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2018.03.31

歌舞伎界の“甘党男子”中村吉右衛門と尾上松也がすすめる絶品おやつ

職人の技が凝縮された世界に誇る味……。甘党の男たちが最後に行き着くのは、和菓子の世界なのかもしれません。ジャンルは異なれど伝統を受け継ぎ、次代に伝える役割を担う歌舞伎界の“甘党男子”は、どんな甘味を愛しているのでしょうか。梨園の甘党男子代表、中村吉右衛門さん、尾上松也さんにおすすめを聞きました。

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文/清水井朋子 写真/菅野祐二

◆ 中村吉右衛門さん 

「疲れを癒してくれる“ほど良い甘さ”がお気に入り」

1944年生まれ。1966年、二代目中村吉右衛門を襲名。2011年に重要無形文化財(人間国宝)、2017年に文化功労者に認定。日本芸術院会員。4月は名古屋・御園座に出演。 (ポートレートフォトクレジット ©NARUYASU NABESHIMA)
1944年生まれ。1966年、二代目中村吉右衛門を襲名。2011年に重要無形文化財(人間国宝)、2017年に文化功労者に認定。日本芸術院会員。4月は名古屋・御園座に出演。 ©NARUYASU NABESHIMA
重厚な義太夫狂言で主人公の心情を細やかに表現し、圧倒的な存在感を放つ、中村吉右衛門さん。歌舞伎に登場する歴史上の英雄やリーダー、ドラマ「鬼平犯科帳」の主人公、長谷川平蔵などを演じて来たイメージから、さぞかしお酒が強いのでは? と思われがちですが、実はほとんど飲めないのだそう。好きで口にするのは、もっぱらフルーツやスイーツ。

「和菓子と洋菓子、どちらも好きですが、時々、無性に“あんこが食べたい!”と思うことがございます。」

甘さの基準は、幼い頃に、ばあやが小豆から煮てくれたあんこの記憶。
「まだ砂糖が貴重な時代で少量しか使えなかったからかもしれませんが、“甘味をおさえた甘さ”が子ども心にも美味しかったことを覚えています。その時の思い出もあり、今でも、甘すぎず、サイズも一つの量が大きすぎず小さすぎず……という、自分にとって“ほどの良い”和菓子がお気に入りです」
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◆ 空也(東京・銀座)

梨園や文人に愛された名物最中

瓢箪を象った最中は、二、三口でいただける小ぶりなサイズ。
瓢箪を象った最中は、二、三口でいただける小ぶりなサイズ。
京都「鍵善」のくずきり、名古屋「むらさきや」の水ようかんなどと並んで、吉右衛門さんが愛する和菓子が、東京銀座・並木通りに店を構える「空也」の最中。明治17年に創業し、終戦後、現在の銀座六丁目並木通りに移転、夏目漱石や林芙美子、舟橋聖一といった文豪をはじめ多くの人に愛され続けている銘品です。

吉右衛門さん好みのあんこは、現在も店舗の上階、10坪ほどのスペースで3つの釜をフル回転させてつくられます。北海道産の大粒の小豆とざらめだけの、素材そのものの味。パリッと香ばしい皮は、その昔、初代の店主が、九代目市川團十郎に火鉢で炙って供された最中が美味しかったことに着想を得て生み出したものだそう。吉右衛門さんの祖父であり養父であった初代中村吉右衛門、そして実父の初代松本白鸚も贔屓にするなど、梨園との縁も深いのです。

「実父の初代松本白鸚は昔気質で、好き嫌いを口に出して言わない人でしたから具体的に聞いたことはありませんでしたが、私と同様お酒が飲めなかったので、多分、和菓子好きだったのだと思います。こちらは小さい頃から、養父や実父のもとに贈られてくるものを当たり前のようにいただくばかりでしたが……(笑)」
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もらってうれしい手土産として名前が挙がることの多い空也の最中は、ほぼ毎日、予約分だけで開店間もなく売り切れてしまいます。確実に入手するには数日前までにお店に出向いての予約を。(予約は電話でも受け付けていますが、大変かかりにくいので、直接店頭でがおすすめ)

