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2021.01.09

ジェネレーションギャップを言い訳にする指導者は、センスなし!

デジタルネイティブ世代の部下をもつオヤジさん注目! 昔のように、ホワイトボードの前にコーチが立ち、延々と一方的なメッセージを送るようなやり方は、今は有効ではない」と語るラグビーの名将、エディー・ジョーンズの指導法とは?

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文/エディー・ジョーンズ(ラグビー指導者、ラグビー・イングランド代表ヘッドコーチ、元ラグビー日本代表ヘッドコーチ)

記事提供/東洋経済ONLINE
ラグビー元日本代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ。日本を離れてからはイングランドへ。同代表を率いて2019年のワールドカップでは準優勝を果たした。名将に学ぶチームマネジメントのヒント。新刊『プレッシャーの力』から抜粋・編集してお届けする。
写真提供/shutterstock

ジェネレーションギャップは指導者の言い訳

私は昨年60歳になった。

当然だが、年々ヘッドコーチである私と、選手たちとの年齢差は広がっていく。だが、これが仕事を難しくしているかといえば、必ずしもそうではない。現在の選手たちの世代というものを学び、理解すれば、何も難しいことはない。

現在、イングランド代表の主力を構成する20代から30代前半の選手たちの世代は、デジタルネイティブ世代、ミレニアル世代と呼ばれる。日本で言えば平成生まれの世代で、子どもの頃からインターネットに囲まれて育った。スマートフォンとソーシャルメディアが生活の大きな一部となっている、いまどきの若者たちだ。

どんな情報でも即座に手に入る時代に育ったこの世代は、待つことが苦手だと言われていて、集中力の持続時間が短い傾向にある。理不尽なプレッシャーをひとたび与えてしまえば一気に拒否反応を示されてしまうだろう。

ではどうするか。

集中力の持続時間が短いのであれば、チームミーティングや練習時間を短くすればいいだけのこと。短い時間で密度の濃い教訓を目いっぱい与える。

私がヘッドコーチになり、イングランド代表の練習時間は一気に短くなった。密度の濃い練習を徹底的に行い、ダラダラと休む時間などない。練習が終われば合宿所で好きなことをして過ごしていいぶん、練習中は最初から最後まで、100%の力で挑むことを求めた。

強靭なフィジカルを伝統的な武器として持つイングランド代表は、肉弾戦に強い。激しい接触プレーで相手に勝つためには、爆発的な瞬発力で相手にブチ当たる必要がある。選手たちの武闘力を鍛える練習メニューは、つねに短く、そして激しい。アドレナリンが飛び散るような密度の濃い練習が終われば、リラックスして食卓を囲む。

そしてミーティングの時間になれば、再び頭のネジを締める。コーチ陣から要点を絞った的確なメッセージが与えられ、選手たちはそれを頭にたたき込み、ミーティングを終える。これが終われば、選手たちはまた自由時間に戻る。それぞれの部屋や共有スペースで、リラックスした時間を過ごす。
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「テクノロジーブレイク」を与える

ある程度長い時間、集中力を要するような活動をするときは「テクノロジーブレイク」という、わざとデジタルデバイスでコミュニケーションをとる休憩を与えたりもしている。彼らの育ってきた環境やスタイルを無理に変えるのではなく、うまく取り入れることも必要だ。

スマートフォンの存在については賛否両論ある。すべてをインスタントにした、この物体は世の中をいい方向に向かわせているのか、悪い方向に向かわせているのか。それは私が決めることではないし、私が口を挟んで何かを変えられるものでもない。

指導者としてすべきなのは、つねに世界が変わり続けている事実を理解すること。昨日までの自分の知識や価値観など今日には何の意味も持たなくなるかもしれない。それを肝に銘じておくこと。とにかくスマートフォンは現代人にとっては欠かせないものだ。それを選手から強引に切り離すことは得策ではない。

こうして、この世代の選手たちが実力を発揮しやすい環境を一度整えれば、後は自然とチームは回っていく。

監督と選手の間に大きなジェネレーションギャップがあったとしても、問題にはならない。ここで、「自分の若い頃は~」と説教を垂れてしまう人は、指導者としてセンスがない。なぜならば、指導者はつねに次の世代を指導していくことが仕事であり、指導する相手を理解せずには、いい指導などできるはずがないのだから。
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ミーティングのキーポイントは3つまで

ミーティングに関しては、なるべく15分以内で終わらせ、キーポイントを3つ以内に絞るように意識している。ダラダラと話を垂れ流す、朝礼の校長先生のようなミーティングをしていては今どきの選手たちはついてこない。

また選手同士でグループディスカッションをさせるときも、4人までという縛りを設けている。この人数であれば、1人ひとり顔を合わせ、アイコンタクトをしながら話をすることができる。

基本的に私が前に立って、全員に向かって話すというスタイルではなく、選手の自発的な参加を促す。とくに、若手でもオープンに発言できるような雰囲気づくりを意識する。

外的な環境も重要だ。部屋の明るさ、壁の色、部屋の温度などにもこだわる。何かを学び、得る環境に最適化していく。

また、ミーティングのスタートには“プライマ”と呼ばれる、脳に刺激を与える小ネタを挟んだりする。それはジョークの類であったり、何かしらの映像であったり、クイズを出したり状況によってさまざまであるが、コーチ陣と相談しながらネタを練っている。

このように、現役世代をミーティングに入ってこさせるためにさまざまな工夫を凝らしている。

メッセージは短く、簡潔に、そしてパンチがあるものを。入り始めは少々工夫が必要だが、一度引きずり込めばまじめに学習し、吸収する力が強いのが現役世代の特徴だ。

とにかく昔のように、ホワイトボードの前にコーチが立ち、延々と一方的なメッセージを送るようなやり方は、今は有効ではない。私が選手時代に指導されたようなやり方ではだめだ。

現役世代がどのようにものを学ぶかを、私が学ばなければならない。私にとってのプレッシャーは、こうした新しい世代に対応することでもある。

『プレッシャーの力』

2015年のラグビーワールドカップで日本代表を率い3勝をあげ、記憶に新しい2019年のワールドカップ日本大会ではイングランド代表を率いて準優勝。

世界的名将エディー・ジョーンズはなぜ勝てるのか?「プレッシャーの力」をキーワードにその秘密を紐解く。

「エディーさんがかけるプレッシャーには、たしかに凄まじいものがあった…」元日本代表・廣瀬俊朗氏の巻末解説も収録!

選手へのプレッシャー。日本代表時代は早朝5時スタートからの練習も辞さず、肉体的・精神的に強いプレッシャーをかけ鍛え上げた。そのハードワークが「スポーツ史上最大の大番狂わせ」と呼ばれた南アフリカ代表撃破に結実した。

対戦相手へのプレッシャー。口撃、パフォーマンス……勝つためにあらゆるプレッシャーをかけるのがエディー流。印象的なのが昨年のワールドカップでニュージーランド代表「オールブラックス」戦。“ハカ”に対抗して、V字型の陣形で取り囲む奇策を打ち、心理面から絶対的王者を揺さぶった。

自分自身へのプレッシャー。エディー自身選手として指導者として人一倍挫折を味わってきた。プレッシャーに押しつぶされた過去もあった。
しかし成功願望を持ち続け、常に苦しい道を選びここまでやってきた。

プレッシャーを避けるな。力にしろ。自分の内なる声に耳をすませよ。
エディーからのメッセージを全ての「勝ちたい」と願う読者に捧げる。

著者/エディー・ジョーンズ ワニブックス刊 本体1600円+税
https://www.wani.co.jp/event.php?id=6897

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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