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2020.01.11

北欧ブームも追い風!? 最近やたらと評価が高い「新世代ボルボ」の真実

いま、日本で最も勢いのある輸入車ブランドのひとつ、ボルボ。昨年11月にはS60が発売され、街中で見かける機会も多くなった。その成長の秘密とは? ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長に話を聞いた。

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文/山本 シンヤ(自動車研究家)

記事提供/東洋経済ONLINE
▲2019年11月に発売された「S60」の登場で新世代ラインナップを完成させたボルボ。(写真:ボルボ)
ここ数年、日本で最も勢いのある輸入車ブランドと言えば「ボルボ」だろう。世界販売台数で言えば、世界の主要メーカーの中では下から数えたほうが早いが、2016年に国内販売を開始した2代目「XC90」を皮切りに新世代モデルを矢継ぎ早に導入。その評価は非常に高く、中でもコンパクトクロスオーバーの「XC40」やステーションワゴンの「V60」は、現在も数多くのバックオーダーを抱えている状態と聞く。

実際の販売台数も右肩上がりで、2018年の世界新車販売台数は、過去最高の64万2253台を記録。2019年の販売台数も、すでに前年比越えは確実だそうだ。

ちなみに日本でも2019年上半期(1~6月)の新車登録台数が、前年比9.1%増の9268台と発表。街中でボルボを見かける機会が、今まで以上に増えているのを実感している人も多いはずだ。

しかし、好調なボルボにも心配材料がないわけではない。
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発売予定の新型車がない

その一つは2019年11月にセダンの「S60」のフルモデルチェンジにより、全ラインナップの次世代モデルへの移行が完了したことだ。これは、しばらくは新型車の登場がなく、これまでのような「新車効果」が通用しないことを意味する。
▲ボルボの知名度と販売台数の拡大を牽引してきた「V40」。(写真:ボルボ)
もう一つは、2013年の登場以来、日本のボルボの知名度を上げるとともに販売台数を牽引してきたコンパクトハッチバック「V40」が、年内で生産終了と発表されたこと。残念ながら現時点では「後継モデルは存在しない」そうだ。

そこで今回、ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長に「ボルボの今後」について聞いてみることにした。

まず、日本で好調が続いている要因を聞いてみた。他の輸入車ブランドの担当者と話をすると「最近のボルボさんは凄い!」と声をそろえるが、やはり新世代ボルボの投入効果が大きいのだろうか?

「もちろん、新世代ボルボが加速をつけたのは間違いありませんが、私が2014年7月に社長になって以降 マーケティングや商品バリエーション、売り方などすべてを見直し、『安全』『スウェーデン』を強調した戦略の効果が大きいと思っています」

「日本でのボルボのイメージは世界的に見ても非常にいいのですが、質実剛健、頑丈、安全という『四角いボルボ』のイメージが強すぎて、『ボルボ=プレミアム』がしっかりと伝わっていなかったのです」

「われわれボルボ・カー・ジャパンも、商品がいいのにそれをアピールせず、安売りしていた反省がありました。日本のプレミアムセグメントは、ドイツ勢とレクサスがほとんどで、思った以上に選択肢が少なく、ボルボが入る余地が残っています。しかし、以前のボルボのような中途半端な位置づけでは淘汰されるおそれがありました」

たしかにボルボは「ぶつかっても安全」だとは昔からよく知られているが、「ぶつからない安全」に関してはまだまだ浸透していない。2009年に完全停止する自動ブレーキ(XC60で採用)や、2013年に歩行者用エアバッグ(V40で採用)を世界初導入しているが、上手にアピールできていなかった。
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色や内装はスウェーデンらしく

そこで「安全」については、最新の先進安全装備をモデルやグレードで差をつけることなくすべて標準装備とし、自動車安全のリーダーであることを今まで以上にアピール。さらに最近では、「最高速度 180km/h 制限」や機能制限ができる「ケアキー」の導入(2020年夏以降導入の車両) 、 「ドライバーモニタリングカメラの車両搭載(2020年代前半の導入を予定)」 などのプロジェクトも発表している。

