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2018.12.28

年末年始だからこそ観たい! 男の本能を呼び覚ます「シリーズ物」映画5本

年末年始は1年の疲れとストレスを癒して新年への活力を養う時期。そこで男の本能を呼び覚ます「シリーズ物」映画で鋭気を養っていただくのは如何でしょう。マルチ編集者、草彅洋平さんがヤクザ映画を中心に5本をご紹介。

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文/飯田帆乃香 写真/椙本裕子 イラスト/ゴトウイサク

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皆さん、映画はお好きでしょうか? 年末年始は1年で最も自分の時間が作りやすい時期。溜まった疲れとストレスを解消するためにも、普段はなかなか観られない「シリーズ物」映画にどっぷり浸かって鋭気を養っていただくのは如何でしょう。

話題の封切作品を彼女と観るのもいいけれど、ここは、あえて “男ひとり” で観ていただきたい。ということで、古今の小説や映画にも詳しいマルチ編集者の草彅洋平さんに「男の本能を呼び覚ます映画」をセレクトしてもらいました。お話を伺ったのは彼がプロデュースして11月末にオープンしたばかりの渋谷「GOD BAR by スナックうつぼかずら」。これがまた不思議なお店で(笑)。
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ヤクザ映画には男が筋を通して生きることの困難が描かれている

「シリーズ物ということで選んでみたら、自然とヤクザ映画ばかりになりました。子供の頃、年末によく親父が観ていた記憶があるので、僕にとって年末というとヤクザ映画がしっくり来るんです。ご紹介する映画は時間があるからこそ一気に観ていただきたい。そうすると、作品のいろんな面がわかって、より楽しめると思いますよ」

■『仁義なき戦い』

なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんだ

「僕が真っ先に浮かぶ【シリーズもの】と言ったらコレですかね。深作欣二監督と脚本家の笠原和夫の黄金コンビによる、敗戦直後の広島のヤクザ社会を描いた作品です。菅原文太演じる広能昌三は不器用なヤクザで、自分が籍を置く山守組の組長にいいように使われながら、人を殺したり収監されたりして追い詰められていきます。

“なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんだ”といった感情があっても、それを抑えて筋を通すしかない。憤りを抱えつつもズンズン行動を起こしていくしかない、広能の生き様は大いに刺激になります。

全5作中、特に好きなのは2作目の『仁義なき戦い 広島死闘篇』。こちらは村岡組と大友連合会の抗争劇で、ストーリーはもちろんですが、千葉真一さんの迫真の演技に胸を打たれるんです。下品な言葉連発で、しかも野獣のように、すぐ人をぶん殴るんですよ、あの千葉真一が! もう一人の主人公・北大路欣也さんとの演技対決はとにかく素晴らしいです」
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『仁義なき戦い』

1973年・日本 監督/深作欣二 出演/菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、伊吹吾郎 他 販売/東映 発売/東映ビデオ 2800円(DVD)

1973年の『仁義なき戦い』、同年の『仁義なき戦い 広島死闘編』『仁義なき戦い 代理戦争』、翌74年の『仁義なき戦い 頂上作戦』『仁義なき戦い 完結篇』とわずか2年の間に5本が公開された。『仁義なき戦い』は「キネマ旬報」誌の「オールタイム・ベスト映画遺産200 (日本映画編)」で歴代第5位に選ばれている。

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■『アウトレイジ』

全員ワル。やられたらやりかえす、が基本

「関東の巨大暴力団・山王会を巡っていろんな組の権力闘争が勃発するんですけど、策略や裏切りが混在する中で、やっぱりそこにはお互いの筋の通し方がある。極悪非道の奴らが最終章でめちゃくちゃに爆発するわけですよ。悪い奴らは全員殺しちゃえみたいな。出てくる奴は全員悪いんですけどね(笑)。殺すことが普通になっているので、何が悪か、もはや意味がわからない世界が描かれます。

もともと日本のヤクザ映画って、勧善懲悪的でいい悪いがはっきりしてたんですね。傍若無人に悪弊を繰り返す悪いヤクザに対して、主人公のヤクザが耐えに耐えた最後に立ち向かうみたいな。そこで負わされる“悲哀”のイメージがカッコよかった。

それが、『仁義なき戦い』以降、ヤクザにもサラリーマン的な世界観が出てきたんですね。要は悪い組長がいて、若者達が志に反して組織に翻弄されていく。菅原文太はタヌキみたいな小ずるい親分の指示に従ったがゆえひどい目に合ったりして。そこには『仁義があるようでなかった』というリアルなヤクザ社会が描かれています。

