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2022.07.13

注目の現代アーティスト、カシン・ローン「アートはモテるものになりました」

ベルギーを拠点に活動する香港生まれの現代アーティスト、カシン・ローン。世界各地のコレクターから熱い視線を浴びる氏の個展「+-」が、過日、東京の「Kaikai Kiki Gallery」にて開催されました。彼にとってのアートとは……をインタビューしました。

CREDIT :

取材・文/武田一希 協力/Kaikai Kiki Gallery、©Kasing Lung

香港で生まれ、ベルギーを拠点に子供向け絵本のイラストレーターとして活動してきたアーティスト、カシン・ローン。2011年頃から中国語の絵本とコレクタブル・フィギュアのリリースに向けてソフビ製造会社の「How2work」とコラボレーションを開始し、2013年には初めて中国語で書かれた絵本『My Little Planet』が台湾で出版されると、大ブレイクを果たしました。

とりわけ、ウサギのような愛らしいルックスの「Labubu」をはじめとした「The Monsters」シリーズのキャラクターが有名で、世界中のコレクターから熱い視線を浴びます。

過日、そんなカシン氏が村上隆氏率いる「Kaikai Kiki Gallery」にて日本では2度目となる個展「+-」を開催。そこで彼にインタビューすると、その経歴や作風を紐解くヒントが人柄から伺うことができました。

現代アーティストのカシン・ローンと代表的キャラクターの「Labubu」

── まずは絵を好きになったきっかけを教えてください。

カシン 私は香港で生まれ、5〜6歳の時にオランダへ引っ越しました。ですが、そこでの言語が理解できなかったので、小学校1年生を2年2カ月ほどやるはめに(笑)。週5日みっちりとのプライベートレッスンを受けていたのですが、その一環として図書館や映画館、そして美術館に行ってアートというものを知ったんです。

特に印象に残ったのが、レンブラント・ファン・レインの「夜警」という作品。そうして徐々にアートにハマっていったわけですが、プライベートレッスンを担当してくれていた先生が「音楽を聴くことや映画を観ること、そのほかあらゆる経験がアートにつながる」と教えてくれて。さまざまな経験を経て画家を目指すことにしたんです。

── なるほど。日本には「急がば回れ」という諺がありますが、小学校1年生を長く続けたことで今があるとも言えそうですね。

カシン その通りですね(笑)。先生にはとても感謝しています。
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▲ 個展の目玉であった高さ約3mの大作。
── では、今回展示されていた作品でもっとも思い入れの強いものを教えてください。

カシン もちろんどれも気に入っていますが、特に思い入れが強いのは高さ3mほどあるこの大作です。Part1〜3の3枚で構成しているのですが、コロナ禍がストーリーになっています。ロックダウン中に自宅から見た風景なども織り交ぜていて、思い出深い作品ですね。

── すごい迫力ですね! カシンさんは制作スピードが早いと言われますが、この大作を描くのにはどれくらいの時間を要しましたか?

カシン 1枚1週間で、合計3週間です!

── それは早いですね! ところでカシンさんといえば「The Monsters」シリーズのキャラクターが有名ですが、それらの作品のインスピレーション源について教えていただけますか?

カシン キャラクターの源は私の周りの人たちです。家族や友人はもちろん、子供の友達もイメージします。ただ、ひとりをひとつのキャラクターに落とし込むことはあまりせず、いろいろな人を組み合わせてひとつのキャラクターとして完成させます。

ちなみに「Labubu」の歯は9本なのですが、これはいわゆるエンジェルナンバー「333」を足した数です。「333」は「モンスター」を象徴するナンバーで、以前に読んだことがある北欧伝説の本に由来しています。

── なるほど、周りの人たちを作品に投影しているんですね。絵本作家からキャリアをスタートさせて、作品にお子さんの友人まで採用するあたりにカシンさんの優しい一面が見て取れます。歯の数についても明確な意味があるとは気付かなかったです。差し支えなければ、制作時間以外は何をして過ごしているか教えてください。

カシン 家族との時間を楽しんでいます。自然が好きで旅行をしたり、登山をしたり。さっき、このギャラリーの近くの公園(有栖川公園)にも行って1時間くらい散歩しましたよ。リフレッシュする目的でもあるし、それがクリエイションにも繋がるんです。
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▲ 世界的に高い評価を得るカシン・ローンの作品。今回の個展に展示された作品も即完売とのこと。
── 日本の印象はいかがですか?