一方、「スウェーデン」に関しては、ドイツ車との違いを明確に出すために、ボディカラーは白/黒/シルバーの比率を下げ、内装色も北欧デザインのシンプルさ、素材のよさを生かした高級感をアピールできるコーディネイトを採用。
▲明るいベージュを基調とした「S60」のインテリア。(写真:ボルボ)
個人的にはドイツ勢のような“足し算”ではなく、日本文化に似た“引き算”の美しさや高級感が日本人にマッチしたうえに、スウェーデン発祥の大型家具量販店「IKEA」の効果も相まって、今まで以上に日本人にスウェーデン流が理解されたことも大きいと思う。

ちなみに2018年の輸入車総販売台数は、前年比1.1%の30万8389台。他の国と比べると多いとは言えない数字だが、狭い島国に数多くの国産ブランドを抱える日本でのシェア向上は、どのインポーターも課題である。そんな中、ボルボの販売は右肩上がりだ。

ボルボが最も売れたのは、「850」が売れに売れた1997年の2万4000台。直近では2万台超えをしているだけに、1997年の記録を超えたい……と言う思いはあるのだろうか?

「2021年ごろに狙いにいくつもりでしたが、V40の後継モデルがないので……。今の考えは『安定的に2万台を実現』が目標です。ディーラー網を他ブランドのように増やして台数を稼ぐ考えはなく、『2万台÷100店舗=200台/店』程度が、各ディーラーの安定経営をしてもらう適正値かなと考えています。われわれが、メルセデス・ベンツさんのように売れるようなことは絶対にありませんので(笑)」

確かに現在のトレンドは、ハッチバックよりもクロスオーバー。V40の事実上の後継モデルが、SUVのXC40であるとも言えるのだが、日本市場での使い勝手を考えると、もう少し小さなモデルも欲しいはず。スクープサイトにはよりコンパクトサイズの「XC20」の存在もウワサされているが?
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▲実質的な「V40」の後継モデルとなるSUVの「XC40」。(写真:ボルボ)
「日本サイドとしては、ぜひとも造っていただきたいですよね。ボルボの悪いところは『先を見すぎているところ』。確かにクロスオーバーでハッチバックユーザーを賄えるのもわかりますが、いきなりやめるのではなく、もう1世代ぐらいやってよ……とは思いますね」

「また、新しいリースプログラムの『ケア・バイ・ボルボ』や電動化なども発表済みですが、もう少し直近のビジネスも見てほしいですね。そういう意味では、将来ビジョンに対するアクションが大胆すぎるかもしれません」
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国産セダンからの代替えを狙う

11月に発売されたS60は、セダンボディを採用する。日本では縮小傾向のカテゴリーだが、ボルボはそこを逆手に取る戦略である。

「実はS60は、日本車からの代替えを狙っています。市場の縮小で国産セダンは減る一方で困っているユーザーも多いと聞いているので、そのようなユーザーを獲得できればと思っています。『クラウン』や『スカイライン』の価格のボリュームゾーンは500万~600万円なので、勝負はできると信じています」

とはいってもいまだに『輸入車は壊れやすいので心配』と躊躇する人も少なくない。あまり知られていないが、ボルボは輸入車初となる5年保証を謳っている。これは、他の輸入ブランドが追従していない、大きな特徴の一つでもある。ボルボの信頼の証しだ。

しかし、新車攻勢が落ち着いた今、販売台数を維持するためにはさまざまな改革も必要となるだろう。何か秘策はあるのだろうか?

「ボルボは、他の輸入車ブランドと比べるとラインナップは少ない。プラットフォームは2つ(SPA/CMA)、エンジンは4気筒2.0Lのみですからね。そこで私が強く言っているのは、『品数が少ない=商品について深く知ることが可能=CSを上げるチャンス』だと。さらに、グレード体系も単なる松竹梅にはしていません。その辺りは元商品企画担当なのでうるさく言っています。今後は現在、ラグジュアリー仕様のInscription の上を行く『 Inscripti on Plus 』の設定を検討しています」

先に「100店舗2万台」という話が出たが、現在全国に95店舗あるディーラーの改革はどのように考えているのだろうか?
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▲11月に発売された「S60」の上級グレード「Inscription」。(写真:ボルボ)
「実はこの5年で、11資本にやめてやめていただきました。地方に行くと1県1店舗という地域もありますが、都心部では複数店舗展開も定着し、結果としていいディーラーだけが残りました。レベルは5年前よりも上がって安定していますが、こればかりは特効薬がないので教育を続けています。加えて『買い方の新しい提案』も行っています。すでにカーリースの『スマボ』を展開中ですが、S60の発売タイミングで全面的な見直しをしました」

