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2018.01.07

絶対美味しい! 究極の炒飯の作り方 第1回/広尾「春秋」パラパラ炒飯の極意

「春秋」の炒飯は卵とネギだけでつくる究極のシンプルタイプ。なのに最高に美味しい。ごはんはパラパラ、卵はふわふわ、ネギの甘い香りが食欲をそそる。その秘密とは?

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文/柏木智帆 写真/JamesGray

炒飯(チャーハン)、手軽に出来るのにこれほど味に違いの出る料理はめったにありません。美味しい炒飯が作れる男は絶対カッコいい。モテるに違いない。というわけで、本当に美味しい炒飯をつくる極意を求めて「炒飯が絶品」と評判の店を訪ねました。
第1回は東京・広尾にある中華料理店「春秋」。ここの炒飯の具材は、卵とネギだけ。シンプルだからこそ味わえる炒飯の妙を堪能できるお店です。
ねぎと卵だけのシンプル炒飯

ヌーベルシノワの先駆け。絶品炒飯はコースの締めに

日比谷線「広尾」駅から徒歩10分。日赤通り沿いに店を構える「春秋」は、一見、中華料理店とはわからないシンプルな佇まい。オーナーの宮内敏也さんが約30年前にオープンしたヌーベルシノワの先駆けです。入口の扉に打ちつけられた中華包丁を引いて店内に入ると、薄暗く隠れ家的な雰囲気。細い通路を行くと、突き当たりには丸テーブルが配置されたモダンな設えの客席が広がっています。
この店にはメニューはなく、おまかせコース料理(税込1万5000円から・別途サービス料10%)のみ。炒飯は希望すればコースの締めに追加注文できます。
ごはんに加える具材は、卵とネギだけ。調味料も自家製ネギ油と塩と胡椒だけと、極めてシンプルです。なのに最高に美味しい。その秘密とは何なのでしょう?

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炊いたごはんを冷まして冷蔵庫で2日寝かせる

炊いたごはんを冷まして冷蔵庫で2日寝かせる

ごはんは、国産コシヒカリ。産地は時期によって変わり、この日は宮城県産。粘りがあってもっちりとしたコシヒカリで、果たしてパラパラ炒飯が作れるのでしょうか?

ところが、鍋に投入する前のごはんを見せてもらうと、生米かと思うほどパラパラ。

「炊いたごはんは完全に冷まして冷蔵庫で2日ほど置いたものを使います」と教えてくれたのは、宮内氏の妻・加久子さん。
「冷凍庫に入れてしまうと中に霜が入り、炒めたときに水分が出てしまうので、冷蔵で管理します。ごはんは炊いたらすぐにバットに移して、空気が入るように隙間を作りながら広げ、あら熱をとります。ラップは密閉させずにふんわりと。冷蔵庫で1日置いたらごはんをひっくり返して、また冷蔵庫で1日置きます」

冷蔵庫の中でも水滴が入らないように、置く場所や向きなどにも気をつけながら水分量を調整していくと、生米のようでありながらしっとり感もあるお米に仕上がるのだそうです。

お米のでんぷんをアルファ化させてからベータ化させる

実はお米は加熱や水分量の増加によって、デンプンを「アルファ化」させると、ふっくらとやわらかくなり、消化しやすくなります。これが、いわゆる炊飯。そして、この状態から、冷却や乾燥によって硬い状態に戻ることを「ベータ化」と言います。常温では水が入り込むことができず、そのまま食べても消化が難しい状態です。
この店では冷蔵庫で「ベータ化」させたお米を、最後に高温でさっと炒めることで、絶妙な食感を保ちながら消化しやすい状態に戻しています。

お米のデンプン特性を利用する。これがパラパラ炒飯の秘訣だったのです。

さっそくこのお米で宮内氏に調理してもらいます。
カンカンに熱くした中華鍋に、大きなお玉一杯分ものネギ油を投入して、鍋に油をなじませたらすぐ取り出します。その後、新しいネギ油を大さじ3杯ほど入れます。

この自家製ねぎ油も味の秘訣。たっぷりの大豆油にネギの青い部分を大量に入れて、焦がさないように弱火でじっくりと熱することで、ネギの甘みと香りを引き出しています。この油の香りをかぐだけでも、甘みや香ばしさが伝わり食欲が刺激されます。

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ごはんと同量の刻みネギをどっさりと投入

ごはんと同量の刻みネギをどっさりと投入

熱々の鍋に全卵1個半ほどを投入して熱と油で卵がぶわっと膨らんだら、すかさずお玉でささっと卵を炒めます。

「油の量は多いですが、卵が吸ってくれるので、べちゃべちゃになりません。アレルギーや苦手な食べものには対応していますが、卵無しの炒飯だけはお断りせざるを得ません」と加久子さん。それだけ炒飯にとって卵の役割は大きいのです。
卵を炒め始めて10秒ほどしたらごはんを入れ、鍋をふるいながら炒めていき、塩、胡椒で味を決めます。50秒後には、ごはんと同量ほどの刻みネギをどっさりと投入。それから30秒後には完成しました。鮮やかで美しい手さばき。皿に移された炒飯は驚くほどパラパラです。
ごはんがほろほろとして軽やかな食べ心地。
おなかいっぱいで食べられない…と思いきや、すっとお腹におさまる。
調理前の刻みネギは辛味がある強い香りでしたが、調理後の炒飯のネギは甘い香りに変わっています。ごはんは大量の油を使ったとは思えないほど軽やかで、粒と粒の間に空気が入ってほろほろ。卵はふわふわ。ごはんはしっかりとした食感。そして、ネギはシャキシャキでありながらも、生ネギ特有の臭さがなく、絶妙な火加減です。

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火力ではなくお米の下処理と具材のタイミング

火力ではなくお米の下処理と具材のタイミング

ネギ油とネギをまとったごはんは、噛むとじわりと旨味が感じられます。この軽やかさならば、コースで7、8品食べた後でも、すっとお腹におさまります。

炒飯はザーサイなどと一緒に供されますが、直前のコース最後の料理がフカヒレの姿煮なので、「この(姿煮の)タレと一緒に食べたいから早めに炒飯を持ってきて」と言う常連客も多いそうです。
「中華は火力ですよねとよく聞かれますが、主人は家でも同じ炒飯を作るので、火力はあまり関係ありません。お米の下処理と、具材のタイミングが大事です」と話す加久子さん。そのタイミングを聞いてみました。

「ネギの辛さが甘みに変わるところで火を止める。炒めすぎると、ネギの量が多いため、べちゃべちゃになってしまいます。ネギやお米は時期によって水分量が違うため、具材を投入するタイミングや炒め時間は数字では言えません。うちのお客さんでもご自宅で10回くらい作って、『ようやくなんとなくいい感じになってきた』とおっしゃいます。何度もやってみることですね」

練習あるのみ。まずは、彼女と一緒にお店で味わってみましょう。

◆ 春秋

住所/東京都港区南青山7-14-5
営業時間/18:00〜23:00
定休日/日曜日
URL/http://shunju1986.com/
予約・問い合わせ/☎03-3407-4683(予約受付は15:30から)

●完全予約制。料理はコースのみ。税込1万5000円から。サービス料別途10%

●柏木智帆

元神奈川新聞記者。取材を通じてお米とお米文化に興味をもち、お米農家を経て、現在は「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに執筆活動を続けている。ちなみにお米でできた日本酒も大好き。

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