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2019.01.22

これからの時代を生き残るには、多動するしかない【vol.13】

シンガポールを拠点にアジアを巡るエンジェル投資家、加藤順彦ポールさん。この10年、東南アジアを中心に周る中で得た、投資の知識や処世術、そして関わるひととの熱いドラマを展開します。

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文/加藤順彦

世界のIT企業がシンガポールに続々と本部を設置

僕が広告会社NIKKOを営んでいたころ、1998年から2007年の約10年はインターネット広告が取扱の中心だったので、視察やカンファレンス出席のために年に1~2度はアメリカに行っていました。

2006年の秋、世界最大の広告会社グループ「WPP」の会長だったマーティン・ソレル氏とGoogleの往時のCEOエリック・シュミット氏が「これからは東南アジアとモバイルだ」と、同趣旨のことを目の前で言ったことに衝撃を受けました。デジタル広告業界最大のキーパーソン2人が違う場で、時をほぼ同じくしての発言だったのです。

彼らの率いる両社はほとんど同じタイミングでアジアの戦略拠点をシンガポールに置いていることにも気づきました。いや両社だけでなく、マイクロソフトやアマゾンといったITの巨人がシンガポールに東南アジアのヘッドクォーターを設置。シンガポールは国策として欧米のIT企業を誘致していたのです。

そして今の中国では、IT成功者が学校の副読本になる

同じ頃、「アリババ」のジャック・マーさんと「百度(バイドゥ)」のロビン・リーさんの存在を知りました。彼らはアメリカで手に入れた人材や技術、資金、ノウハウを祖国に持ち帰り、経済と雇用を生み出したことで、母国=中国で英雄視されていたのです。

中国の書店には彼らの評伝や発言集がうず高く積み上げられ、なんと!彼らのことは中学校の副読本にも掲載されるほど。ほんの数年前までインターネットにつながってもいなかった国で、彼らのような人物をロールモデルとして学校で教えていることに強い衝撃を受けました。

というのも日本では同じ時期、ライブドア事件(2006年)を契機に堀江さんだけでなく、藤田さん(サイバーエージェント)、三木谷さん(楽天)、熊谷さん(GMOインターネット)など、日本中のマスコミがネット系ビジネスのリーダーを総叩きにしていたからです。

「アリババ」のジャック・マーさんのように、国の外にある新しい世界の知見、インターネットの技術、事業グロースのノウハウ等を得て中国でマネタイズしている人のことを、中国では「海帰(ハイグイ)」と呼ぶことを知りました。中国語では「海亀」と書いてもハイグイと読むので、これは中国では掛けコトバになっているんですな。
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日本を揺さぶるために“日本脱出”

僕は2008年にNIKKOを退きシンガポールに移住するにあたって「日本を外から揺さぶり刺激を与える」ことを決意しました。これからの日本は内需が縮小していく。その一方で東南アジアのGDPは激増する。だから日本にも、中国で言うところの「ウミガメ」となるようなロールモデル、すなわち東南アジアから富や雇用、事業アイデアをもたらすことのできるリーダーとなれる人材が必要になるはずだ、と考えたワケです。 

ということで、僕はこの10年、シンガポールで日本人が起業する法人の、資本と経営に参加する(=出資するだけでなく役員として責務を担う)ことを通じて海外起業するアジアサイズの経営者を育んできました。まさしく僕が2003年から参画していた「LENSMODE」、そのCEO楢林悦朗さんは、当時も今も僕にとっての“ウミガメ”のロールモデルです。

若手に向けて日本・アジアで講演会を巡業

これから先の時代に東南アジア起点で日本を変えてくれる人、日本を面白くしてくれる人の事業を創る過程を考えるに、気づきや問題意識やアプローチを伝える、啓蒙する、煽るにはどうしたらいいのか考えました。

その結論は、発信する=アウトプットするしかない、と。しかも伝える相手は、次代を担う若い人たち。すなわち20~30代前半の若手社会人、大学生でないとないと駄目だ!と考えるようになりました。

幸運にも2009年から母校関西学院大にて非常勤講師を務める機会に恵まれ、これを機に若い人、あるいは若手経営者に東南アジア進出や起業を煽る趣旨の「若者よ、アジアのウミガメとなれ」と名付けた講演を積極的に引き受けています。大阪、東京、シンガポールを周っています。

おかげさまで“ウミガメ啓蒙”の講演回数は累計で100回を超えました。内容をまとめた書籍も上梓させてもらいました。インタビューを受け、その思いを記事にして頂いてきました。昨年までの10年で、講演や出版、インタビュー記事を通じて、あるいはFacebook、twitter、ブログ等で、僕の存在を知って事業のプレゼンをしに来てくれた、“あすなろ経営者”たちは400人を下りません。そして結果として現在の30社を超える参画先に繋がっています。
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移動することで新しい発見がある

昨年2018年2月、僕は起業家向けの講演会を岡山で行いました。参加して頂いた30人以上の方と名刺交換をしたのですが、その2か月後、オーストラリアのパースにいた僕の脳裏に、その中の一人が「県内の美容室を巡回して理美容ハサミを研いでいます」と言っていたことを突然思い出しました。

その夜、僕は名刺の人、安藤和範さんの連絡先を紐解き、「岡山で講演した加藤です。一度テレカンでお仕事について訊かせてください。そして僕の新事業のアイデアを聞いてほしいです」とメッセージ。それが私の家業「マルイチスチールセンター」にて現在、取り組んでいる新事業であるシザー研ぎのサービスに繋がっています

振り返ると講演を機に巡り合った人々との出会いがいかに今の日々に繋がっているか、と。まさにアウトプットなくして、次の道なしと感じます。知り合った多くの若者たちからは(若者からはオワコンとよく揶揄されている)facebookを通じて、転職し、起業し、事業を拡大し、家庭を持ち、親になったことなどを日々シェアしてもらっています。で、僕は彼らと出会うためにアウトプットを繰り出し続けてきたんだと。そして彼らを通じて新しい気づきを日々得られていると実感するのです。

● 加藤順彦ポール(事業家・LENSMODE PTE LTD)

ASEANで日本人の起業する事業に資本と経営の両面から参画するハンズオン型エンジェルを得意とする事業家。1967年生まれ。大阪府豊中市出身。関西学院大学在学中に株式会社リョーマの設立に参画。1992年、有限会社日広(現GMO NIKKO株式会社)を創業。2008年、NIKKOのGMOグループ傘下入りに伴い退任しシンガポールへ移住。2010年、シンガポール永住権取得。主な参画先にKAMARQ、AGRIBUDDY、ビットバンク、VoiStock等。近著『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録』(ゴマブックス)。

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