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2019.07.19

GAFAによる「人類の家畜化」を止めるのは誰か?

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文/泉美 木蘭(作家・ライター)

記事提供/東洋経済ONLINE
Google、Apple、Facebook、Amazon ── GAFA。

4社の強さの秘密を明らかにし、その影響力の恐ろしさを説く書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』が、「ビジネス書大賞2019 読者賞」「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」の2冠に輝いた。GAFAの危険性を訴える本書は、なぜこれほど読者の支持を集めたのか。

「自分が『GAFAの家畜』になってしまうような不安を覚える」
そう語るライターの泉美木蘭氏が、GAFAに抱く底知れぬ危機感について解説する。

自分たちは巨大IT企業の家畜ではないか?

「痛くない歯医者は?」「おいしいパスタ屋は?」「タケノコの茹で時間は?」 
── 手元のアイフォンをつついて質問すると、すべてグーグルからひとまずの答えが返ってくる。
実家に住んでいた頃は、医者も飲食店も家族や友達から聞いたり、日頃の会話の中でなんとなく情報として仕入れたりしていた。

料理の作り方は、田舎の母に電話すれば喜んで教えてくれるはずだし、ついでに口やかましくあれこれ言われて面倒に思う反面、日常の緊張感がほどけて電話を切るときには少し気が楽になっていたりもする。当初の目的以上の広がりがそこにはあったのだ。

ところが今や、必要なのは「回答」だけ。人と話すよりグーグル直行、誰かと会話している最中ですら、「あれ、何だっけ?」と記憶につっかかるや、考える間も迷う間もなく反射的にスマホに手をのばしている。

そういう仕組みの世界に組み込まれてしまった以上、もはや抗うのは難しいが、この行動パターンは忌むべき安直さだと自覚している。そして不安になるのだ。GAFA ── グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン ── 自分はこれら巨大IT企業が用意した枠のなかにはめ込まれ、「必要なものだけ」を与えられている家畜みたいなものなのではないか、と。
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「知りたい」を奪うグーグル、「欲しい」を奪うアマゾン

スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』によれば、アマゾンは「1兆ドルに最も近い巨人」、アップルは「ジョブズという教祖を崇める宗教」、フェイスブックは「人類の1/4をつなげた怪物」で、グーグルは「全知全能で無慈悲な神」という事態であるという。

なかでもGAFAがその破格の成功を収めた一因を分析する第7章「脳・心・性器を標的にする四騎士」では、私が自覚する「安直さ」が見事にカモにされていたことがよくわかる。

例えばグーグル検索は、毎日地球上の20億人から、35億回もの質問をされ続けているという。その規模もさることながら、人々がほぼ無意識的、反射的にグーグルに直行するという状態を作り出すことによって、もはや「調べたい」「知りたい」という人間の意思に基づく脳内の欲求すら奪い取ろうとしているように見えるのだ。

「自分では理解していないけど、ググレばわかる」「自分の記憶力や思考力は怪しいけど、検索すれば大丈夫」……こんな感覚がどこかに棲みついていないだろうか。最初は便利な道具の1つとして手に取っていたものが、使い慣れるにしたがって、まるで自分を構成する器官の一部のようになり、手放せなくなっていく。自分の脳よりも、一企業のサービスに絶対的な信頼を置いて重要視しているのだ。

しかし、そのサービスが人間に与えているのは、「依存」と「堕落」である。いや、「退化」かもしれない。グーグルは、人間から「自分の脳を使う」手順を省略させて、その脳に成り代わっているのである。
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欲しいもの、食べたいもの、行きたい場所、政治思想、異性との悩みなど日々あらゆることをグーグルに向かって送信し続けていると、それに応えるべく出現するのがグーグルアドセンスやアマゾンの商品リンクだ。次から次へと「欲しいのはこれだろ?」「これが欲しいなら、こっちも欲しいはず」と突きつけて、物欲を捨てさせないよう誘惑し続ける。

スマートスピーカー「アマゾン・エコー」のCMに、ママの誕生日を祝うためにケーキ作りに奮闘する幼い息子とパパを描いたものがある。ご存知の方も多いだろう。

パパは「アレクサ、キッチンペーパー注文して」「アレクサ、ライト消して」など次々とアマゾンのAIを自分の手足として使っていく。感激しながら息子を抱きしめるママのために「アレクサ、ハッピーバースデー歌って」と命ずるシーンには「そこは自分で歌わんかい!」とママからのツッコミが欲しいところだが、どうやらこのアマゾン・エコー、クリックなしの完全自動注文へと人々を誘導する布石でもあるようだ。

自分が「欲しい」と思ったものを、自分で選んで注文し、届くのを待つ。それがネット通販だが、ギャロウェイ氏によれば、アマゾンは消費者の「意思決定」や「注文」という作業なしに、物質的な欲求を自動的にすくい上げ、満たしてしまう未来へと向かっているという。

今はアレクサを介してキッチンペーパーを注文していても、それを繰り返すうちに、この家庭がどのくらいの頻度でキッチンペーパーを消費するのか、その購買パターンがビッグデータとともに分析可能になっていくというのだ。

すでに日替わりで弁当や冷凍パックの食事を配達する宅食サービスはあり、高齢者や産前産後などで買い物が難しい家庭などに利用されているから、生活必需品から衣料品まであらゆるものを自動注文化し、アマゾンプライム会員に手軽に利用させることは技術的にはそう難しくないのだろう。

やがてアマゾン・エコーで家族の会話を聞いて、必要と思われるものを勝手に届けたり、好きそうなデザインの洋服を何点か送ったり、「こんなのいらない!」と言えば返品用の箱を届けたりということも考えられる。