『アウトレイジ』も、そういった混沌としたヤクザ社会を描いていますが、サラリーマンよりもより政治的な世界であり、最後に大爆発する。ハリウッド映画の古典的な、“やられたらやり返す”といったクライマックスで、ほぼ登場人物全員死んでしまうのだからすごい映画だと思います」
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『アウトレイジ』

2010年・日本 監督・脚本・編集/北野武 出演/ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、三浦友和他 販売元/バンダイナムコアーツ 3800円(DVD)

2010年、北野武監督15本目の作品として『アウトレイジ』が公開。続編として2012年に『アウトレイジ ビヨンド』、さらに2017年に『アウトレイジ最終章』が公開されている。

■『緋牡丹博徒』

藤純子の仁義の切り方がカッコいい

「『仁義なき戦い』は1973年公開ですが、ここでちょっと時代を遡って1968年公開の『緋牡丹博徒』の藤純子を紹介したいです。こちらは女任侠の物語で、藤純子演じる矢野竜子が父親の仇討ちを機に、“緋牡丹のお竜”として渡世修行の旅に出るシリーズ映画です。この藤純子がまだ20代前半でとにかくきれい! 仁義を切るところとかも、本当にカッコいい。名演技なんです。藤純子の大ファンになります。

特筆すべきは、監督をその都度変えていること。1作目は僕が好きな山下耕作で、2作目は鈴木則文。そして3作目の加藤泰で、究極に美しい藤純子が出来上がる。この『緋牡丹博徒 花札勝負』は、シリーズの中でも群を抜いてイケてるんですよ。もし一人の監督でずっと撮っていたら、この完成度には達しなかったんじゃないですかね。

『緋牡丹博徒』には若山富三郎や高倉健といった往年の名俳優が脇を固めています。当時の男性はみんな健さんに憧れて、映画館を出ると肩で風を切って歩いたと言いますが、その気持ちがわかります。この作品はビジュアルも美しく、オープニング主題歌からカッコ良さが溢れています」
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『緋牡丹博徒』

1968年・日本 監督/山下耕作 出演/藤純子、高倉健(特別出演)、若山富三郎、待田京介 他 販売/東映 発売/東映ビデオ 2800円(DVD)

『緋牡丹博徒』は藤純子の代表的シリーズとして1968年の第1作『緋牡丹博徒』から1972年『緋牡丹博徒 仁義通します』まで全8作が作られた。藤が歌舞伎俳優の尾上菊五郎と結婚、女優引退となってシリーズも終了した。

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■『ザ・レイド』

ガチでぶん殴る「シラット」はリアルに痛そう

「お次の『ザ・レイド』はインドネシアの格闘アクション映画なんですが、ホント神映画! ギャングやドラッグの密売人が集う悪の巣窟みたいなビルに、SWATが奇襲するストーリーです。新人警官のラマは、あらゆる敵を倒しながら麻薬王のいる上階を目指し、次々に襲ってくる敵と壮絶なバトルが繰り広げられます。この作品で用いられる格闘技はシラットという武術です。かつてブルース・リーも学んだ詠春拳のテンポに似ていて、アクションシーンは本当に見応えがあります。

続編の『ザ・レイド GOKUDO』は松田龍平など日本の俳優陣も出演していて、インドネシアのマフィアと汚職警官、それに日本のヤクザも加わった抗争にラマが巻き込まれていく。こちらは大迫力のカーチェイスが見もので、今まで僕が見た中でも屈指の出来。爽快感がたまりません。この作品はアクションの概念を超えますよ」
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『ザ・レイド』

2011年・インドネシア 監督・脚本/ギャレス・エヴァンス 出演/イコ・ウワイス、ジョー・タスリム、ドニ・アラムシャ、ヤヤン・ルヒアン他 販売元/KADOKAWA 1800円(DVD)

2011年の『ザ・レイド』に続き2014年に『ザ・レイド GOKUDO』が公開された。監督のギャレス・エヴァンスはイギリスのウェールズ出身。

■『ブレイキング・バッド』

どんどんアウトローになっていく高校の化学教師

「最後は、映画じゃなくてアメリカのテレビドラマシリーズなんですが、あまりにも面白いのでぜひ観て欲しい! 10年ほど前(2008年)から5年にわたってシーズン5まで作られたんですが、エミー賞ほか数々の賞も受賞している大人気のドラマです。

