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2022.12.10

松山ケンイチ「自然の中に入って、自分を知る。それが僕がmomijiを通して伝えたいこと」

俳優の松山ケンイチさんが奥様である女優・小雪さんとともに「momiji」というアップサイクルブランドを立ち上げました。前編ではブランド立ち上げまでに至る考えや二拠点生活を始めたきっかけなどを教えていただきましたが、後編では、momijiを実現するための苦労と、それでも前進すべきと向かう松山さんの思いをお聞きしました。

CREDIT :

文/牛丸由紀子 写真/トヨダリョウ スタイリング/五十嵐堂寿 ヘアメイク/五十嵐将寿 編集/森本 泉(LEON.JP) 取材協力/杉山絵美

松山ケンイチ LEON.JP

廃棄される獣皮に新たな価値を

── 前編(こちら)では「momiji」というアップサイクルブランド立ち上げまでに至る考えや二拠点生活を始めた理由などを教えていただきました。ベースとしている地方での生活の中で、momijiを始めるきっかけとなった、皮の廃棄問題を知ることになったのですね。

松山 最初は自分が獲った鹿の皮の活用ということでしかなかったのですが、個人が職人にお願いして何かを作ろうとすると、とてもハードルが高いんです。どこに依頼するのか人の繋がりも必要ですし、皮を鞣して加工できる“革”にするタンナーさんも、1枚ではやってもらえない。それでいろんな解体場に聞いてみたら、すごい数の獣皮が廃棄されているのを知りました。解決のために皆さんいろんな努力をされているのですが、なかなか前に進まない状況が続いていました。

── ―番ネックだったのは?

松山 やはりコストです。例えば回収ルートもないですし、大きな牛と違って鹿はそもそも採れる皮が小さいんですね。さらに野生ですから体中に傷があるので、きれいに取れるところも少ない。傷がある皮は売り物になりづらいんです。

だけど自分が知ってしまった以上、可能性があるなら、まずはやってみようというふうに思いました。もし駄目だったら駄目で諦めればいい、とにかくできる人がやろうと。それで妻と一緒に始めたんです。

とはいえ僕は物を売る仕事も作る仕事もやったことないですから、最初はどうするんだろうとまったくわからなかった(笑)。それでもいろんな方に話をしていくうちに、賛同していただく方も増え、スタイリストさんやブランドさんともさまざまな繋がりをいただくようになりました。
松山ケンイチ LEON.JP
── momijiは素材も加工も国内にこだわっているんですね。

松山 できるだけ国内で回していいけるシステムを作ろうとしています。もちろん工賃は上がりますが、雇用の確保の側面もあるので、職人と技術を残していくことも含め、国内にこだわっています。

── タンナーも環境に配慮した技術を採用されているとお聞きしました。

松山 革は「クローム鞣し」という方法で鞣すのが一般的なんですが、momijiがお願いしているタンナーでは「ゼオライト鞣し」を行っています。せっかくアップサイクルをしているんだから、新しい技術で地球環境に優しいものを探して実践したい。その部分もmomijiがこだわるスタイルかもしれません。また、今後はmomijiならではの色の製品も出していきたいと考えています。

現実を伝え、解決策は自然の営みの中に

── 松山さんが注目された食肉加工時に皮が捨てられているという事実がありながら、その一方で、最近のファッション業界では、動物愛護の観点から、リアルな動物の革を使わずいわゆるヴィーガンレザーと言われるような人工皮革を使おうとする傾向もあります。そのギャップについて思うところはありますか?
松山ケンイチ LEON.JP
▲ バケットハット5万600円(オーダー価格)/momiji×Tokio hat(トーキョーハット)、カーディガン16万5000円、ニット17万500円ともにブルネロ クチネリ(ブルネロ クチネリ ジャパン)
松山 いろいろな考え方がありますが、「その考えは違う」と言い合うのではなく、それぞれが正しいと思うことをやっていくしかないと思っています。

ただ残念ながら、人工皮革はあくまでも人工のもので皮ではない。だから皮が捨てられている現状とタンナー業界の衰退の解決にはなりません。皮は皮として存続できる形を考えることが必要です。でもヒントって本当に歴史の中にあると思うのです。太古の昔から使われていた、最初のサステナビリティと言ってもいい皮は、やっぱりどこまでいってもそれに代わるものはないのですから。

── 確かに一番の問題は、動物がかわいそうだというような話の以前に、皮という資源が有効活用されることなく捨てられているという現実が知られていないということだと思います。

松山 地球上で他の生き物を殺していない生き物っていないわけです。食物連鎖というか、生きていくために“他の命をいただく”営みの中で、生物が存在する。でも人間って、その自然の大きな輪の中に自分たちはいないと思っている。そこが間違いのもとだと思うんです。

同じ自然の中にさまざまな生き物が、小さな蚊も、それこそウイルスだってその輪の中にいて、もちろんそこに人間も存在している。そのうえで自分たちは何を守っていくのかを考え、知ることが大事なんじゃないかと思っています。自然の中に入って、自分を知る。それが僕がmomijiを通して伝えたいことなんです。
── momijiのレザーを手にして使うことが、ある意味自然の営みのひとつになっているという感覚でしょうか。