3年ごとに新車に乗れる「スマボ」

日本では、カーリースを受け入れられない人が多いと聞くが、ボルボの今年1~9月の実績を見ると、販売台数の約12%がスマボでの契約だそうだ。そんなことから、S60の販売を皮切りに進化版の「スマボ2/3」「スマボ3/5」を導入。具体的には、登録諸費用や毎年の自動車税、メンテナンス費はもちろん、新たにタイヤ補償やボディ/ホイール傷補償、ドライブレコーダーなどがセットになっている。

また、「スマボ2/3」は2年後から、「スマボ3/5」は3年後の初回車検時から車検代程度(約20万円)の精算金でボルボの新車への乗り換えも可能だそうだ。

「統計を取ると、ボルボユーザーの平均保有年数は8年ですが、その一方でスマボのユーザーを分析すると3年で車検を取らずに買い替える人が多くいました。つまり『フタコブラクダ』だと。スマボユーザーはクルマを大事に使ってくれるので、結果としていい中古車が市場に流れ、そちらの流通もよくなるメリットも出ています。実は前年比8%増の新車販売に対して、中古車販売は前年比12%増です」

中古車販売と言えば、他の輸入車ブランドでは販売台数確保のための膨大な自社登録が問題となったが、ボルボはどうなのだろうか?

「ゼロではありませんが、現状で1~2%程度です。もちろん、われわれからのディーラーへの押しつけも一切していません。そもそも現在もバックオーダーを抱えており、お客様にご迷惑をおかけしている状況ですし……」
新しい買い方を提案する一方で、古いボルボのサポートをする「クラシック・ガレージ」の展開も積極的に行っている。ここでは整備や修理はもちろん、リフレッシュしたモデルの販売も行っている。

「日本では今でも『四角いボルボがいい』という根強いファンがたくさんいます。そうした方たちには、長く乗られている理由がありますので、その人たちのケアもしっかりしなければいけません。また、『古いクルマ=専門店』『正規ディーラーは高い』と言うイメージを払拭したい思いもあります」
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本当はクーペやオープンも欲しい

輸入車は都心部で売れるケースが多いと言うが、ボルボはどうだろうか?

「ボルボは、地方のほうが多いですね。名古屋、群馬、千葉などが元気です。その一方、東京や神奈川といった都心部は、複数店舗を持つ多ブランドが多いので逆に厳しい状況です」

昔ほどではないものの、地方ではアンチ輸入車層はいまだに存在する。そういう意味では「ボルボ=安全」といういいイメージが浸透し、そのハードルを下げているのだろう。実際に、最近ではボルボからボルボへの乗り換えの比率と、他名柄からの乗り換えの比率の逆転現象も起きているそうだ。

昔よりもボルボを見かける確率が高いのは、これが理由だろうか?

「私が社長になった2014年のボルボの国内保有台数は17万8000台でしたが、今は19万ぐらいと1割程度しか伸びていません。では、なぜ見かける頻度が高くなっているのかと言うと、古いクルマが減って新しいクルマが増えているからです。新しいクルマの方が、日常的に使われる機会が多いですからね」

最後にタラレバになってしまうが、他に「あったらいいのに」といったようなモデルバリエーションなどはあるのだろうか?
▲「C70カブリオレ」。かつてはクーペやオープンモデルもラインナップしていた。(写真:ボルボ)
「社長の立場で言えば、今あるモデルは押さえるべきところを押さえていると思っています。その一方で、クルマ好きとしての立場で言えば、実用的なボディだけでなく、クーペやオープンも欲しいです。プレミアムブランドは『いろいろ揃えているので浮気しないでください』という品ぞろえが重要です。せっかくいいプラットフォームがあるので、もう少し『遊び』が欲しいですね」

クーペと言えば、ボルボから独立した電動化パフォーマンスブランド「ポールスター」の存在も気になるところだが、最近はあまり話題に上がらないようなに思える。

「調査をすると『カッコいいし、買うよ』と言ってくださる方も多いですが、我々としても初の試みなので慎重に検討を行っている段階です。どこの工場でも『Made by Volvo』ですが、品質に関しては最新鋭の設備と真面目な工員がいる中国は高いと聞いています」

このように、どちらかと言うと「量」よりも「質」を上げる戦略がいい循環で回り始めているボルボ。本国における日本の重要性は高いそうで、今後の成長・展開も非常に楽しみである。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です
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