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2017.08.30

サンモトヤマ社長に聞く、変わったGINZA、変わらない銀座

CREDIT :

文/川田 剛史 写真/松井 康一郎

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現在、銀座にたくさんある老舗のなかでも、その名を知らぬもののない名店がサンモトヤマです。創業から現在に至るまで、世界中から優れた製品を取りそろえ、いつの時代も最先端のファッションを提案してきたサンモトヤマは、まさに日本の上質なライフスタイルをリードしてきた存在。そんなサンモトヤマは、1955年に有楽町駅近くで創業し、まもなく日比谷、銀座へと出店。そのサンモトヤマを2代目社長として見つめ、まさに銀座の顔である茂登山貴一郎さんに、銀座通だからこそご存じの、街の魅力を教えていただきました。

●茂登山 貴一郎/サンモトヤマ代表取締役社長

1959年東京生まれ。1979年にリセ・フランコ・ジャポネ・ド・東京を卒業。在学中にバカロレア(高校卒業国家試験卒業)を取得し、1979年渡に渡仏し、EDC(幹部養成学院)に入学。1982年同学院卒業、 帰国後、インターナショナル サンモトヤマ入社。1985年サンモトヤマに入社し、取締役に就任する。2007年から現職。

茂登山さんは、幼いころから、ご両親に連れられて銀座で買い物や食事を楽しみ、銀座の変遷を肌で感じてきました。「いえいえ、もっと古くからの老舗の旦那衆がいらっしゃいますから自分ばかりが銀座の代表というわけではありませんよ。『松崎煎餅』の旦那さんなんて、まだ舗装されていなかった時代の晴海通りでキャッチボールをされていたそうですよ」と、ご本人は控えめにおっしゃいますが、飛び出すお話はどれもこれも興味を引くことばかり。
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「記憶に残る最初の銀座はどんな思い出ですか」

まずはこどもらしく、甘いものの思い出です。あんみつは「とらや」、「立田野」へ行くことが多かったですね。「松崎煎餅」のお茶席では、黒みつきなこのかき氷もよくいただきました。そうそう、クリスマスにはブーツ型の容器に入った「不二家」のお菓子も忘れられません。そして銀座は昔から娯楽の街でもありました。ゴジラやディズニーの映画が封切られるたびに、連れていってもらったことが強く印象に残っています。いまはもうありませんが、三越と松屋の間にあった「おもちゃのキンタロウ」も楽しみのひとつでした。とにかく子供なりにも楽しめるものが、銀座にはたくさんあったわけです。銀座はコーヒーのお店の多い場所でしたから、中高生くらいになると、コーヒー店へも行きました。お小遣いが2000円なのに、一杯500円のコーヒーを飲んだりしましてね(笑)。
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茂登山さんのブログより「松崎煎餅」の黒みつきなこのかき氷

「いまは銀座でどのようにお過ごしですか」

スターバックスで若い女性スタッフにコーヒーを淹れてもらうのが楽しいと思えたり、明るいうちから「とり銀」(銀座本店)でビールに焼き鳥なんてこともあったり(笑)。一方で昔からの「銀座トラヤ帽子店」や「銀座タカゲン」(ステッキ専門店)、「壱番館」といった老舗にも足を運びます。銀座の名店の旦那衆とつながりを持ちたいし、一緒に何かできればいいなという考えもありますから。新旧、衣食住に関わらず、リサーチの目で、銀座の色々な場所を見ていますよ。

「銀座の魅力とはひと言で言うと?」

人と人のつながりでしょう。名店の主人に出会えるのが銀座をめぐる楽しみだと思います。飲み屋、シャツ屋、どんなお店でも違いはありません。商品を買う、食事するといった目的を果たすだけではなく、よもやま話を通じて情報収集ができる。これは楽しくて豊かな時間と言えるでしょう。
 
銀座には主人との関係において独特な雰囲気もあります。たとえば、私がよく顔を出すのは老舗のショットバーです。バーの数だけスタイルがあります。先日、70歳のお祝いが話題になった上田和男さんが店主を務める「テンダー」は、つい盛り上がって声が大きくなると「ちょっとお静かに」とご指導が入ります。上田さんは「カクテルは心で作るもの」とおしゃるような方です。
 
「他人のうわさ話をしない、べらべらとおしゃべりをしない、タバコを吸うときは隣席に一言お断りを、政治・女性・仕事の話はしない」。これらはほんの一例ですが、客は所作をはじめ、銀座のバーから学ぶものがいくつもあります
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「行きつけのお店を銀座で作るにはどうすればよいのでしょう」

常連になって、特に飲食店で自分のお決まりの席を持てればなお面白いでしょう。行きつけでは店に足を踏み入れた瞬間に、店の人との距離が縮まります。また困った時に無理をお願いすることができるのも行きつけの良さですよね。
銀座は誰でも主役にしてくれる街です。しかし、行きつけの楽しさを知るにはある程度の投資が必要ですね(笑)。
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行きつけのMORI BARでマティーニを楽しむ茂登山さん。

茂登山さんに聞く、“銀座で行きつけ”の作り方

1.そのお店を知っている人と一緒に行く
すでに常連になっている人の紹介だと印象も強く、また丁寧な扱いが期待できますね。これは王道と言えそうです。
 
2.自ら勇気をもって扉を開ける
知り合いがいなくとも、一歩を踏み出す勇気は持っておくべし。また、遠慮しすぎずに自分の心の扉も開けて積極的に行きたいものです。
 
3.行きつけの店の人に紹介してもらう
「馴染みの店の主人に『あの新しいお店が気になっているんだよね』なんて相談すると、同業でも紹介してくれることがあるんです」。銀座には店主がコンシェルジュ的な役割を担う文化があるそう。ただし、気心が知れた店主にお願いするのはもちろんのこと、お願いできる雰囲気かどうかは会話の流れや、日々のおつき合いも重要。

