ヒゲは、自分プロデュースの強力な武器。コンプレックスを払拭し、内面のこだわりや品までもを可視化してくれる

立派なあごヒゲが印象的な第16代アメリカ大統領、エイブラハム・リンカーン。実はあのヒゲは大統領選投票日の数週間前に11歳の少女から届いた「ヒゲを生やしたほうがいい」という手紙がきっかけだったとか。面長でほおがこけ、険しい印象だった顔立ちをヒゲでカバーすることで、包容力と威厳を演出したリンカーンは、見事に勝利を収めました。これこそ、ヒゲによるセルフプロデュースの大成功例かと。
ちなみに鼻の下を剃り、あごヒゲからもみあげがつながる独特のスタイルは、彼の名にちなんで「リンカニック」と呼ばれ、メンズグルーミングの歴史にもその名を刻むことになりました。現代を生きる私たちにとってもヒゲは、自分をプロデュースする強力な武器。手入れが行き届いたヒゲは、コンプレックスを払拭し、内面のこだわりや品までもを可視化してくれるのです。
そこで、今回は都内に7店舗を構える理容室「THE BARBER(ザ・バーバー)」で活躍する理容師たちのヒゲスタイルをご紹介。顔立ちやヘアスタイル、ファッションとのバランスを考慮した、こだわりのヒゲスタイルを見せていただきました。
◾️ 内田宣位さん(47歳・THE BARBER 渋谷)
30代になって店長を任されたことから、「少しでも貫禄を出せれば」と伸ばし始めました

「THE BARBER 渋谷」店長の内田宣位さんがヒゲを楽しむようになったのは、30代になってから。当時オープンしたばかりの青山店で店長を任され、「少しでも貫禄を出せれば」と伸ばし始めたそう。現在はあごヒゲからもみあげまでを繋げた「オールドダッチ」スタイル。「生え方のクセを考慮して、このスタイルになりました。もともとヒゲは薄めで、特に口ヒゲはまばらで広がりやすいクセもあるので、すべて剃っています」
あごの中央は6ミリ、ほおやもみあげなどのサイドは3ミリにバリカンで揃え、1週間〜10日に1度長さを整えているのだそう。「あまり濃くないので、きっちりラインを出すスタイルは不向き。あえて整えすぎずぼかすようにして、無精ヒゲっぽさを残しているのがポイントですね。ただ長さは整えておかないと、無精ヒゲ風ではなく、ただの無精ヒゲになってしまうので気をつけています」

ヘアスタイルとのコーディネートにも内田さん流のこだわりが。「ワックスで毛先を動かすスタイルを楽しむ時はヒゲも限界まで伸ばして、ちょっとルーズさを出し、ジェルできちっとタイトに見せる日は、ヒゲも短めに揃えてきちんと感を演出します。フォルムは同じでも、ヘアスタイルとのバランスを見て長さを微妙に変えています。今日はちょうど中間くらいですね。やや丸顔なので、髪型のトップを立ち上げ、あごヒゲにもボリュームを出すことで、縦のラインを強調して大人っぽく見せています」
そんな内田さんが憧れるヒゲスタイルは、俳優の役所広司さん。「キッチリ作り込んでいないのに、清潔感があるんですよね。ご本人が醸し出されている雰囲気もありますが、白髪も多く無精ヒゲ風なのに野暮ったさがなくて、カッコいい。僕も最近ヒゲに白髪が混じってきたので、ぜひ目標にしたいスタイルです」

■ THE BARBER(ザ・バーバー) 渋谷
住所/東京都渋谷区円山町22-15
TEL/03-5728-6558(ご予約・お問い合わせ)
営業/平日10:00〜20:00(受付終了19:00)、土日祝9:00〜19:00(受付終了18:00)
休/月曜
◾️ 樋口祥胤さん(50歳・THE BARBER 青山)
口が小さいと表情が乏しい印象。広めにヒゲの幅をとることで口を大きく、表情豊かに見せています