松山 この革がどこから来たものなのか、鹿が生息する山のことや鞣しの技術など、製品ひとつにもっとその先のいろんなストーリーがまだまだいっぱいあるんです。それを追っていくことが自分自身と向き合うことになると思います。
松山ケンイチ LEON.JP
▲ キャップ4万5100円(オーダー価格)/momiji×Tokio hat(トーキョーハット)

あらゆる不要素材のアップサイクルブランドに

── 来年はNHK大河ドラマ『どうする家康』の出演や、主演映画『ロストケア』の公開も予定され、俳優としての活動も順調です。このmomijiの活動と俳優という仕事はまったく異なるものだと思いますが、それぞれ影響を受けている部分はありますか?

松山 僕が自然の中での生活を通して始めたのが、このmomiji。自然の営みを知ることで、何が自分に必要で大切なのかなど、改めて自分を知るきっかけになりました。そして自分自身に向き合うことができたことで、俳優も楽に続けられるようになったんです。

また、このmomijiをみなさんに伝えるためにも、俳優という仕事を続けなくてはと思っているので、momijiの活動が仕事への新たなモチベーションにもなっています。結果的には、互いにいい影響を与えたと感じています。
── 今後のmomijiはどんなプロジェクトを目指していらっしゃいますか?

松山 皮という素材は、衣類以外にも椅子などのインテリアやアートの素材としても使われています。だから身に着けるもの以外にも広げていきたいと思います。

また自分たちが知らないだけで、皮以外にも捨てられているものはいっぱいあるんです。例えば鹿の毛だったり、繊維くずだったり。momijiで作ったシステム手帳に使われている紙も、廃棄された洋服の繊維から作られた「CCP(サーキュラー コットン ペーパー)という再生紙なんです。

── ご自身の出身地である青森県に伝わる南部裂織も取り入れられるとか?

松山 そうなんです。着古した着物や布を裂いて織り込む江戸時代に生まれた織物なんですが、その製品も今、進行中です。

獣皮にとらわれず、そういったものを自分たちで見つけて、どんどん取り入れていきたいと思っています。役に立たないと思われているものをアップサイクルしていく、それがmomijiというプロジェクトの意義だと考えています。
松山ケンイチ LEON.JP
▲ ブラックライダーズ価格未定/momiji、タートルニット17万500円、パンツ8万8000円/ともにブルネロ クチネリ(ブルネロ クチネリ ジャパン)
── このmomijiのプロジェクトで松山さんが伝えたい思いを改めて教えてください。

松山 自分たちは自然のサイクルの中にいる存在だと感じて欲しいと思います。僕が感じたように、自然というものを今一度観察することで、本当に自分が欲するものが何かがわかったり、自分の心が豊かになる可能性だってある。きっかけは自然の中にあるんです。そういう部分をmomijiを通して発信できたらなと思っています。
松山ケンイチ LEON.JP

● 松山ケンイチ

1985年3月5日生まれ、青森県出身。B型。2002年に俳優デビュー。映画『男たちの大和/YAMATO』(2005)で注目を集め、『デスノート』(2006)でブレイク。他に映画『ノルウェイの森』(2010)、『GANTZ』(2011)、『BLUE/ブルー』(2021)他。『聖の青春』(2016)では日本アカデミー賞優秀主演男優賞、ブルーリボン賞主演男優賞などを受賞。
ドラマではNHK大河ドラマ『平清盛』(2012)で主演を務めた。他に、『A LIFE~愛しき人~』、『聖☆おにいさん 第III紀』、『日本沈没-希望のひと-』など。2023年はNHK大河ドラマ『どうする家康』、『100万回言えばよかった』(TBS)に出演予定。プライベートでは2011年に女優の小雪と結婚。2022年1月に獣皮のアップサイクルを目的としたプロジェクト「momiji(モミジ)」を夫婦で立ち上げた。

松山ケンイチ LEON.JP  momiji

momiji レザーアイテムコレクション

会期/12月8日(木)~21日(水)
※~12月14日までウインドウディスプレイでも展示
会場/和光本店4F
住所/東京都中央区銀座4-5-11
TEL/03-3562-2111(和光代表)
HP/https://shop.wako.co.jp/c/pickup/pickup-momiji

momiji×Tokio hat 帽子コレクション
トーキョーハットを展開する店舗にて、順次帽子コレクションのポップ
アップを開催中です。詳細は、ト ーキョーハットの公式ホームページより
ご確認ください。

※momiji及びコラボレーション製品の価格や仕様、展示情報などについて、変更となる可能性があります。

※掲載商品はすべて税込み価格です

■ お問い合わせ

momiji  Instagram/@momiji2022_official
ブルネロ クチネリ ジャパン 03-5276-8300
ウィリー www.wheelieltd.jp
トーキョーハット https://www.tokiohat.com/momiji
レイメイ藤井 03-3632-6279

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