• TOP
  • GOURMET
  • コロナ禍で生き残り、進化した一流店のお取り寄せ3選

2021.04.15

コロナ禍で生き残り、進化した一流店のお取り寄せ3選

終わりの見えないコロナ禍のなか、生き残りをかけて熾烈な闘いを強いられているのが飲食業界だ。この1年で明暗を分けたのは? どんなお店が生き残る? 食通としても知られる柏原光太郎さんおすすめのお取り寄せもご紹介。

CATEGORIES :
TAGS :
CREDIT :

文/柏原光太郎 

新型コロナウィルスにより飲食店の売り上げが厳しくなり始めたのは昨年春、ちょうど1年前くらいのことだった。緊急事態宣言が出され、急激に人の出が少なくなり、イートインだけでは売り上げが立たなくなった飲食店は、テイクアウト、デリバリー、通販に乗り出していった。

当時はイートインを休業している店も多かったが、その空いた時間で今後の飲食業界の推移とどうしたら持続できるかを考え抜いた飲食店と、様子見を決め込んだ店とで大きな差がその後ついたと私は思う。
▲ 「霞町三〇一ノ一(カスミチョウサンマルイチノイチ)」は他店に先駆けていち早くテイクアウトやドライブスルー方式を採用(画像はお店のFBより)。
如実な例は、どこよりも早くデリバリーを始めた麻布十番や恵比寿に店舗を展開する「右京グループ」と西麻布「霞町三〇一ノ一」だった。まだウーバーイーツや出前館の話題も少なく、「手数料高いらしいよね」「デリバリーやったところで儲からなくちゃしょうがない」などという議論ばかりで躊躇している飲食店が多かったときに、いち早く乗り出し、多彩なメニューを作り、近所には自分で配達に行ったり、ドライブスルー方式を行ったりした。

まだライバルがほとんどいなかったことが功を奏し、テレビに取り上げられたり、SNSで拡散された。なかでも右京グループは客の意見を取り入れて「大人のお子様ランチ」やご飯なしの酒肴セットなど人に寄り添うセットを開発。その過程で獲得した新規客が100個以上の弁当を頼んでくれるようになったという。ネットの時代は躊躇するより、まずは行動。意見を聞きながら修正するという過程が一番大切だということがよくわかる。
▲ 「治作」が始めた「ごちそう箱」引き出し3段重(1人前)4000円。
個人的には築地の料亭「治作」が始めたテイクアウト弁当も興味深かった。治作は都内最大規模の料亭で、一般にはなかなか行かれない場所。ところがコロナ禍で「ごちそう箱」という名前の弁当を始めたのだった。

料亭で出される日本料理は作られてから食べるまで、時間が経つことを想定されているものが多い。カウンター割烹が全盛の今、そういう料理はともすれば古い形式と思われてしまうが、テイクアウトなら時間が経っても美味しい料理を提供できる技術を最大限に活かせる。接待がなくなったが故の苦肉の策だったのかもしれないが、料亭が直接、普通の客に向き合う決断をするのはかなりの決心だったと思う。
PAGE 2

進化する一流店のお取り寄せ

◆治作の水炊き

▲ 筆者が運営している「文春マルシェ」で20-21年冬最大のヒットとなった「治作」の水炊きセット。©文藝春秋
2人前8960円で酒肴と炊き込みご飯のセットが味わえるというのもリーズナブルさも魅力でさっそく注文したが、2人前どころではない分量で大満足。それが縁で、いま私が運営している食のお取り寄せサイト「文春マルシェ」で治作の水炊きセットを出店していただくことになり、この冬の鍋の通販で最大のヒットとなったのも、とてもうれしい思い出だ。いまは「春のごちそう箱」を始めているが、これもすごくおいしそうだ。

◆「ラッセ」の「チーズラビオリ」

目黒のイタリアン「ラッセ」が始めたチーズラビオリのお取り寄せも衝撃的だった。シェフの村山さんは仕事の合間にサイゼリアでアルバイトをし、その経営手法を店の効率化に活かしたことで知られるが、コロナに対する危機感を持ったのも早かった。Facebookに彼はこう記す。

<今年1月初旬、コロナが武漢で感染してる記事をネットで読んだ瞬間すぐにマスクをラッセスタッフ全員分4ヶ月分を買った。パルスオキシメーター(血中酸素濃度計)も買った。その時は、まだ日本のメディアはどこもコロナの事を放送していないんじゃないかな? 多分。>