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『デキるオトコのグルメなセトリ番外編』
 茂登山貴一郎さん(サンモトヤマ代表取締役)

ひとりの時間を楽しみたいときには

◆ MORI BAR

ひとりになりたいときにはふらりとこちらへ。店主でありチーフバーテンダーの毛利隆雄さんは伝説のバーテンダーとして知られています。もともと高校球児だった毛利さんのお店とあって、落ち着いた店内には阿久 悠さんが高校球児のために書いた歌詞や、超大物野球選手のバットなどが飾られています。そんなMORI BARでまず注文するのはマティーニ。毛利さんにお会いすると疲れが癒されるし、僕にとっては神様のような方です。
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◆ MORI BAR

住所/東京都中央区銀座6-5-12 新堀ギタービル銀座10F
営業時間/18:30~3:00(土曜~23:00)
定休日/日曜、祝日
予約・お問い合わせ/☎03-3573-0610

●チャージは税抜き1600円

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◆ BAR SLUGS’

ヴィンテージ・ハードリカー専門の「バー・スラッグス」にも時々ひとりで伺います。オーナーの佐々木昭憲さんは元写真家であり、オールドハーレーの持ち主でもありと、多彩な趣味の持ち主でお話も面白い。エイジングしたシガーを吹かしながら、LPから流れるジャズの調べに酔っていると日頃のストレスも忘れてしまいますね。
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◆ BAR SLUGS’

住所/東京都中央区銀座8-7-6 平塚ビル 4F
営業時間/18:00~1:00
定休日/土・日・祝
予約・お問い合わせ/☎03-3289-2123

大切なお客さまをもてなすなら

◆ 銀座寿司幸本店

おもてなしは来客に合わせるのが基本です。ですが、海外からの大切なお客さまをご案内するなら「銀座寿司幸本店」にお連れすることが多いかな。明治18年創業と、日本でも有数の歴史あるすし屋ですが、ここは僕が小学校1年で初めて生魚を食べられるようになった思い出の店であり、ご主人の杉山衛さんとは親子3代に渡っておつきあいしています。
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◆ 銀座寿司幸本店

住所/東京都中央区銀座6-3-8
営業時間/11:30~22:00(L.O)
定休日/祝日の月曜日
予約・お問い合わせ/☎03-3571-1968

家族と食事に出かけるなら

◆ 鳥長

先代から50年以上のお付き合いで、僕が幼稚園の頃から通っている焼き鳥の名店。いまも家族でよく伺います。もともと平らだったカウンターは、表面がうねるほどに長年磨き込まれていて歴史の重みを感じさせます。
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◆ 鳥長

住所/東京都中央区銀座8-6-22
営業時間/17:00〜21:00
定休日/土・日・祝
予約・お問い合わせ/☎03-3571-4650

◆ 南蛮 銀圓亭

昔、先代(現会長)が、ヨーロッパに出かけたとき、ベルリンでの乗り換えに12時間もの待ち時間があったために、動物園に行ったそうです。するとライオンの檻の前に日本人らしき人がいて、何気なく会話をしたのがこちらのお店の方。そこから始まって、なんと約50年のお付き合い。「小川軒」から受け継いだという伝統的な洋食はなにをいただいてもおいしいですよ。

◆ 南蛮 銀圓亭

住所/東京都中央区銀座5-4-8 Carioca 7F
営業時間/11:30~14:30(L.O.14:00)、17:30~21:30(L.O.21:00)
定休日/日曜日、祝日
URL/http://nambanginentei.com/
予約・お問い合わせ/☎03-3573-1991

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銀座の勝負はこれから。変わりゆく銀座に期待。

「かつて明暦の大火(1657年)に続く、銀座大火(1872年)で焼けた銀座は、他に先駆けて、近代的な石造りの火災に強い街に生まれ変わりました。銀座は新しいものも古いものも集まる多様性のある場所なのです。1970年代に上陸したマクドナルドの最初のお店も銀座でした。今の顔ぶれを見ると、出店すべきブランドが出揃ったと感じます。ユニクロやザラなどファストファッションが、出店し始めたころは、違和感を覚えた人たちもいたでしょう。
 
けれど、銀座には昔からいろいろなものがあったし、今後もそうあるべきです。街が国際化していくには、様々なブランドが出店しなくてはいけないのでは? ニューヨークやロンドンを見ても、いまの銀座と同じようにいろいろなブランドが出店していますからね。これまでの銀座の変遷で特に印象深いのは、中央通りに直営店を持つブランドが増えたことと、さきほどのファストファッションの登場でしょうか。銀座は社会的な変化に順応してきたし、順応しやすい街だと思います。
 
日本人は食べ物をはじめ、いろいろなカルチャーをなんでも受け入れます。外国で生まれた文化や手工芸が日本へ伝播する途中でほかのものと混ざり、世界の端の日本にオリジナルとは違う形になりたどり着く。だからこそ日本の色々なものが外国の方には、興味を持って受け入れてもらえます。ところが、当の日本人には、その個性や魅力がまだ理解できていないようですね。あらゆるブランドが出揃ったこれからが、銀座が世界に勝負を挑む時代です」
LEON世代にとっては高級なイメージの強い銀座です。でも、実はこの街には新旧入り交り、店主やスタッフとのやり取りを楽しむ独自の文化が根付く姿が、ありました。銀座を昔から知る人だからこそ、知っている面白さや、通好みの名店。これを機に、今までに知らなかった銀座の遊び方に目を向けてはいかがでしょうか。

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