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2023.01.16

玉木宏「自分の代わりはすぐにいるという危機感は常にもっています」

『COUNT 100』(WOWOW)で初めての監督業に挑んだ玉木宏さん。身体を鍛え、心を整え、仕事でもプライベートでもストイックに高みを目指す、強靭なメンタルはいかにして作られたのでしょう? 自分らしくカッコよく年を重ねる秘訣を教えてもらいました。

CREDIT :

文/花村扶美 写真/トヨダリョウ スタイリング/上野健太郎 ヘアメイク/渡部幸也(riLLa) 編集/森本 泉(LEON.JP)

俳優だけでなく、歌手、声優、ナレーター、カメラマンなどジャンルを超えたフィールドで才能を発揮している玉木宏さん。プライベートでも格闘技、ボクシング、ダイビング、水泳、釣り、雪山登山、スニーカー収集など多彩な趣味を持って活き活きと過ごす姿は、まさにカッコいい大人を体現する存在とも言えそう。

そんな玉木さんが、2月11日から配信スタートの『アクターズ・ショート・フィルム3』(WOWOW)で監督・脚本業に挑戦しました。玉木さんが作り上げたのは、意外にも小さい頃から慣れ親しんできたという藤子不二雄作品に影響されたダークファンタジー。自身初の監督作品への熱い思いとともに、カッコよく年を重ねる秘訣を教えてもらいました。

「外」から俳優を見たら、きっと生かせるものがあると思って

── まずは監督をつとめたWOWOW『アクターズ・ショート・フィルム3』の『COUNT 100』の話から。もともと監督業に興味はあったのですか?

玉木 僕は趣味でカメラをやっているんですが、撮られる側が撮る側の気持ちを分かれば、また違うものが見えてくるのではと思って写真を始めたところもあるんです。今回も同じで、普段は俳優として「中」にいるけれど、「外」から俳優を見てみたらきっと生かせるものがあるだろうと漠然と思っていました。

── やはりベースはあくまで俳優だと。

玉木 もちろん。でも監督業もすごく楽しい作業でしたし、いい景色をたくさん見させていただきました。

── どのような経緯で監督のお話があったのでしょう?

玉木 今回はシリーズ第3弾なんですが、第2弾の監督をした(永山)瑛太くんと会った時に、彼が「興味があるんだったら話しとくよ」と言ってくれて(笑)。
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── その後、監督のオファが来た時は、どのような気持ちでしたか?

玉木 とてもうれしかったです。でもそれと同時に何も考えていなかったイメージや脚本、キャスティングなど、考えないといけないことが一気に押し寄せて来たという感じでした。

── 玉木さんにはリアリストのイメージがあるのですが、今回の『COUNT 100』はSF的な作品だったので驚きました。SFやファンタジーは玉木さんにとって、日頃から身近なものだったのですか?

玉木 子供の頃から藤子不二雄さんの作品が大好きで見ていたので。SFというジャンルだけが好きというわけではないんですが、結果として鼻に触れるともうひとりの自分が生まれるという発想につながったのは、藤子不二雄作品の影響で間違いないです(笑)。

── パーマンですね(笑)。かなりユニークなストーリーになりました。

玉木 今回は脚本を書くにあたって、昔から仲良くしているライターさんのやり方を参考にしました。それは単語やキーワードなど、自分の頭の中にあるものを片っ端から書き出していって、それを頼りにインタビューを進めていくという方法だったんですが、そのやり方だと自分が伝えたいメッセージを浮き彫りにできるのではないかと思ったんです。

そして思い浮かんだ単語を書き出していったら、「俳優」「二面性」「ボクシング」「パラレルワールド」など、次々とキーワードが出てきて、そのワードをくっつけてひとつのストーリーにしていきました。
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嘘でもいいから「大丈夫」と言える強い気持ちを持って臨まないと

── おもしろい作業ですね。林遣都さんが演じる主人公の光輝(みつき)はプロボクサーという設定です。玉木さんがボクシングをやっていらっしゃることが作品にも生かされたのでは?

玉木 ボクサーの方たちと接する機会も多いので、どういう生活をしているかというのは今回の人物設定に生きてきたと思います。

── 例えば?