「THE BARBER 青山」を束ねる樋口祥胤さんは、「オリジナルスタッシュ」にくちびる下のヒゲでアクセントを添えた、こなれたスタイル。「僕は口が小さいので、表情が乏しく見えがちなんです。口の幅よりも少し広めにヒゲの幅をとり、ワンポイントだけあごヒゲを残すことで口を大きく見せ、お客様との会話中にも表情が豊かに見えるようにしています」
童顔をカバーするため19歳から伸ばし始めたヒゲ歴は、早や30年。「そろそろ見た目が年齢に追いついてきた」と感じるようになったここ数年は、これまで伸ばしていたあごヒゲを剃り、口ヒゲだけを残した今のスタイルに落ち着いたそう。「口ヒゲには注目を集める効果があり、幅が狭いほど威厳を演出できるとか。ヒトラーのヒゲもその効果を狙ったと言われています。女性にとってのメイクと一緒で、僕のように口を大きく見せたり、輪郭をカバーしたり、顔の印象を自在に変えられるのがヒゲの魅力です」

ヘアスタイルは、ゆるくパーマをかけたセンターパート。最近増えてきた白髪と、以前入れた茶色のカラーが絶妙に入り混じって、毛先の動きが軽やかに見えます。
アイウエアとヒゲのコーディネートも気になるところ。「メガネはその日の気分や着こなしに合わせて選びます。今日のヒゲはボリュームを抑えた『オリジナル・スタッシュ』なので、シンプルな黒縁メガネを選びました。クリアフレームのメガネをかける日は、ヒゲも少しすいて軽くした『シャドー・スタッシュ』に。どちらかが強くなりすぎないように、バランスをとるのがポイントです」
憧れのスタイルは、俳優のジョージ・クルーニー。「無精ヒゲ風なのに、どこか品があってカッコいい。もし自分が女性だったら、こんなおじさんと食事にいきたいですね」

■ THE BARBER(ザ・バーバー) 青山
住所/東京都港区南青山2-27-20 101
TEL/03-6459-2330(ご予約・お問い合わせ)
営業/平日11:00〜21:00(受付終了20:00)、土日祝10:00〜20:00(受付終了19:00)
休/月曜
◾️ 一戸理人さん(42歳・THE BARBER 代官山アドレス)
最近の憧れは、ハーレー乗りのおじさん。お腹が出ていて長髪でヒゲもモジャモジャ、それがカッコいい(笑)

「フルビアード」から口ヒゲだけを独立させた「ヴァンダイク」スタイルがお似合いなのは、「THE BARBER 代官山アドレス」の一戸理人さん。実はほとんど手を入れず、生えたままの自然な形を生かしているのだとか。「口ヒゲは食事の邪魔にならないように、くちびるにかかる部分をハサミでカットし、上のラインも少しだけ削っていますが、形はほぼそのままです。あごヒゲは中央を15ミリで少し長めに。サイドにかけて徐々に短くなるようにグラデーションをつけ、もみあげへと繋げて、もみあげは9ミリで整えています」

気になった時にカットするだけで、毎日のお手入れは不要。自宅ではパナソニックの電動シェーバーで簡単に仕上げているそう。
ヒゲ歴は上京したばかりの20歳の頃から。当時はDragon Ashの降谷建志さんに憧れて伸ばし始めたそう。以前はもみあげを長く伸ばして口ヒゲに繋げ、あごだけを剃った「マトンチョップ」スタイルに挑戦したことも。「口ヒゲともみあげの間が薄いので、眉用のアイブローペンシルで描き足していました。やってはみたものの、かなり老けて見えるのでやめました。もう少し年齢を重ねてから、また挑戦してみたいですね」

仕事着の定番は、シャツにサスペンダー。今日は白シャツにお気に入りのタイムウォーンクロージングのサスペンダーでダンディにキメていますが、休日はもっぱらカジュアル。憧れのヒゲスタイルを尋ねると意外な答えが返ってきました。「最近憧れているのは、旧車のハーレー乗りのおじさんたちですね。みんなお腹が出ていて、長髪でヒゲもモジャモジャ。それがワイルドでカッコいいんですよ。僕自身もハーレーに乗っているので、あんなおじさんになりたいです」

■ THE BARBER(ザ・バーバー) 代官山アドレス
住所/東京都渋谷区代官山17-4 代官山アドレス・ザ・レジデンスサウス 1F 101
TEL/03-5428-5571(ご予約・お問い合わせ)
営業/平日10:30〜20:30(受付終了19:30)、土日祝10:00〜20:00(受付終了19:00)
休/なし
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