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2024.04.06

人の心を“つぎ、つなぎ、かがやく──”ミラモアの5年を稲木ジョージが語る

日本の伝統修復技法“金継ぎ”に着想を得たジュエリー“KINTSUGI”は世界でも類のないコレクション。この4月に5周年を迎える「ミラモア」の稲木ジョージがNYから来日した。5周年のイベントを前に5年の月日を振り返り、未来のヴィジョンを聞いた。

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写真/前田 晃(maettico) 文・編集/渡辺 豪(LEON)

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日本の伝統修復技法“金継ぎ”に着想を得たジュエリー“KINTSUGI”は世界でも類のないコレクション。独創的で着実に支持者を増やしこの4月に5周年を迎える「ミラモア」のCEO兼ブランドヴィジョニアの稲木ジョージがNYから来日した。5周年のイベントを前に5年の月日を振り返り、未来のヴィジョンを聞いた。

── 金継ぎをジュエリーに見立てたKINTSUGIコレクションは、発表されてから日本だけでなくニューヨークでも人気ですね。誕生秘話を教えてください。

稲木ジョージさん(以下稲木) ブランドを創設したのは2019年ですが、KINTSUGIのジュエリーを思いついたのは2017年です。海外の方が金継ぎと仏教のフィロソフィーを語っているプログラムを見て閃きました。デザイン上の金継ぎだけでなく、哲学も感じてもらえるものにしたかった。それがKINTSUGIの生まれたきっかけです。
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── ジュエリーとしてではなく、ストーリーを感じてもらえるものを作りたかった、ということですね

稲木 はい、2021年に行われた東京パラリンピックの閉会式のスピーチで金継ぎのことが触れられましたよね。“誰もが持つ不完全さを受け入れ、隠すのではなく大切にする”という内容でした。これは、すべての人にいえることであり、人は傷つきながら成長しますが、傷すらも肯定し、前向きに進んでほしい、そんな気持ちを込めたのです。
稲木氏のパーソナルピースであるKINTSUGIバングルと、KINTSUGIヴィクトリアフロートパヴェダイヤモンドリング。金継ぎを思わせる18金イエローゴールドのラインにダイヤモンドをあしらった特別なアイテムだ。
▲ 稲木氏のパーソナルピースであるKINTSUGIバングルと、KINTSUGIヴィクトリアフロートパヴェダイヤモンドリング。金継ぎを思わせる18金イエローゴールドのラインにダイヤモンドをあしらった特別なアイテムだ。
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── 稲木さんが成長するきっかけとなった自身の金継ぎ的ストーリーをうかがってもいいですか?

稲木 私の場合は、幼少期にコンプレックスがありました。家族との距離感がつかめず、愛情が何かもわからない時期がありました。家族とのコミュニケーションができないと、当然社会との関わり合いも難しい。人を全く信用できない辛い時期が結構長く続いて……。それが私にとっては逆境ともいえる時代でした。

── いまは、多くの友人や仲間がいてコミュニティを築かれているように見えますが、どのように逆境に臨んだのでしょうか。

稲木 辛い時期でしたが……自分がこうしたい、ということを伝える際に熱量をもって相手に接することで、ポジティブな輪ができることを徐々に実感しました。エネルギーや気持ちは伝播していくんですね。そうするなかで、自分を徐々に信じることができ、他者への信頼もできるようになっていきました。いまも、共感してくれる人々に対してただジュエリーをモノとして勧めるのではなく、コンセプトもともに自分のストーリーを身に付けてもらい、体験してほしい、そういった気持ちで取り組んでいます。
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── KINTSUGIだけでなく、ミラモア自体がコンセプチュアルなジュエリーなのですね。

稲木 すべてのコレクションに同様の物語や概念をもたせています。なぜ、稲木ジョージが作るのか、そこにすら意味があるんです。すべて、私の実体験、インスピレーションから作ったものですから。

