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2025.10.10

【第32回】

マッシの「香港」初見聞記。「世界の広さを実感させてくれる時間だったよ」

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

BY :

文/マッシ
CREDIT :

写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

人の声と匂いが入り混じった生々しく刺激的な香港の街

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのマッシさんが、今回は日本を離れて初めて訪れた香港の街の様子をイタリア人目線でリポートします。
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▲ 香港国際空港にて。
「え、これが街中なの?」と、香港に降り立ったとき思わず立ち止まってしまった。高層ビルの谷間に市場が広がり、人の声と匂いが入り混じる。ガイドブックで読んでいた光景よりも、ずっと生々しく、刺激的だった。

今回の記事は、僕が初めて香港に行って感じた文化の驚きを、読者の皆さんと旅しているように書いてみたから、ぜひ一緒に楽しんで!
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▲ 尖沙咀Star Ferryという、香港島までのフェリー乗り場。
街を歩いていて最初に驚いたのは、パンの大きさだった。ベーカリーのショーケースに並ぶ食パンは、日本の「一斤」をさらに超える存在感で、手に取るとずっしり重たい。小腹を満たすつもりで買ったはずだけど、気づけば一日中そのパンで過ごせてしまったほどだ。

さらに、スーパーに足を踏み入れると今度は逆の意味で驚かされる。棚には日本の食品がずらりと並んでいて、ポッキーやカップラーメンまで当たり前のように売られているんだ。「海外に来たのに、なんだか日本にいるみたい…」と不思議な安心感を覚えたよ。
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▲ 金園茶餐廳(Gold garden cafe)のエッグタルトとパイナップルパン。
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そして、どこを歩いても漂ってくるのは食べ物の匂い。炒め物の香ばしさやスパイスの刺激、時には油の香りまでもが混ざり合って、通りそのものが「巨大な厨房」のように感じられる。香港が「食の街」と呼ばれる理由を、鼻で実感した。
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▲ 長沙湾のマーケット。
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香港の街を歩いていて特に圧倒されたのは、空に向かって細長く伸びるマンション群! 地震が多い日本では考えられないようなバランスで、まるで積み木を重ねたように建っている。見上げると、その迫力に足がガクガクしちゃった。
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▲ 空に向かって細長く伸びるマンション群。
なかでも忘れられないのが「Yick Cheong Building」、通称モンスターマンションだ。四方をぎっしりと建物に囲まれた中庭に立った時、ふと「鳥かごに閉じ込められているみたいだ」と思った。上を見上げても空は小さくて、日の光はほとんど届かない。だけど、その暗がりの1階には美容院が営業していて、さらに、有名な「%(アラビカ)」のカフェまである。
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▲ モンスターマンションの入り口。
重苦しい雰囲気と、そこに根づいた生活のコントラストが、不思議な現実感で、まるで映画のセットに迷い込んだようで、思わず息を呑んだよ。
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▲ 中から見たモンスターマンション。
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香港での朝は、相席文化の洗礼から始まった。朝8時、人気の老舗「オーストラリア・ディリー・カンパニー」に着くと、すでに店内は活気に包まれていた。店員さんはせわしなく動き回っていて、メニューをチェックする間もなく、4人がけの小さなテーブルへと案内される。

ホッとひと息ついたのも束の間、すぐに別の2人組が同じテーブルに座ってきたんだ! 「えっ、この小さなテーブルに!?」と、日本ならまずありえない状況に驚いたけど、香港ではこれが当たり前。効率重視の香港らしさに、気づけば僕も自然と馴染んでしまっていた。ぎゅうぎゅう詰めの空気感さえ、むしろ「旅の特権」だよね?
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▲ オーストラリア・デイリー・カンパニーという香港の伝統的なモーニングが食べられるお店。
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そのスピード感は、街の移動にも現れている。地下鉄の駅で初めてエスカレーターに乗った時、その速さに思わず足を踏ん張った。体感では日本の1.5倍はあるんじゃないかな。あっという間に到着するから、「日本でもこの速さを導入してほしい!」とさえ思ったほどだ。
そしてもうひとつ、強く印象に残ったのがフィリピン人女性たちの存在だった。香港では、富裕層だけでなく一般家庭でも「お手伝いさん(ヘルパー)」を雇う文化がある。1970年代に制度が導入されて以来、多くのフィリピンやインドネシアの女性たちが住み込みで家事や育児を担ってきた。旅行中に訪れた商業施設「MOKO」でも、子どもを連れたヘルパーさんが買い物袋を抱える姿を何度も目にした。
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▲ 香港市内のアーケードに続く階段。
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だけど、本当に驚かされたのは日曜日。セントラル(中環)の通りや公園一帯に、段ボールを広げてくつろぐフィリピン人女性たちの大集会ができていたんだ! お弁当を持ち寄って仲間と笑い合い、時にはカラオケ機材まで持ち込んで大合唱。
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▲ フィリピン人の集まり。みんなワイワイ楽しそう。
最初は「こんなに堂々と公共の場を占拠して大丈夫なの?」と戸惑ったけど、見ているうちにその楽しさに圧倒されてしまった。気づけば、「僕も混ぜてほしい……」と思ったほどだよ。香港という街が持つ心の広さと自由さを、彼女たちの姿から感じた。
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▲ 我杯茶(My Cup of Tea)というミルクティーが美味しいお店。
こうして振り返ると、香港での数日間は「驚き」の連続だった。最初は戸惑いの連続だったけれど、その一つひとつが「香港らしさ」なのだと思うと、むしろ愛おしく感じられてくるから不思議だ。便利さや効率だけでは割り切れない雑多さ、そこに確かに根づく人々の暮らし。香港は「慣れる街」ではなく、「飲み込まれる街」だと感じた。
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▲ 香港らしいアーケードの通り。
初めての香港旅行は、ただ観光地を巡っただけではなく、僕の常識を変えて、世界の広さを実感させてくれる時間だったよ。次に訪れる時は、どんな驚きが待っているのか、すでにワクワクしている。
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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