2025.11.08
【第5回】
お嬢様育ちの恋愛事情「初めての時はふたりきりの別荘で」
生き方や恋愛の価値観が変わりつつある現在、大人の女性たちはどんな恋愛をしているのか、大人の女性たちは何を求めているのかを、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で深掘りします。
BY :
- 文/木村千鶴
- CREDIT :
取材/林 伸次 写真/田中駿伍(MAETTICO) 編集/岸澤美希(Web LEON)
本連載「林 伸次のLove la Bossa」では、奥渋谷のバー「BAR BOSSA」のマスターにして作家の林 伸次さんが、バーテン仕込みの絶妙な話術で大人の女性の本音を深掘りします。第5回のゲストは奈美恵さん(40代)です。

幼稚園から大学まで、ほぼ女子の環境で育ちました
「よろしくお願いします。もうここに来るまで緊張しちゃって! うまくお話しできなかったらごめんなさい」
── いえいえ、何かをジャッジするような場ではないので、リラックスしていただければ! まずはここでのニックネームをつけたいんですが、えっと、あ、安室奈美恵さんに雰囲気が似ていると言われたことはありませんか。
「えっ、本当ですか!? 若い頃、安室ちゃんに似てるって言われたかったのでうれしいです!」
── では今日は奈美恵さんと呼ばせていただきます。奈美恵さんはどんなお仕事をされているんですか。
「経理の仕事をしています」
「幼稚園から高校までエスカレーターでほぼ女子校の状態で、大学も女子大でした」
── その環境で恋愛するのって難しいと思うんですが、最初に誰かとお付き合いしたのはいつでしたか?
「はい、男性免疫がほとんどないまま高校3年生になって、その頃に幼馴染からの紹介でお付き合いした人が初めてです」
── 女子校の人は誰かの紹介で付き合うパターンが多い気はしているんですが「この人どう?」って言われて好きになることってできるものですか?
「私の場合はその彼がすごくタイプだったんです。『私なんかで大丈夫ですか?』って思うくらいドンピシャだったから、うれしかったです」
初めての彼とは、ふたりきりで別荘へドライブしたりして

「最初は男女のグループで遊ぶ感じだったかな。旅行したりもしました。親も女子だけより逆に身元を知っている男子がいた方が安心だからと行かせてくれましたし。彼とは家が近かったので、そのうちにふたりで遊ぶようになって、自然と付き合うようになった気がします」
── わあ〜青春ですね! 幼馴染の友人だし、きっと彼らが好青年だからご両親も安心していたんじゃないですか? でも周囲が女性ばかりだと、男性のことを怖く感じそうですが。
── 彼はちゃんとご家族にも挨拶をしているんですね。
「はい。ウチの親はかなりフランクだし、きっと居心地が良かったんでしょうね。毎日私の家にきて晩御飯まで食べるのが普通になっていて、私の弟とも仲良くしてくれていました。素直で、どこにでもスッと入っていける純粋な方だったんです」
── 親公認の彼氏だったんですね。すみません、踏み込んだことを聞いてしまいますが、その彼とはどこまでのお付き合いだったんでしょうか。
「ああ、初体験は彼です。高3の夏休みだったかな」
「あ〜、それは別荘があったので、そこにふたりで行った時にという感じです」
── え〜、別荘!? やっぱりお嬢様でしたか。そうか〜(笑)。
「いえ、そんなお嬢様ってことでもないんですが、彼が車の免許を持っていたので、運転の練習がてらドライブしようってことでしょっちゅう別荘まで行っていたんです。その時に自然とそういう雰囲気になって、ですね(笑)」
── 高校生ふたりで別荘までドライブって、なんだか違う世界の話! でも家族に信用されている時点で彼はいい人なんだろうなと感じます。長くお付き合いされたんですか?
留学先で彼氏同士がばったり遭遇してしまい……

「そうそう(笑)」
「どちらかと言えば男気があるような人でした。私よりも早く現地にいたのでいろんなことを知っていて、そういうところに惹かれていったようにも思います。
日本にいる彼は本当に優しい、何でも許してくれる柔らかい感じの人だったので、その分頼りがいがないと感じてしまっていたかも。実際に比較してどうってことはないのですが」
── 遠距離になってしまうと、違うタイプの人が現れた時に「素敵!」って思っちゃうことはあるんでしょうね。
「そうかもしれません。特に私は、お付き合いするとずっと一緒にいたいと思ってしまうタイプだったので、そばにいてくれる人を好きになる傾向はあるかも。実は留学中に私の母が、日本にいる彼と一緒に現地まで尋ねてきたんですよ」

「はい(笑)。その時、現地の彼には『母親が来ているから10日間くらい一緒にコンドミニアムに泊まる。学校もそこから行くから』と伝えました。本当のことだったので。
それで日本の彼と一緒にバスに乗っていたら、偶然現地の彼がバスに乗ってきちゃったんですよ。驚いていたら『え? お母さんって男だったんだ』って言われてしまいました(笑)」
── えええ!! 大変! それどうしたんですか?
── それで大丈夫でしたか?
「何だかよくわからないけど、大丈夫だったんですよ。でもやっぱり悪いことはしちゃいけないなって思いました。最初の彼とはそれでお別れをして、現地の彼とは継続して、帰国してからも1年くらいは付き合っていました。
ただ、先ほどもお話ししたように、私はお付き合いをしたらずっと一緒にいたいし、会いたい会いたいってなってしまう。帰国してからは仕事もあるし、まあ、そんなに頻繁に会えることってそうないじゃないですか。でも最初の元彼は近所だから頻繁に会えてしまう。それでヨリを戻してしまったんです」
── えー! 何だか驚きの連続なんですが、彼らは大丈夫なんですか?
「うん、なんかもうしょうがない、みたいな感じでした。そこから7年くらい付き合ってたかな。彼は結婚も考えてくれていたんですが、私は30歳くらいまでは結婚したくなかったんですよね」
── ああ、そうなんですか。結婚したくないという女性も昨今は多いですよね。その後の恋愛については、ぜひ後編で聞かせてください。
後編へ続く。

■ bar bossa(バール ボッサ)
ワインを中心に手料理のおいしいおつまみや季節のチーズなどを取り揃えたバー。 BGMは静かなボサノヴァ。
住所/東京都渋谷区宇田川町 41-23 第2大久保ビル1F
営業時間/月〜土 19:00〜24:00
定休日/日・祝
問い合わせ/TEL 03-5458-4185
● 林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。早稲田大学中退。レコード屋、ブラジル料理屋、バー勤務を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。2001年、ネット上でBOSSA RECORDSを開業。選曲CD、CDライナー執筆等多数。cakesで連載中のエッセイ「ワイングラスのむこう側」が大人気となりバーのマスターと作家の二足のわらじ生活に。小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる』(幻冬舎)、『世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。』(幻冬舎)、『恋愛は時代遅れだというけれど、それでも今日も悩みはつきない』(Pヴァイン)、最新刊は『30歳になってもお互い独身だったら結婚しようか』(三笠書房)。