── コンセプトメイカーが稲木さんの本質ということですか。

稲木 デザインで真新しいものなど、もはや必要ないと思っています。世の中にはすでにものがあふれていると思いませんか? しかし、伝統に目を向けるとすでに知られていて、認められている素晴らしいものがたくさんあり、その魅力を再編集、再発見していく作業に面白さを感じています。金継ぎも修復技法としては認知されていますが、装飾品としては未知。根本の概念をジュエリーとして再編集し、新しい存在にする。「古い価値観を破壊し、新しい価値観を作る」ことをモットーにしていますが、これがまさに一例です。
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伝統文化のインプットとして陶芸にも取り組む。生命を感じさせる曲線的なフォルムが、稲木氏の真骨頂。リングは、日本の祝い事に使われる紅白から着想を得たKOHAKUリング。
▲ 伝統文化のインプットとして陶芸にも取り組む。生命を感じさせる曲線的なフォルムが、稲木氏の真骨頂。リングは、日本の祝い事に使われる紅白から着想を得たKOHAKUリング。
── 伝統的で既知の美意識から、新しい美意識を生み出すという解釈でしょうか。

稲木 はい。ほかにも異なるチェーンを組み合わせた「デュオチェーン」や、ダイヤモンドを点字にした「点字ダイヤモンド」がありますが、すでに多くの人に認知されているものにアイデアを加えて未知のものを作っています。皆知っているが、見たことのないデザインを理想に……。それこそが、ユニバーサルデザインであり、私の表現したいものなんです。
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異なる数種類のチェーンと“ご縁”を基にデザインした“EN”サークルをミックス。旧知のものでもデザインすることで新しく。このKINTSUGIデュオチェーンは、そんな稲木氏の哲学が込められている。
▲ 異なる数種類のチェーンと“ご縁”を基にデザインした“EN”サークルをミックス。旧知のものでもデザインすることで新しく。このKINTSUGIデュオチェーンは、そんな稲木氏の哲学が込められている。
── 伝統を見つめながら未来志向もあわせもつ稲木さんですが、創設からの5年間を振り返っていかがでしょうか。

稲木 まだ5年なんですよね。あまり人の話は聞いてきませんでした(笑)。自分のヴィジョンがあるのに、ほかの人のヴィジョンを気にしてしまうとブレますから。CEOでありブランドヴィジョニア(ブランドの方向性を決定する責任者)でもあるので。創業時は、私の世界観に懐疑的な意見もありましたが、人からどうこう言われても自分がブレなければそのセンスがいつしかスタンダードになる。改めて自分の力を信じることができた5年間でした。
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── あくまで自分を信じて突き進んでいく、と。

稲木 はい、しかし当然パートナーは大切にしていますよ。ミラモアにはハウスアトリエがあるのですが、アトリエ長の日笠さんとの出会いは大きかったですね。日本のモノ作りは本当に素晴らしく、ミラモアのクオリティは彼に支えてもらっています。

── ミラモアの売りである日本の職人が作っている点もさらにパワーアップしそうですね。今後の展望を聞かせてください。

稲木 書道を教えてくれている先生から自身のことを「経験がないからこそ自由さがある」と言われました。より自由に、縛られず活動していきたいですね。ジュエリーのデザインコードを使って、今後はさらにアイテムの幅を広げていきたいと考えています。KINTSUGIのラインを生かしたアイウエアや、デュオチェーンと組み合わせた時計など……。共感いただいた皆様には必ず寄り添える、パートナーとなれるようなアイテムを増やしていきたいですね。
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伝統主義と前衛的価値観。繊細さとダイナミズム。対局の美意識が交わりながら魅せるミラモアのジュエリーは、刹那を強く生きる人々を美しく彩る。これからも確実に進化するミラモアと5年現在の世界観。そんなミラモアをフルに感じることができるポップアップイベントで、さらにそのフィロソフィーとクオリティの高さを感じてみてはいかがだろう。

■ ミラモア 六本木ヒルズ ヒルズボックス ポップアップイベント

日程/4月6日(土)~4月29日(月)
住所/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ2F ヒルサイド ヒルズボックス
営業/11:00~20:00、21:00(金・土・祝前日)
HP/www.milamorejewelry.com

稲木ジョージ (いなき・じょーじ)

● 稲木ジョージ (いなき・じょーじ)

日本とフィリピンにルーツをもち、現在はニューヨーク在住。2019年に「Designed in New York, Handcrafted in Japan」をコンセプトにミラモアを設立。ジャパンメイドならではの高い技術力と、ニューヨークで得た自由な感性で生み出されるジュエリーに支持者を増やす。「ミラモアのジュエリーを身に着けることで、着用者自身の物語をより魅力的に紡いでほしい」という想いをすべての作品に込めている。@georgerootnyc

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