玉木 プロボクサーの中には、昔から生活を支えてくれている彼女や奥さんがいる方が多かったりします。なので今回も、光輝には13年間つきあっている彼女がいて、福岡から一緒に上京して、そばで彼のことを応援している。だけど、どうしようもなくなってしまう時もあるという、フィクションの中にリアルを詰め込んでみました。間近で見てきたからこそ描けたのかなと思っています。
── 台本も読ませていただきましたが、ト書き(セリフ以外の登場人物の行動や場面の説明が書かれた文)がすごく丁寧に書かれていました。やはりご自身が俳優だからこその細かい目配りなのかと。

玉木 全体を通してセリフが少ない脚本だったので、スタッフにも自分の頭の中にあるものを共通認識として持ってもらわなければいけないという気持ちから、ト書きを多くしました。ただ“林遣都なら大丈夫”という根拠のない自信もありましたけど(笑)。結果、遣都くんは素晴らしい塩梅で演じてくれたと思います。

── 実際に監督を経験してみていかがでしたか?

玉木 大変でした(笑)。 もちろん楽しい中での大変ですけど。役者が現場に立つまでの環境を整えるのにこれだけの打ち合わせを重ねて、最後の決定権がすべて監督に来るんだというのがよくわかりました。そして嘘でもいいから「大丈夫」と言える強い気持ちを持って臨まないと監督業は成立しないということを学びました。

── 監督を経験されたことで、今後のご自身の演技に影響はありそうですか?

玉木 遣都くんは頭の回転も速いし真面目な性格ということもあって、現場で要求されることをすぐに察して、全力で臨んでいる感じがすごく伝わってきたんです。俳優側として、監督が望むことを「はい、わかりました」と応えられる肉体と精神の大切さを遣都くんを通して改めて思いました。
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体を鍛えることで精神も元気になるし、またいい仕事ができる

── 玉木さんも日頃から体を鍛えていらっしゃるので、「肉体」に対する強いこだわりを感じます。玉木さんの中で肉体と精神はどのようなバランスにあるのが理想なのでしょう?

玉木 僕の本業は俳優なので自制しながらトレーニングをしていますが、ジムなどで体を鍛えている時は、ひとりの人間として自分を解放できる時間でもあるんです。普段の自分と仕事をしている自分を乖離できるというか、それがあるかないかでは全然違う結果に繋がっていくと考えています。

どちらかが崩れてしまうとバランスも崩れてしまいます。体を鍛えることで精神も元気になるし、またいい仕事ができると思っています。
── 鍛えられた肉体は自分を裏切らないと思いますか?

玉木 そうですね。できないことをできるように見せるのはすごくストレスなんです。だから、いざ演じるとなると、わかっている人のほうが肉体を自由に動かせるし、精神状態も追い込まれない。肉体を鍛えることは無駄ではないと思います。

なので、今回のキャスティングもボクシングを継続的にやっている人を頭の中で思い浮かべて遣都くんを選びました。やはり、本当にやっている人は嘘をつかないというか、やっていなければ表現できないところもあった。そういう意味でも肉体を鍛えていれば裏切らないと感じました。

── 玉木さんはあまりにもストイックなイメージがあるのですが(笑)、どうやったらそこまで自分を管理できるのでしょう?

玉木 いやいや、僕にも弱いところはたくさんあります(笑)。例えば、今ハマっているブラジリアン柔術で言うと、毎日練習している人がいる中で「昨日は仕事で遅かったから今日は行くのをやめよう」と、つい怠けて行かなかったりする日もあります。でも、そんな中、僕と同じように仕事があっても練習に来ている人たちはいて、彼らのことを思うと、悔しくなるんですよね(笑)。
── 負けず嫌いですか?

玉木 それもあると思います(笑)。他の人が頑張っているのに自分だけ置いていかれるのは悔しい。できればその人たちより上にいきたいと思っています(笑)。
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趣味がない人間だったら、今頃どうしていたんだろうと思う

── 今作を観て、「自分の人生とちゃんと向き合わないと取り返しがつかなくなることもある」というメッセージも受けました。実際に玉木さんご自身も「自分の人生から逃げ出してはいけない」と感じているのでしょうか?