以前、データ入力業の方から、スマホの音声認識に話しかけられた音声データを文字起こしするという仕事について話を聞き、そんなふうに音声が抜かれているのかと驚いたが、スマートスピーカーも当然、その家庭内での音声はデータとして精度を上げるべく分析されているはずだ。

アレクサに話しかけていたCMのパパは、将来はアレクサから「お父さん、キッチンペーパーがまもなく切れます。シンク右下の棚に新品があるので交換してください」と先手を打って命令されるようになるかもしれない。その時にはもう「これが欲しい」という自発的な欲求さえ奪われて、すべてアマゾンという一企業の枠の中で生かされている状態だ。

最初に、自分はGAFAから「必要なものだけ」を与えられている家畜みたいなものではないか、と書いたが、実は「何が必要なのか」という意思決定すら委ねてしまう、本当の家畜化がこれから始まっていくのかもしれない。
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GAFAは多様性と常識を破壊する

ここで困るのは、アマゾンの完全自動化、大規模化によって小売店がせん滅させられていくことだ。アメリカではアマゾンはすでに「小売りのサタン」となり、ウォルマートやKマートなど著名な小売りブランドも含めて同業企業がめちゃめちゃにされ、「アマゾン以外はほぼ敗者」というゼロサム・ゲームを展開しているという。

そんなになるまで保護を考えないのかと思うと、自由の国・アメリカの自由さも問題があるなと思うが、日本もひとごとではない。

GAFAのような巨大企業は、富だけでなく、社会の豊かさ、多様性をも奪っている。それは、アマゾンのような物質的な独り勝ちだけではない。

例えばフェイスブックでは、フランスの巨匠ドラクロワの名画「民衆を導く自由の女神」が、上半身裸の女性を描写しているという理由で掲載禁止になったり、ベトナム戦争の悲惨さを伝える報道写真としてあまりにも有名な「ナパーム弾の少女」が児童ポルノと判定され、問答無用で削除されるなどの事件が起き、大問題となった。
掲載禁止になった「民衆を導く自由の女神」(出所:wikipedia)
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いずれもその後、フェイスブックがそれぞれの作品に対して個別に判断を撤回しているが、作品に対する冒涜云々という観念的なことよりも、もはやインフラとも呼べる規模のサービスを展開している一企業が、その企業ルールによって情報統制を行ってしまい、一国を飛び越えて、勝手に人々の知る権利や表現する自由を狭める世界を作っているというのは、もはや危険だと感じたほうがいい。

もちろんこうなるのは、ありとあらゆるものが散乱するネット上には、本物の児童ポルノや犯罪に関わるものがあり、管理するために均一のルールを敷いてしまうという背景がある。

しかし例えば、「ナパーム弾の少女」は、少女本人の自伝が出版されており、その表紙はあの写真だ。
「ナパーム弾の少女」(Nick Ut/Canapress (c)Tous droits reserves)
これが児童ポルノとされたら、ベトナム戦争被害者の証言が、よりにもよって交戦国アメリカを代表する企業によって排除されるというめちゃくちゃなことになってしまう。たまたま有名な作品だから炎上したものの、ひっそりと排除されているものが実はほかにもあるだろう。こんなことに慣れて麻痺してしまったら、「常識」という感覚すら破壊されかねない。
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強すぎる力は「健全な表現」すらむしばむ

さらにこの問題は、GAFAそれぞれのプラットフォーム上だけで起きているのではない。2018年1月、ドワンゴ社のサービスを使って配信している有料ブロマガ内の連載に、フェイスブックの表現規制に関する記事を書いたのだが、ここにアップル社からの矢が飛んできたのだ。

公式に配布されている「ナパーム弾の少女」の画像を掲載して削除事件の経緯を説明したところ、ドワンゴ社から「アップル社より、当該写真が児童ポルノに当たるため削除要請があったので、削除してほしい」という通達が届いたのである。

記事はパソコン、スマホのブラウザ、メール配信、アプリなどいろいろな方法で読むことができるのだが、アプリ版に関しては、ドワンゴ社が「アップルストア」と「グーグルプレイ」から配布しているため、2社の基準に従わなければならないらしい。

会員制かつ有料の場所に書いたものにまでそんな無茶な話があるかと怒ったが、ドワンゴ社としてはどうすることもできないようで、「弊社としては児童ポルノには当たらないとは考えているのですが……」と平謝りするばかりの担当者が気の毒だった。

ギャロウェイ氏によると、アップルストアで大成功をおさめたアップルの手元資金は、いまやデンマークのGDPとほぼ同じとされる。多くの企業が、その土俵の上で商売するしかない。

弱小国よりも強い力を持ったGAFAは、同業者をどんどん駆逐し、「わが社のルール」を世界に押しつけ、そぐわないものは排除してしまう。この「多様化」が叫ばれる時代に、まったく真逆の世界へと推し進めてしまっているのだ。そして、人々からは考えることを奪い、欲求することすら奪おうとしている。

こんなふうにGAFAに向かって腹を立てても、爪ようじで戦車をつつくようなもので、結局アイフォンを手に取る身では、なんの意味もないのかもしれない。けれど、このまま惰性で受け入れて、GAFAの家畜まっしぐらなんて道はいやだ! 個人としての疑問と怒りを忘れたくない。

まずは、自分たちが置かれているテクノロジー時代の現実を理解しておくことが必要だ。

幸いにも、と言ってはなんだが、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』では、著者ギャロウェイ氏による冷徹なGAFA分析と、そしてかなり過激で発憤気味のGAFA批判とが怒涛のごとく展開されている。

本書を読んで、「GAFA怖い」と震えるだろうか。それとも「GAFAふざけやがって!」と憤るだろうか。後者の気概を持つ人々の中に、四騎士の支配の世界に殴り込む妙案が生まれるのだと私は思っている。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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