主人公のウォルター・ホワイトは化学を教えている高校教師なんですけど、脳性まひをもつ息子がいたり、自分も肺がんで余命を宣告されたりと、いろいろ暮らしも大変。そこで、ドラッグを作って元教え子のジェシー・ピンクマンと麻薬ビジネスを始めるんですが、それをきっかけにいろんな事件を起こしていく。最初は洗車場でバイトする平凡な男だったのが、麻薬を作り始めて組織や警察に追われたり、どんどんアウトローになって、その中に自分のアイデンティティ(悪い欲望)が確立されていくんです。

アメリカ映画では、ヒスパニックやアジア系が悪事を働く流れが多いんですけど、この作品の面白いところは、主人公が金のない白人という設定。トランプ大統領が生まれた背景が垣間見えるというか、非常に今っぽいストーリーです。で、家族のために頑張るという、非常に小さな願望から出発して、破滅に突き進んでいくわけです。悪いことして大金を手に入れても幸せにならず、破滅するという流れが、トム・クルーズ主演の映画『バリー・シール/アメリカをはめた男』にもありましたが、同じですね」
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『ブレイキング・バッド SEASON1』

2008年・アメリカ 製作総指揮・企画/ヴィンス・ギリガン、アダム・バーンスタイン 出演/ブライアン・クランストン、アンナ・ガン、アーロン・ポール、ディーン・ノリス他 発売・販売元/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント『ブレイキング・バッド シーズン1 ブルーレイ コンプリートパック(2枚組)』5524円(税別)© 2008 Sony Pictures Television Inc. All Rights Reserved.

2008年のシーズン1から2012-13年のシーズン5まで計62本が製作され全米で大ヒットした。主人公のウォルターは途中からスキンヘッドとなり、フィギュア化されるなど人気者となった。
公式HP/http://www.breakingbad.jp/

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それでも我が道を突き進む男達に感動

「全体について言えるのは、どの作品も登場人物が自分なりの筋を通して必死に生きようとしているということ。無理をして筋を通すのは、いまの時代すごく馬鹿げた話なのかもしれないけれど、人間というのは本来誰もが不器用なもの。破滅が待っていようとも、我が道を行く人たちに憧れます。

僕自身も影響を受けていて、特にもの作りに関しては、常に自分の道を行くしかないと考えています。この「GOD BAR」も神様グッズをコレクションしまくった結果、できてしまったお店です。神にリスペクトがあるからここまで宗教グッズを集めてしまった。そこに妥協はありません」
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映画は監督同士のオタク愛で結ばれている

「でもね、本当は映画を見てそこから、何か学べることがあるとか思っちゃいけないんですよ。映画は役に立てるものじゃなくて楽しむもの。

僕は、これいいなと思う作品に出合うと、とにかくその監督のいままでの過去の作品を観まくる。そうすると、監督それぞれにクセというかこだわりがあって、見続けることでその人の独創性が伝わってくる。例えば、クリント・イーストウッド主演の『夕陽のガンマン』(1965)には、男が帽子を拾おうとすると、リー・ヴァン・クリーフが銃で帽子を撃って、なかなか帽子を取らせないというシーンがあるんですが、香港出身のジョニー・トー監督『エグザイル/絆』(2006)にもほぼ同じシーンが出てくる。ジョニー・トーによる『夕陽のガンマン』へのオマージュであり、リスペクトですよね。

映画を観ていると、あのシーンってこれじゃない?と、別の作品とリンクする時があるんです。その監督をリスペクトする別の監督が自分の映画でマネをする。映画監督って、基本、みんなオタクだから。それを知って観ていくと、またすごく面白くなる。僕はそういう映画同士の愛が大好きです。

クエンティン・タランティーノ監督は深作欣二監督を崇拝しているので、タランティーノ作品を見る上でも、『仁義なき戦い』始め深作作品を見ておくのは大事な気がしますし。そうやって映画が好きになると人生が楽しくなる。年末年始に昔の映画を観るって、そのきっかけになるんじゃないでしょうか」
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●草彅洋平(くさなぎ・ようへい)

編集者。クリエイティブ・カンパニー「東京ピストル」の代表取締役。これまでの膨大な読書量や知識、経験をもとに、さまざまなメディア運営や幅広いプロデュース、編集を行う。日本近代文学館にある文学カフェ「BUNDAN COFFEE&BEER」や“LOVE”をテーマにした本だけを集めた「歌舞伎町ブックセンター」などの企画、運営もしている。最新のプロデュース店が、こちら「GOD BAR by スナックうつぼかずら」。世界の神様グッズが一堂に会した異様な迫力です。

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