「手に入りにくいものをわざわざ心を尽くして調達してくださった、と思うと、嬉しさ、有り難さ、美味しさも増す気がしますね」と、吉右衛門さん。

実際に編集部が空也のお店に取材に訪れたとある平日の夕刻も、予約を依頼する顧客が引きも切らず訪れており、その中のかなりの人数がスーツ姿のエグゼクティブ男性でした。

「甘党でも辛党でも、美味しいものをいただけることは何よりの幸せ。口の中に程の良い甘さが広がる和菓子が、疲れを癒してくれるものと信じています」

◆ 空也

住所/東京都中央区銀座6-7-19 
予約・問い合わせ/☎03-3571-3304
営業時間/10時〜17時(土曜日は16時閉店) 
定休日/日曜・祝日

◆ 尾上松也さん 

豆の食感&寒天と蜜のバランスがもたらす至福の味

1985年生まれ。1990年二代目尾上松也を名のり初舞台。歌舞伎以外にもミュージカル、テレビドラマなどで幅広く活躍。4月は第三十四回 四国こんぴら歌舞伎大芝居、5月は東京・歌舞伎座に出演。 ©KENTA AMINAKA )
1985年生まれ。1990年二代目尾上松也を名のり初舞台。歌舞伎以外にもミュージカル、テレビドラマなどで幅広く活躍。4月は第三十四回 四国こんぴら歌舞伎大芝居、5月は東京・歌舞伎座に出演。 ©KENTA AMINAKA)
歌舞伎の舞台ではもちろん、ミュージカルやテレビドラマ、ディズニー映画の声優にまで活躍の場を広げ、“花形”と呼ばれる若手歌舞伎俳優の中でも人気が高まる一方の尾上松也さん。和菓子、洋菓子を問わず甘いものが大好きな、歌舞伎界きっての“スウィーツ男子”です。

「おつかいものにするのは『鎌倉歐林洞』のパトロン、『清月堂本店』の銀座だより、『満月』の阿闍梨餅。石川恋さんからの差し入れでいただいて美味しかった『パオン昭月』の生クリームあんぱんもお気に入りです」

そんな甘いもの好きが知られて、昨年にはドラマ「さぼリーマン甘太朗」の主演もつとめました。人気漫画を原作に、外回りの営業マンが仕事の合間に東京中の甘味処でスウィーツを満喫する物語。

「仕事とは言いながら毎回スウィーツの名店に行き、撮影の際には何回も何回も食べることができる……無上の幸せでした」
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◆ いり江(東京・門前仲町)

素材の味を堪能できる究極の豆かん

豆かん670円(税別)。テイクアウト、FAXでのお取り寄せは480円(税別)。
豆かん670円(税別)。テイクアウト、FAXでのお取り寄せは480円(税別)。
今回、おすすめいただいた豆かんも、ドラマ「さぼリーマン甘太朗」を通じて知ったそう。

「ドラマのテーマになったことで豆かんという存在自体を初めて知ったのですが、豆と寒天と蜜だけの、非常にシンプルな食べ物です。その分、店によっての美味しさがあり、豆の食感、味の違いを楽しむことができます。なかでも門前仲町の「いり江」の豆かんは、主役の豆の食感がちょうど良く、それにマッチした寒天とみつのバランスも好みに合いました。僕は白蜜でいただきます」

素材そのものの美味しさを見抜いたのは、さすが甘味にうるさい松也さん。実は「いり江」はそもそも先代が蒟蒻・寒天の製造からスタートさせたお店なのだそう。現在も毎朝5時から天草を仕込み、煮汁を固めて一晩寝かせ、自家製の寒天で勝負しています。全国に数ある甘味処でも、自分の店で寒天から製造しているというのは稀なこと。プリプリと弾力がありながら舌の上で優しく崩れ、心地よい喉ごしを与えてくれる寒天に、全国からファンが集まります。
豆は、北海道富良野産の赤えんどう豆を使用。6時間から8時間かけてじっくり弱火で炊いた後、見た目や食感の邪魔になる割れた豆を丁寧によりわけて提供しています。
片時も釜の側を離れることなく見守ることで、ふっくらと炊きあがる豆。
片時も釜の側を離れることなく見守ることで、ふっくらと炊きあがる豆。
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松也さんが豆かんを味わう時のお供は、抹茶。

「和菓子には抹茶が合うと思います。ただ、小さい頃から家族でよく食べていた浅草の揚げ饅頭には、牛乳。揚げ饅頭と牛乳の組み合わせは最高です! 」

甘味への愛情とこだわりは、ご自身が演じた甘太朗にも負けません。ドラマの影響で、「いり江」のお店にオンエア後は“お一人様スウィーツ男子”の来店が増えたとか。

「“男は甘いものは食べない”という時代は終わったのでは。僕自身、甘いものが好きだということで肩身が狭かったり、恥ずかしく思ったことはありません。自分が好きなものは好き、嫌いなものは嫌いということで良いのではないでしょうか。」
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◆ いり江

住所/江東区門前仲町2-6-6
お問い合わせ/☎03-3643-1760
営業時間/11時〜19時30分(L.O.19時)、土燿・日曜・祝日11時〜18時30分(L.O.18時)  
定休日/水曜(祝日および1,15,28日は水曜日も営業)

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