カシン もちろん大好きですよ! 家族でも何度も来日しています。東京、沖縄、それと神戸にも行きました。私もそうですが、特に家族が日本を気に入っているんです。

少し話は変わりますが、ここ(Kaikai Kiki Gallery)のオーナーである村上隆さんはベルギーでも大人気ですよ。娘がフラワーのマスクをしていたら、道で知らない人に「それはどこで買えるんだ⁉︎」って話しかけられたくらい(笑)。

── そんなに日本を気に入っていただいているなんてうれしいです。それにしても村上さんはやっぱり世界的に人気なんですね! 同じ日本人として誇らしいです。さて、唐突ですが、アートはモテると思いますか?

カシン 難しいことを聞きますね……(笑)。ですが、もちろんモテると思いますよ。ひと昔前と比べるとアートはより大衆的になっていますよね。

いまやライフスタイルの一部であり、さまざまな人が関わるジャンルに成長しました。ですからアートを通じることでコミュニケーションを円滑に図ることもできますし、パートナーと一緒に楽しむことも簡単になりました。まずは「アートを見に行こうよ」なんて誘ってみてはいかがでしょうか。
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▲ ステンレススチールで制作された立体も登場。
── 近年では若い人たちからの関心も非常に高くなりましたよね。大きな美術館もいいですし、日本には小規模なギャラリーもたくさんあるので、そういった場所を巡るデートも楽しそうです。では最後に、この先叶えたいこと、目標について教えてください。

カシン もっともっと展覧会を開いて、多くの人に作品を見てもらいたいです。コロナ禍の影響でいろいろなことが止まってしまいましたが、また以前のように世界中を回りたいですね。

私の作品を通じて、より多くの人が楽しみ、喜び、人生が豊かになってくれることを願ってこれからも制作に邁進していきます。また日本でも展示を行いたいと思っているので、皆さんぜひ足を運んでくれたら嬉しいです!


今回展示された作品は国内外のコレクターから問い合わせが殺到し、会期前にすでに完売してしまったそう。いま注目のアーティストであるカシン・ローンは日本が大好きとのことで、次回の展示は未定ながら意欲的に開催を検討しているとのこと。本人がそう言うように、次の機会にはぜひパートナーをお誘いのうえ、ぜひ足を運んでくださいね。

■ Kasing Lung (カシン・ローン)

1972年、香港生まれ。イラストレーターとして2011年より香港の「How2Work」とのコラボレーションを開始し、絵本やコレクタブル・フィギュアのシリーズをリリース。2013年、中国語で書かれた初の絵本『My Little Planet』を台湾で出版。2014年には児童文学作家のブリジット・ミンネとの共作による絵本、『Lizzy Wil Danssen(リジーはダンスがしたい)』をベルギーの出版社De Eenhoornより刊行して評判となり、ヨーロッパやアジアの各国で翻訳出版された。2015年、北欧神話に強い影響を受けた物語シリーズ『the Monsters』の制作に着手。同名のフィギュアのシリーズをHow2Workよりリリースし、なかでもウサギ耳のキャラクター「Labubu(ラブブ)」は絶大な人気で、これまでに300を超える色と形、サイズでリリースされている。近年は香港とベルギーを活動の拠点としてペインティング作品の制作に注力し、2020年、初のアート作品の個展となる「THIS IS WHAT IT FEELS LIKE」を東京のHidari Zingaroで開催した。

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