玉木 今回のテーマにもなっていますが、常に感じています。例えば俳優として信頼を裏切るような大きなミスをしてしまったら、自分の代わりはすぐにいると思っています。それは社会人の方も仕事で同じような出来事はあると思うんですけど、僕も気を抜いたらミスをしてしまうかもしれないという危機感は常に持っています。でもそこから逃げてはいけないんです。

── 玉木さんが悩んだり迷ったりした時、どのように対処してモチベーションを上げてきたのでしょうか?

玉木 もともと僕は悩んだ時に人に相談するタイプではないんです。悩みといってもすぐ答えが出ないものもあるし、少しずつ改善して無くしていけばいいものもあるので。俳優という職業は一回芝居上でミスをしても、次の作品でまた新たに生きなおせるものだと思うんです。

だから、失敗してもそれを糧に成長していけばいいと、自分の中では切り替えるようにしてきました。ただ、今の自分の状態を把握できていないと、前には進めないものだと思います。今回の作品で描いたものも、自分自身へのメッセージなのかもしれません。

── そこまで俳優という職業に真摯に向き合っているからこそ、趣味でバランスを取っているところもある?

玉木 そうですね。本当に趣味がない人間だったら、今頃どうしていたんだろうと思います(笑)。少し時間ができたら、「この空いた時間で何ができるだろう」と考えられるので、仕事とすぐに切り離せる環境にあるのはありがたいですね。
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── 仕事とプライベートの切り替えは、簡単にできるものでしょうか?

玉木 たぶん必要に応じて徐々にそうなったのだと思います。仕事が忙しかった20代半ばの頃は、プライベートの時間が持てないことがすごくストレスでした。自分がどんどん空っぽになっていってしまう恐怖を感じたんです。でも今はその時よりもうまく自分の時間を持てるようになってきたと思います。

── そんな玉木さんがカッコよく生きているなと思うのはどんな大人ですか?

玉木 昔から変わってないですけど、趣味の時間を上手く使える人ですね。どの状況においても楽しんでいるように見えるというか、当然、生きているうえで悩みもあると思うのですが、生きる力に溢れている人はカッコいいなと思います。

── ご自分も理想の“カッコいい大人”に近づいている実感はありますか?

玉木 自分ではまだ分からないですけど……。でも少しづつ、そうなっていけたらいいですね。

● 玉木宏(たまき・ひろし)

1980年、愛知県生まれ。98年、ドラマ『せつない』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。01年、映画『ウォーターボーイズ』で注目を集める。その後、NHK朝ドラ『こころ』(2003年)で知名度を確立し、06年、ドラマ『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)の千秋真一役で大ブレイク。代表作はNHK朝ドラ『あさが来た』、ドラマ『鹿男あをによし』(フジテレビ系)『砂の器』(テレビ朝日系)『竜の道 二つの顔の復讐者』(関西テレビ)『桜の塔』(テレビ朝日系)『マイファミリー』(TBS系)、NHK大河ドラマ『功名が辻』『篤姫』『平清盛』『青天を衝け』、映画『恋愛小説』(2004年)『雨鱒の川』(2004年)『真夏のオリオン』(2009年)『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(2016年)『空母いぶき』(2019年)『HOKUSAI』(2021年)『極主夫道 ザ・シネマ』『キングダム2』『この子は邪悪』(2022年)など。現在、映画『ブラックナイトパレード』公開中。7月28日に『キングダム 運命の炎』公開。

アクターズ・ショート・フィルム3

2021年に、WOWOW開局30周年記念のプロジェクトとして立ち上がった『アクターズ・ショート・フィルム』の第3弾。本シリーズは、①尺は25分以内、②予算は全作共通、③原作物はなし、④監督本人が出演すること、というルールのもと、同条件で5人の俳優がショートフィルムを制作し、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」のグランプリを目指すもの。第3弾で監督としてメガホンを取るのは、高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎という豪華な顔ぶれで、5人全員が映画監督初挑戦となる。
制作プロダクション/スタジオブルー
製作著作/WOWOW
『アクターズ・ショート・フィルム3』は2月11日(土・祝)20:00~、玉木宏監督の『COUNT 100』は2月11日(土・祝)20:30~、2月7日(金)17:00~、WOWOWにて放送・配信
HP/アクターズ・ショート・フィルム|映画|WOWOWオンライン

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