2020.05.18
VOL.02「これぞ紳士の処世術ですわ」
なぜ日本の男性はレディファーストしないのか
世界のラグジュアリー人脈に通じ、社交界の裏事情にも詳しい謎の有閑マダム、カトリーヌ10世さんが、日本の男性諸氏が陥っている、ファッションと恋愛の無自覚・無意識の怠慢に覚醒を促し、読者を洗練へと導く連載です。
- CREDIT :
文/カトリーヌ10世 イラスト/ユリコフ・カワヒロ
■Theme02「これぞ紳士の処世術ですわ」
「彼はイギリスにいる時にはクルマのドアも開けてくれるし、ナプキンもさっとひざにかけてくれる。ごく当たり前にレディファーストをしてくれるのだけど、日本に来ると、人が変わったようにピタッとやめる。彼の友人たちもそう。日本ではレディファーストが恥ずかしいことになっているのかしら」
なぜそんなことになってしまうのでしょう? 海外駐在を経験したある方はこのように言い訳しました。「海外にいるとレディファーストできない男は社交の輪から外され、仕事の評価まで落とされる。逆に日本では、女性をスマートにエスコートしたりすると、同僚から叩かれるんです。おまえだけ格好つけられたら俺たちがやりにくい、って。日本では男社会で上手くやっていくために、レディファーストをあえてやらないのですよ」。
なるほど。周囲の環境と折り合っていくための処世術ということですね。
ではその処世術をさらに一歩、深めてみませんか。キザと言われようが、日本でもレディファーストな振る舞いを徹底するのです。というのも、これは観察力と機動力を高める訓練になるから。状況を瞬時に察知して行動の先手をとる力が磨かれます。そもそも、女性を守るという名目のもと、行く手に敵の存在を察知し、先に女性を行かせて敵の攻撃から自分の身を守った非情な騎士もいたくらいです(だから頭のいい女性はエスコートされるフリしてその先を読むのです)。
とことんレディファーストをする変わった男としてキャラを確立してしまえば、周囲はかえって呆れて認めます。結果、観察力と機動力が磨かれ、キャラも立つ最高の処世術に。内実はどうあれ男女の様式美の喜びが広がるレディファーストに、「目覚めなさい」。
カトリーヌ10世
グローバル化が進む社交界事情にも通じる。密かな趣味は 人間観察とコスプレ。 好きな飲み物はモンラッシェ。日本ではほとんど知られていない、ある小国の女王とのウワサも!?