10年前のラッセ創業当時から、飲食店でありながらフォーマットを作る側にシフトチェンジしようと決めていた村山さんにとって、コロナはある意味、背中を押す好機だったのだろう。
▲ 「ラッセ」のスペシャリテである「チーズラビオリ」を驚きの価格で販売。ラビオリ(冷凍10個入+チーズソース)約2人前1000 円(クール便による送料別)
お取り寄せ専業のメーカーではないレストランがお取り寄せを始めるには数々のハードルがある。保健所との折衝やデジタル技術の勉強も大変だし、日々の配送の手配も面倒だろう。値段設定も悩ましい。だが、村山さんは地道に保健所に通い、許可を得たことをSNSで告知しながら、5月には、名物のチーズラビオリのお取り寄せを始めた。当初は自社サイトで細々と始めたが、常連の応援でうわさがうわさを呼び、ついにはテレビにも登場。サイトのサーバーがダウンするほどの人気になっている。
PAGE 3

◆「にょろ助」の「うなぎ蒲焼」

中国郷土料理を日本に広めたパイオニア的飲食企業で300店以上を運営する「際コーポレーション」は、名物オーナーの中島武さんが陣頭指揮を取ってさまざまな話題を自ら作っていった。

この1年間、中華おばんざい、中華朝食開始など、コロナのフェーズに合わせたニュースを仕掛けていったが、現在ブレイク中なのは「にょろ助」といううなぎ店を中心に全国に拡大中の「うな重2尾入りで3900円!」というプロモーション。
▲ [にょろ助 銀座」国産うなぎ蒲焼は文春マルシェでも販売中。©文藝春秋
近年、どんどん値段が上がっているうなぎは1尾でも4000円台が当たり前という中で倍の量で3000円台を打ち出しただけでなく、中島社長が自らSNSで発信、さらには店の焼き場で朝から焼いている。そして既存の別形態の店をデリバリー中心のうなぎ店にしたり、自社サイトのうなぎ販売も強化している。もちろん、文春マルシェでも「にょろ助 銀座」のうなぎの蒲焼、白焼きは買えますよ(笑)。
このように見ていくと、この1年間で印象に残っているお取り寄せやデリバリーは「なりふり構わず」行動した店ばかりだ。イートイン以外の形態ははじめての店がほとんどだろうけれど、どこも試作を何度も行って、冷めても美味しい料理、冷凍しても美味しい料理を完成させていった。

保健所やデジタル技術など、これまで遠かった分野の研究も行い、時にはSNSでぼやきながら日々前進していったところが、美味しいお取り寄せやテイクアウト、デリバリーを生み出した。

今後は料理だけを考えているだけでは料理人は生き残れない——ずっと前からみんな気づいていながら行動に移せなかったことをコロナが動かしたんだと思う。その一方、客のほうはテイクアウト、デリバリー、お取り寄せなど多彩な選択肢を経験したからこそ、シェフが目の前で料理を作ってくれ、それを食べながら美味しい酒を飲み、会話を楽しむ外食の良さも再発見できた。まさに多様な食の楽しみを体験でき、楽しみの幅が広がった1年だったともいえる。

柏原光太郎(かしわばら・こうたろう)

1963年東京生まれ。(株)文藝春秋で食のEC「文春マルシェ」を担当。十数年前から食の魅力にはまり、食べるだけでなく、作る楽しみを普及させようと男性が積極的に料理をするコミュニティとして、2018年に「日本ガストロノミー協会」を立ち上げる。
LEON.JPでは以前、最愛の娘に向けて作り続けた弁当について執筆。
「パパから中学生の娘へ――332個めの弁当を作り終えた朝に綴る、父と娘の毎日弁当」
「旅立つ娘のために元祖弁当男子のパパが作った最後の弁当、その中身は?」

インスタグラム@kashiwabara_kotaro

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

LEON.JPの最新ニュースをお届けします。

RECOMMEND FOR YOUおすすめの記事

    RELATED ARTICLES関連記事

    SERIES:連載

    READ MORE

    買えるLEON

      SPECIAL

        コロナ禍で生き残り、進化した一流店のお取り寄せ3選 | グルメ | LEON レオン オフィシャルWebサイト