は?

稲木 さまざまなアイデアがありますが、4月には改めて六本木でコンセプチュアルなポップアップイベントを行います。新しいデザインコードやストーリーもできていて、そのなかのいくつかにレザーアイテムや、ミラモア初となる銀製品を使ってのコレクションもあります。対談シリーズもすでに2名を撮り終えていて、2025年1月から順次公開していきます。さまざまな側面で、皆さまに金継ぎの世界観をお伝えできればと考えています。
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インタビューと撮影を行った「ザ・リッツ・カールトン東京」の『ザ・バー』。「天高で見晴らしも良い、ほかにない空間。サービススタッフの皆さまのホスピタリティも素晴らしく、大切な方とのミーティングなどで良くお邪魔しています」
▲ インタビューと撮影を行った「ザ・リッツ・カールトン東京」の『ザ・バー』。「天高で見晴らしも良い、ほかにない空間。サービススタッフの皆さまのホスピタリティも素晴らしく、大切な方とのミーティングなどで良くお邪魔しています」と、稲木氏いわく。
稲木ジョージ (ミラモア創設者&金継ぎ哲学者)

● 稲木ジョージ (ミラモア創設者&金継ぎ哲学者)

ニューヨークのマンハッタンとアップステイトを行き来しながら独自のクリエイションに常に磨きをかける。好きな食べ物はユッケと白ご飯。月二回のペースで投稿しているコラムや対談シリーズは下記ウェブサイトかYouTubeで視聴可能。
HP/https://milamorejewelry.com/
YouTube/milamore4135
Instagram/@georgerootnyc

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